ダイヤモンド社のオンライン記事よりです。
“世界大恐慌とソブリン危機の「不気味な符合」
小手先の弥縫策が欧米リスクを加速させる可能性”
それに加えて、主要生産活動を海外に移転する米国の経済構造の変化に伴って、米国の労働市場の回復は予想以上に進まない。
一方欧州では、バブル期の放漫経営の“ツケ”によって事実上財政破綻したギリシャや、金融立国を目指したアイルランド、さらには不動産バブルの後始末を抱えるスペインなどの諸国が、ソブリンリスクに苦しんでいる。
それらの問題を解きほぐすためには、構造的な変化を勘案した施策を打つことで、景気の回復を確かなものにすると同時に、時間をかけて少しずつ債務を削減することを考えるべきだ。”
景気回復を確かなものにし、時間をかけて債務を削減することを優先する考え方ですが、私もまったく同じように考えます。
“ところが、実際に主要先進国が打っている政策は、いずれも応急手当の弥縫策に過ぎない。米国ではFRBが、多額の流動性を供給するQE2を実行したが、それだけでは株価などの下支え要因にしかならない。今後、それに続くQE3が実施されることが予想される。
財政問題についても、とりあえず9000億ドルの歳出削減と、今後10年間で約1兆5000億ドルの歳出を削ることが決められているだけだ。
EUの状況はさらに厳しい。EU内でのドイツのスタンスは厳格で、EU17ヵ国が抱える構造的な問題の回答は出されていない。EUの政策当局が、ソブリンリスク対象国の国債を買い支えても、その効果は限定的と言わざるを得ない。
最終的には、何らかの形でEU内部の財政統一を図るか、それができなければ、EUが分解に追い込まれることも考えられる。”
今は、欧州でも米国でも、株価の下支え、国債の買い支え等、小手先の対応しか出来ておらず、構造的な問題に手をつけていないので、今後、事態は益々厳しくなって行くだろうとの説明です。
“さらに心配な要素は、政治が経済の状況認識を誤って、拙速に財政支出の削減に走ることだ。というのは、今後主要先進国はいずれも、財政再建を図らなければならない事情がある。それを実施するには、税収を上げて歳入を増やし、歳出を削減することが必要になる。
問題は、その手法とタイミングだ。現在、主要国の経済は減速が鮮明化している。そうした状況下では、政府はすぐに増税や歳出カットを実施することはないだろう。そんなことをすると、景気が落ち込むことは誰の目にも明らかだからだ。
ところが、少し景気が回復基調を辿りはじめ、株価も堅調な展開になったとき、政治サイドからすれば、すぐに増税・歳出削減という議論を展開したくなる。問題は、そのタイミングが拙速すぎると、肝心要の景気の腰を折ってしまうことだ。”
全くその通りだと思います。
そして真壁さんは、その手法とタイミングを誤ると、大失敗になるということを、橋本政権時の消費税率引き上げや世界恐慌時の例を使って説明しています。
“たとえば1996年、当時の橋本内閣が財政構造改革法を制定し、財政再建を目指して走りだした。97年には消費税率の引き上げも実施した。
ところが、わが国経済の腰は、政府が考えていたよりもはるかに脆弱で、消費税率引き上げなどによって景気は大きく落ち込み、97年11月の金融システム不安の発生につながってしまった。それ以降の景気低迷は、我々の記憶にも新しいところだ。
1930年代の大恐慌のときも、37年にかけて株価が上昇し、それを見た米国政府は、財政支出の削減にとりかかった。ところが、その措置が致命傷の1つになり、景気を下落させ、株価は38年にかけて半分の水準にまで落ち込み、結果的に経済低迷期を長期化することにつながった。”
今日、NHKのニュースを見ていると、“もう引き伸ばさない責任”という言い方をさかんにしていました。
財務省が考える増税、そして増税派の政治家をサポートしているということなのでしょう。
マスコミとしての責任はどこに行ったのかと思います。
橋本政権時の経験をなぜ生かさないのか、でなければ少なくともそういうことがあったと説明すべきだと思います。
米国も欧州も、財政削減や増税をしたり、しようとするだけでは事態が改善しないことは、(戦争でも起こさない限り)かなり明白なことだと思います。
米国も欧州も財政削減をやっているのだから、日本も、ということなのかも知れませんが、同じやり方では、欧米日が共倒れになってしまうでしょう。
“現在、我々の身近で起きていることは、中長期的に大きな問題に発展する要素を含んでいる。大恐慌時代の出来事を振り返ってみると、起きていることの本質はあまり大きく変化していないことに気が付く。大恐慌当時も、その前にバブルといわれるような好況期があり、人々はそれに酔った。
ところが、バブルは永久に続くことはない。いずれピークを打って、下落トレンドに入る。そうなると需要が減少し、設備や人員の過剰に苦しむことになる。そして、大規模なストック調整が必要になり、不良債権の処理に追われるのである。それらによる景気の落ち込みを防ぐために、思い切った財政政策を打つことになる。
今回の世界的な不動産バブルの崩壊についても、いつもとほとんど同じことが起きた。ただ違うのは、バブルの規模が大きく、民間部門の債務肩代わりなど、政府が必要とする金額が拡大したことだ。
そのため、わが国をはじめとする主要先進国の財政状況は急速に悪化した。それが、米国債のデフォルト騒ぎや、EUのソブリンリスクに発展した。
それを解決するためには、景気の足腰強化を図るとともに、国や民間部門が抱えていた借金を減らすことが必要だ。やるべきことはわかっているのだが、それを実行することは口で言うほど容易ではない。
特に、選挙で勝たなければならない政治家にとって、国民に痛みを与えるような政策を訴えることは難しい。
たとえ痛みを伴う政策を国民が受け入れたとしても、実際の政策運営のタイミングはかなり高度な分析能力と判断を必要とする。これから、そうした能力を持った政権が誕生すればよいのだが、それが難しいと、最悪の場合、大恐慌の歴史が繰り返されることも考えられる。
政治に期待できない場合には、自分の身を守ることを考えなければならない。最大のリスクは、経済構造の変化と資産価格の変動だろう。そのリスクを頭のどこかに入れて置いた方がよさそうだ。”
最後のページ、どの文を引用しようかと思ったのですが、どれも極めて重要で、外すことが出来ませんでした(笑)。
今、世界的に問題なのは、本当はこうしなくてはいけないと思うのだけどそれが言い出せない、あるいは、選挙で負けるリスクを承知で言い出しても、実際にうまく舵取りが出切るかわからない、ということです。
だからこそ、今は、“自分のことは自分で守らなくてはならない”、ということなのです。
そして、この言葉は、今後も予想される自然災害、食糧危機、そしてこの金融経済危機含めて、今、全てにあてはまるキーワードだと思います。