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ケイマン(987前期) with サラリーマン

注)この記事を参考に作業を行った場合の責任は当方は一切負いません。あくまで自己責任でお願いします。

ポルシェ カレラについて -言葉はややもすると陳腐化する-

2013年07月16日 | ポルシェ
今日はカレラについてです。


いや、911のNAグレードの話をするわけではありません。
”カレラ”という名前の意味についてです。


”カレラ”は昔からポルシェ車に付けられてきた名前ですが、
ほとんどの場合は車名ではありません。
グレード名のようなものです。

カレラって何のことか皆さんご存知ですか??
スペイン語で「競争」、つまりレースのことです。

ことの始まりは1950年から54年まで行われていた、
カレラ・パナメリカーナ・メヒコという、メキシコで行われていた公道レースです。

アメリカのマッスルカーとガチンコ勝負ができるレースイベントで、
当時アメリカでの拡販を狙っていた、フェラーリ、メルセデス、そしてポルシェなどが
ワークス体制で臨んでいたレースイベントです。
このレース向けに造られたポルシェ550の仕様が最初の”カレラ”です。

この550は1954年のこのレースで見事クラス優勝を飾り、
これを記念して、基本的にはこのレースカーと同じエンジンを積んだ
356を「ポルシェ 356 カレラ」として発売したのが”カレラ”の市販車の始まりです。

この後、356にDOHCヘッドをつけた高性能エンジンをつんだ仕様の事を「カレラ」と呼ぶことにし、
何度か市販されています。


そして、時代は移り、1964年からはポルシェの主力は356から911に移り変わりますが、
356時代には何度か登場していた「カレラ」は911ではしばらく市販モデルに登場しなくなります。

その沈黙を破ったのがいわずと知れた1973MYの911 カレラRS、通称「73カレラ」です。

このクルマで「カレラ」とは標準モデルより大幅に高性能なエンジンを積んでいることを表しており、
その後に続く「RS」はレース用のホモロゲーション取得を目的としていることをあらわしています。
このときの「カレラ」の意味は4カム(そう、水平対向だとDOHC化にはカムが4本いるんです)
でないこと以外は356時代とほぼおんなじです。


ちなみにカレラRSを日本語にすると競争・競争・運動。
カレラRSレーシング(本当のホモロゲ仕様)になると競争・競争・運動・競争。
どんだけ競争なんだか・・・・・・。


このあと74MY、75MYと「カレラRS」は同じホモロゲ取得を目的で設定され続けますが、
レース用ホモロゲモデルとしてはいったん途絶えます。
カレラRSに代わって911にターボがホモロゲモデルの役割を請け負うことになったからです。


そして次にポルシェに「カレラ」の名が復活するのは、1984年です。
それまで911のNAモデルのグレード名だったSCの代わりに、
排気量を3.2Lしたことで73カレラRSのエンジン出力を越えたことを記念してグレード名を「カレラ」にしました。

それまではカレラという名前には、
レース用のホモロゲーション取得がなんらか関連していたのですが、
このときに初めてレースと全く関係なしに「カレラ」の名前が使われ、
同時にNAの911はすべて「カレラ」と呼ばれるようになってしまいました。

その後「カレラ=911のNA」、
NAなら速くてもそうでなくてもカレラとなりそのまましばらく時間が流れます。


次の変化が起きたのは996のときです。
996は1997年に満を持してポルシェが投入した、エンジンを全水冷化した初めての911でした。
このときのNAのグレード名が「カレラ」。ここまでは普通です。

事件は1999年に起こります。
「911GT3」の登場です。

それまで普通のNAの911だけでなく「NAでもっとも高性能な911」にも必ずカレラの名がついていました。
964ではNA最強はカレラRS。993でもNA最強はカレラRS。これは356から不変です。
しかしこのとき「GT3」がカレラと全く異なる、20%も馬力が多い特別製NAエンジンを積みながら、
「カレラ」を名乗らなかった時点で、カレラはただの911のNAのことになりました。
(他と比べて特別な高性能NAエンジンを積む911という意味が完全に消滅した)

この後997にいたっては「カレラS」が登場し、
「カレラ」というだけの意味はますます下がってしまいました。


このように「カレラ」という名前は時代とともに陳腐化し、
その意味を弱めていってしまったのです。
特に以下の2つのことがターニングポイントと言えます。
 1)911NAモデルの中の高性能車から、911のNAモデル全体のことになった「930カレラ3.2」、
 2)911のNAの中で最高出力のグレードにカレラがつかなくなった「996GT3」の登場



「広告の表現は年々過激になっていく。同じ表現では、与える印象は徐々に弱まってしまう。」
これは広告関連の仕事をしている知人が言っていた言葉ですが、そのとおりだと思います。
言葉というのは気にせずに使っていると、慣れてしまい、陳腐化してしまうのです。
もしその言葉の意味を大切にしたいなら、その使用には細心の注意を払い、
大切な言葉はめったに使うものではないんです。


私が思うに「カレラ」という名前は本来的な意味では、
「レーシングエンジンを搭載した市販ポルシェ車」
につけられるべき名前だと思っています。

だから現在の911のNAラインアップは以下のように呼ばれるべきだと思っています。

911カレラ  → 911
911カレラS → 911 S
911カレラ4 → 911 4
911カレラ4S → 911 4S
911GT3 → 911 カレラ
911GT3RS → 911 カレラRS

しかもここでいうカレラについてはホモロゲ上いらない年は設定するべきでないと思います。
栄光に根ざした、思い入れ深いものこそ、めったに使ってはいけないのです。





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え?何でこんなこと調べたのかって??
それは、軽量化が完了した後の私のケイマンに
思い切って「カレラ」のサイドステッカーをはっちゃおうかと思ったからです。

結論から言えば、軽量化した987を「987カレラ」と呼ぶことは誤りだということがよくわかりました。
「987カレラ」を名乗るなら、911GT3RS4.0用のエンジンを積むぐらいの変更が必要でしょう。
(逆に「カレラ」だけなら軽量化は必ずしも必要ではない)

軽量化した私のクルマをポルシェの文法に則って呼ぶなら、
「987Club Sport」がもっともふさわしいですね。
(RSはホモロゲーションとのつながりがない場合に名乗るべきではない。997GT2RSは誤った用法。)


仮に軽量化が175kg満額達成できたら、
964カレラ4で300kgレベルの軽量化を達成した
「964カレラ4 ライトウエイト」に倣って、
「987 ライトウエイト」と名乗ってもいいかなと思っています。


あーでも俺のクルマも「カレラ」だったらよかったのになー。
 ↑これが”名前を陳腐化させる”考えそのもの!!(笑)