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ケイマン(987前期) with サラリーマン

注)この記事を参考に作業を行った場合の責任は当方は一切負いません。あくまで自己責任でお願いします。

新型ケイマン 981/991世代の軽量化技術

2013年07月06日 | ポルシェ
2011年に2012MYとして導入された991型911に始まる現行世代のポルシェスポーツカーシリーズ。

最大のトピックスはその車体の軽量化だと思います。

991導入の時には大々的に宣伝されたこの新ボディでの軽量化ですが、
ボクスター、ケイマンと、出揃ったところでこの世代の軽量化についてまとめてみます。

まず、最初にそれぞれの車種の車両重量は、
カレラだと、MTは大きく構造が変わっているので、PDKで比較すると、
997型は2012MYで1470kg、991型は1430kgです。
このためカレラの軽量化は40kgです。

ボクスターはスタンダードのPDKで比較すると、
987型は2012MYで1410kg、981型は1380kgです。
ここでの軽量化は30kg。

ケイマンはスタンダードのPDKで
987型は2012MYで1410kg、981型は1380kgです。
ここでの軽量化はボクスターと同じ30kgです。



というわけで新しい世代で達成した軽量化の絶対量は30kg~40kgと言えます。
これは画期的なことなのは事実です。
今までのポルシェのモデルチェンジは、様々な軽量化技術を織り込みながらも、
モデルチェンジ前より必ず重くなっていたんです。
901→930→964→993→996→997。全て重くなってます。
(996は1320kgで993より軽いとなっている記事が多いですが、これは1380kgの誤記。車検証確認済み。)。
これが今回は本当に軽くなったんです。これは驚くべきことです。



ただしこの軽量化量、記事の中でも様々な値があって、よくわからないですよね。
「アルミを多用したボディにより、ボディだけで80kgの軽量化」「カレラS PDKでは98kgの軽量化が達成されている」
などのように991型導入時には40kgという実際のあたいよりも大きな値をよく見かけました。

これは、「991型に織り込んだ軽量化技術で997型と同じ性能の車をもう一度作ったとしたら」98kg軽くなったということです。
すざまじい軽量化への取り組みです!!しかし同時に2つの疑問がわきます。
・なぜ今回は軽くできたのか。
・なぜ30~40kgまで目減りしたのか?



まず、軽量化できた理由は、やらないとクルマを売り続けられない事情があるからです。それはCO2規制です。
997の後期型がデビューした2008年と991型がデビューした2011年では世の中が大きく変わったのが、CO2(二酸化炭素)排出量規制の大幅な強化です。

ここで二酸化炭素排出量というと、なんとなく排気系の触媒とかでキレイにするのかなーと思っている人もいるかもしれませんね。
これ、触媒とかでは絶対良くならないんです。
現行911、ケイマン、ボクスターのエネルギーは全てガソリンを燃やすことで得られています。ガソリンを燃やすということは必ず酸化炭素が出ます(不可避)。
つまりCO2排出量とはガソリンを使う量、つまり燃費のことなんです。
この基準が特に欧州を中心に大幅に強化され続けており、各自動車メーカーはこれへの対応を義務付けられています(ポルシェも例外ではない)。

つまり997と991では大幅に燃費が良くするために今までできなかった軽量化に本気で取り組んだということです。
これによって同じ車を再設計したら98kgという技術の市販化につながったのです。
そしてこの量が市販段階減った理由のひとつも燃費対応です。
アイドリングストップ、コースティング機能、MTの7段化などなど。
新しい燃費改善用の機構を織り込んだのでその分の重量が増えてます。



そして重量増加のもうひとつの答えが、走行性能の向上です。
今回の991では997と比べて、ホイールベースが100mm、トレッドがフロントで約50mm拡大しています。これが原因です。
みなさんテコの原理はご存知だと思います。
どこかを支点に重いものを持ち上げるとき、テコの長さの比が大きければ力は小さくて済む(その分距離が伸びる)と物理法則です。
シーソーで軽い人と重い人を釣り合わせるには、
真ん中の可動部に対して、重い人を軽い人よりより近くすると釣り合うのも同じ理屈です。

