大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

スイング・ステーツでトランプ氏の支持率が急伸

2016年09月16日 | 日記

 以前のブログに書いたように、アメリカの大統領選挙は基本的にスイング・ステーツといわれる州を押さえた候補が勝つようになっている。ほかの州は、選挙前からほぼ結果が決まっているからである。

 ところで、スイング・ステーツでトランプ氏の支持率が急伸している。

 RealClear Politicsというサイトが州別の世論調査の結果をまとめて公開しているが、スイング・ステーツの中でもとくに票が多いフロリダ州とオハイオ州そしてコロラド州でトランプ氏の支持率がクリントン氏を上回るとする調査結果が増えている。またミシガン州などこれまではクリントン氏で決まりと考えられてきたいくつかの州で両氏の支持率が近づくという事態も生じている。

 クリントン氏の健康問題もあるのだろうが、これは果たして一時的な現象なのだろうか。

 昨夜、CNNでトランプ氏の経済政策の演説を見た。

 演説の骨子は、1)減税といろいろな規制撤廃によりGDPを年3.5%成長させる、2)アメリカから高賃金の仕事を国外に流出させたNAFTA(アメリカ、カナダ、メキシコの自由貿易協定)を見直す、TPPは認めない、3)中国など外国の為替操作、知的財産の侵害には断固たる立場をとる、といったもの。

 3.5%の経済成長の見通しはあまりに楽観的だが、それより気になったのは演説でトランプ氏が、その日にフォードが数年内に小型自動車の生産をメキシコに移転すると発表したことを取り上げ、NAFTA見直しに話をつなげていたことである。

 民主党を支持する労働組合はもともとNAFTAには強く反対していた。雇用が流出するという理由からである。トランプ氏の主張は、これとまったく同じものである。労働者のなかで、トランプ氏の主張に共感するものは少なくないと思う。ちなみに、フォードは小型自動車の生産を移管した後、もとの米国工場で利幅の大きいSUVの生産をおこなう予定で、この先、ガソリン価格が急騰しSUVが突然売れなくなるということがなければ(過去にはたびたび起こってきたが)、実際に工場が閉鎖されたり、雇用が減少することはないとされている。

 一方クリントン氏は、こうした問題への感度が低いように思う。クリントン氏の最近の演説は、トランプ氏の人格批判ばかり目立つような感じで(そういう選挙戦略なのだろうが)、雇用流出をどうするかという問題意識は希薄なように感じられる。労働者のひとたちが、いまひとつクリントン氏に熱中できないのもうなずける。

 演説を聞いて、トランプ氏の高支持の背景を少し理解できた気がした。これからも選挙の行方を注視していきたい。

2016年10月22日追記

 トランプ氏の女性に対する暴言が暴露され、同氏にセクハラを受けたと訴える女性も多数出現。クリントン氏の優位が、全国そしてスイング・ステーツで拡大している。全3回のテレビ討論会もすでに終了。クリントン氏が倒れるなどよっぽどのことがないかぎり、クリントン氏の当選が確実な情勢となった。 

2016年11月5日追記

 今週、国務省から問題となったメールが公開されたが、問題がある内容は含まれていなかった。しかし、FBI長官がメール問題の捜査再開を公言したことで(サプライズがおこった)、クリントン氏にあたかも機密情報の漏えいなど大きな疑惑があるかのような誤ったイメージが拡散し、トランプ氏の支持が急伸。投票結果をみるまで、どちらが勝つかわからない状況になった。


カシャガン油田が、2016年11月から生産再開

2016年09月16日 | 日記

 私は自動車産業を研究しているが、自動車の売れ行きやメーカーの収益に大きな影響を与える原油価格の推移には注意している。

 ところで2016年9月15日(木)、カザフスタンのカザムナイガス社は、同国のカシャガン油田が2016年11月から商業生産を再開すると発表した。

 同油田は、過去30年に発見された油田のなかで最大規模のもので、これまで500億ドル(5兆円:1ドル=100円で計算)が投じられてきた。

 来年には生産量が日量36万バレルに達するという予想もあり、これは現在のリビア一国の生産量にほぼ匹敵する

 欧米のメディアにくらべ日本での報道が少ないのでここに記しておく。


アルバータ州(加)、最低賃金を15加ドル(1200円)に引き上げ

2016年09月15日 | 日記

 2016年9月13日(火)、カナダのアルバータ州は、2018年10月に最低賃金を15カナダドル(1200円:1カナダドル=80円で計算)に引き上げることを決定した。

 アルバータ州の現在の最低賃金は11.2カナダドル(約900円)。今回の決定により、同州の最低賃金は2016年10月に12.5カナダドル(1000円)、2017年10月に13.6カナダドル(1090円)、2018年10月に15カナダドル(1200円)に引き上げられる。


日銀の国債爆買はいつまでもつのか

2016年09月12日 | 日記

 現在、日銀は年間80兆円の国債購入をおこなっているが、いつまで続けられるのか?

 これについては様々な予測が出ている。ここでは、よく使われるIMFのワーキングペーパー(2015年8月)の内容を紹介したい。

 2015年度、日本政府は、借り換え分を除いて約52兆円の国債を発行した。これをすべて買っても80兆円にならない。したがって日銀が年80兆円国債を買おうとしたら、国債をすでに保有している機関投資家(年金基金、銀行、生命保険会社など)から残り(約30兆円)を買うしかない。

 IMFのワーキングペーパーはおもに、この機関投資家があとどれだけ国債を売ることができるか-正確にいえば満期分の不補充を含めどれだけ減らすことができるか-を分析している。

 結論からいえば、2017年(来年)ないし2018年中に機関投資家の国債保有は下限(これ以上は減らせない水準)に達し、日銀は政策の転換を迫られるとされている。

 IMFのワーキングペーパーは、銀行の国債保有の下限を、先進国平均の資産の5%(現在は10%を超えている)と見込むなどいくつかの仮定のうえに上記の結論を導き出している。したがって、その仮定が間違っていたら、日銀の国債購入の限界はもう少し先になるかもしれない。たとえば、銀行がもし資産の5%以下にまで国債保有を減らすことができたら、日銀はもう少し長く国債の買い入れを続けることができるかもしれない。

 しかし逆に、実際に国債購入が限界に達する前に、市場が国債購入の限界を意識しはじめれば、日銀は実際の限界より早く政策の転換を迫られる可能性もある。

 個人的には、2017年ないし2018年に限界が来るというのは最悪ケース、最速ケースの予測だと思うが、いずれ限界がくることは間違いない(時期を特定できない予測にはあまり意味がないが)。

 現在、9月20/21日の日銀決定会合をひかえ、長期国債(10年国債)の利率の急速な上昇(価格の低下)がおこっているが、日銀が量的・質的緩和の縮小を口にした時、市場の反応は想像を絶するものになるのではないか。そうならないことを願っているのだが。

2019/5/22追記

 日経新聞によれば、2019年3月におこなわれた日銀の金融政策決定会合において「金融機関の国債保有額が資金調達の担保として最低限、必要な水準まで近づいている可能性がある」との発言があった。日経は、ここから日銀は2019年4月に銀行が日銀から資金調達する際の担保の要件を緩和することを決めたとしている。

日銀の国債買い入れ、限界が近づく? (2017/4/9)


任天堂の本社

2016年09月10日 | 日記

 

 最近、ポケモンGOとかマリオのiPhone配信とか任天堂のニュースが多い。

 知っている人も多いとは思うが、任天堂の本社は京都にある。京都駅を南に下ったところ。

 ショールームがないのが(観光で来た方々にPRできないので)少し残念。