車体が長くなるということはテコの原理で言うところの支点までの距離が伸びることと同じです。
同じ入力(路面からの入力)が入っても、ボディに働く力は大きくなってしまいます。
このため、同じねじり剛性を達成するためにもよりボディを強くする必要があります。
991ではホイールベースもトレッドも大きくしながらボディの剛性値も向上しています。
これは997をそのまま作れば必要なかった補強をボディにしているということです。

なぜ寸法を拡大したのかというと、同じ剛性を達成した上でホイールベース、トレッドが広がると、
安定性が増すと同時に機動性も増すことができるからです。
重心に対するタイヤの位置が遠くなるので、
同じタイヤのグリップ力でもより大きな車両の回転力を発生させることができるのです。
この効果は凄まじく、911シリーズ、ケイマン、ボクスター、全ての車の操縦安定性能を向上させ、
指標の一つであるニュルブルクリンクのラップタイムは2,30秒程度向上しています。



この環境対応分と、寸法拡大による走行性能向上で58kg(ポルシの公表値)使ったのです。
この結果、軽量化量は40kgとなったのです。


また911とボクスター/ケイマンは切っても切れない関係にあります。
フロントセクションは共通化してますし、フロアの前半部分も共通です。
基本的には前面衝突、側面衝突の性能を共有している(開発を一緒にやっている)のでしょう。
これは乗用車でセダンとワゴンの衝突性能が共通なのと同じです。
これは開発費を大幅に圧縮できるので、ポルシェのような小さなメーカーには不可欠です。
(ほかのモデルでは、カイエンはVW、AUDIと共用化しコスト減、パナメーラはカイエンと共用している)

このためケイマンで言えばホイールベースの延長量が991以下であるにもかかわらず、
同じ構造を取り入れる必要があったので軽量化量が991以上に目減りしていますが、
ボディ剛性値の向上は991以上になっています。


ではこの98kg分の軽量化はどのように達成しているのか。
車体で80kg、エンジンで10kg、その他足回りなどで8kgとなっています。
一番大きく貢献しているのはアルミの使用率を大幅に増やしたボディの軽量化です。

Aピラー、Cピラー、サイドシル、トンネルなど車両の主要な柱の部分にはスチールを、
フロアやルーフなどの板状の部分、ドア、フロントフードなどの
開閉部分にはアルミを使っているのが今回のボディの特徴です。

(ここでもう一度ボディの図を掲載。青いところがアルミですが、柱部分に使ってないのがわかると思います)
アルミを使うことで軽量化できましたが、ではなぜオールアルミにしなかったのでしょう。
製造方法が全く異なるアルコア製フレーム(360以降のフェラーリやアウディR8、ガヤルドなど)のような方法はできなくても、
ホンダが20年前に、ジャガーも10年前にすでにフルアルミボディの量産をしています。
「リアフェンダーの膨らみがアルミだと整形できなかったから」などと的はずれな説明がされていますが、
こんな理由で採用を諦めることは100%ありえません。
では何故??明確な答えは雑誌の情報などからは得られませんが、
一つは今までの知見を生かしたかったから(ポルシェは鋼で60年スポーツカーを作ってきた)ではないでしょうか。

ポルシェは車体構造については保守的な会社です。
世の中がアルミモノコックになっていてもパイプフレームにこだわったり(917)、
もうカーボンモノコックがあるのにアルミモノコックにしたり(956,962)。
いままでずっと市販車の構造材として鋼を使ってきたの知見を生かし、軽量化ができる方法として、今回の車体構造を採用したのではないでしょうか。
「市販車のフィーリングとして、やはりハガネが最上。」そんな知見がポルシェにあるのではないでしょうか。



現在987型ケイマンの軽量化に勤しむ本ブログですが、
98kgの軽量化、たいへん羨ましいです。

ぜひほかの要件は全て987のままでいいから、
すべての装備が付いて98kg軽いケイマンを出して欲しかった。。。。。
そしたらそこから装備を外して1185kgにするのは987型を軽量化するよりよほど容易だったでしょう。
しかしそんなクルマを手に入れられる可能性は完全にゼロなので、
全身ハガネの987を軽量化していくことにします。

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