"ちょっと外から見た日本"

今、スペインに住んでいます。
大好きな日本のこと、
外からの視点で触れて見たいと思います。

“人間は成功した理由で失敗する”

2012-01-28 04:34:01 | 日記

致知出版社の「人間力メルマガ」よりです。

(転載開始)

 

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     致知出版社の「人間力メルマガ」

                2012/1/26】 致知出版社編集部 発行
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このメールマガジンでは、
月刊誌『致知』より
皆さまの人間力を高めるエピソードを
厳選してご紹介しています。

       * *

本日は『致知』2000年3月号より
プロントコーポレーション元社長の
本名正二氏の随想記事をご紹介します。


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「致知随想」ベストセレクション
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      「創造的自己否定」


             本名正二(プロントコーポレーション社長)

        『致知』2000年3月号「致知随想」
        肩書きは『致知』掲載当時のものです


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人間は成功した理由で失敗する。

極端なことをいうようだが、
このすさまじい変化の時代に経営に携わる私は、
そのことを肌身で感じている。

過去にいくら素晴らしい成功を収めていても、
いまはそれが通用するとは限らない。
むしろその体験が、そのまま失敗の要因ともなり得る。

過去の成功体験を否定し、変革に挑戦する勇気を持たなければ、
あっという間に時代に取り残されてしまうのである。

かつて、テニスラケットでシェア50%を誇る有力メーカーがあった。
ある時期その市場に、当時としては邪道のグラスファイバーで
ラケットを製造する新興メーカーが登場した。

しかし有力メーカーはその新しい動向にまったく関心を示さず、
従来の素材に固執し続けた。
結果的にシェアは急落し、いまやその社名の記憶すら定かでない。

昭和62年にプロントコーポレーションの社長に就任する前、
私は、親会社サントリーの業態開発部で新しいスタイルの
飲食店の開発に取り組んでいた。

新しい店を成功させる方法はいくつかあるが、
業種全体が不振の場合の施策として、
お客さまが満足していない要素を集めて
その逆をやるというのがある。

メニュー、価格、内外装、BGM等々、
不振の要因は様々である。

興味深いのは、不振店のオーナーが
それを自覚しつつも改めようとしないことである。

なぜか。
そのスタイルでかつて成功したことがあるからである。
そのスタイルがもう通用しないと認めることは、
それまでの努力の否定につながるからである。

時代の変化を乗り越えて成功を持統させるためには、
絶えず進化・創造し続けなければならない。
そのためには、いい意味での破壊、
すなわち創造的自己否定が必要である。

しかし、破壊と創造という相反する行為を
同時に実行していくことは至難の業である。
ここに経営の難しさがある。

私が、プロントという新しい業態の店を手がけたのは、
ちょうどバブルの絶頂期。
地価は高騰し、飲食店経営で利益を出すことは困難を極めた。

そこで、一つの店に昼はベーカリーカフェ、
夜はダイニングバーという二つの顔を持たせ、
昼夜フルに稼働させることで、高い家賃でも
利益を出せる店づくりに挑戦したのである。

それまでにも喫茶店が夜アルコール類を出したり、
スナックが昼にランチを提供するなど、一つの店で
売り上げの二毛作を狙うところはあったが、
どうしても本業の片手間という印象を免れず、
確固たる利益に結びつかなかった。

これに対してプロントは、昼夜のメリハリを明確にし、
それぞれに本物を追求したところに新しさがあった。
それがお客さまの支持を集め、おかげさまで
バブルの絶頂から崩壊への激動期にも、
継続して業績を拡大することができたのである。

しかし、この成功に安住してはおれない。
私には危機感がある。
店舗の増加でプロント全体の売り上げは
前年比108%と上向いてはいるが、
これは決して成功の尺度にはならない。

むしろこれまでに出店した一店一店が
各地域でどれだけお客さまに愛されているか、
それを示す既存店の売上前年比こそ重視しなければならない。
その尺度ではあいにく98〜99%。

外食業界全体から見ると良い数字だが、
1、2%のお客さまからは見放されている事実を
認識する必要がある。

創造的自己否定の必要性を感じる部分に、
店舗デザインがある。
プロントのデザインはグリーンが基調色となっている。

創業当初は、これが強烈なインパクトを生み
業績に寄与してきた。

ところが、時代の変化と共に街並みも変わり、
当初のようなインパクトはもう期待できなくなってきたのである。

この状況下でこれまでの成功体験に固執し、


「わが店のグリーンは素晴らしいでしょう」


と、同じ色調を押し通していったらどうだろうか。
おそらく、いずれお客さまからそっぽを
向かれるときが来るに違いない。

このため当社では、すでに新しいスタイルの実験店を通じて、
今後の方向を見定めつつある。
変化に対応する新発想を生み出す上で
大切なことの一つは、「体験」である。

頭のなかだけで考えたアイデアは、
これからは通用しなくなってくると思う。

どれだけ感性が磨かれるような体験をしたか、
どれだけ本物に触れる体験をしてきたか。
その蓄積がものをいうと思う。

もう一つには「遊び心」である。
ことにサービス業に関していえば、
頭がコチコチの真面目人間よりも、
心のハンドルに遊びのある人間のほうが
いい仕事ができると思う。

遊び心ある人間の発言は、
他とひと味違ってユニークである。
その言葉はたいてい耳に痛いものだが、
会社はそれを受け止めるだけの度量がなければ伸びない。

会社を変えるのは、人と違った発想のできる
ユニークな人間なのである。
短期間に急成長を遂げてきた当社だが、
五年前、その勢いが初めて鈍化した。

ハードの面でいくら検討してもその要因が見えてこない。
行き着いたのは、見えない部分。
すなわち、心や人間力であった。

店の急激な伸びに見合った成長を、そこで働く社員が
十分に遂げていなかったことを痛感した。
そのときから私は、社員の心の教育、
人間力の教育に取り組み始めたのである。
これは当社にとって、ひとつの創造的自己否定といえるかも
知れない。

いま痛感するのは、もはや机上の戦略戦術だけで通用する
時代ではないということである。
もてなしや満足感といった目に見えない部分、
心や人間力の充実がますます重要になってくると確信している。

その確信のもと、社員の心の教育、
人間的な教育に一層力を注ぎ、
これからも末永く皆さまに愛される
お店づくりを目指してゆきたい。




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(転載以上)

 

“人間は成功した理由で失敗する” 

言い方は色々あると思いますが、とてもたくさんの方々が同じ意味のことをおっしゃっていると思います。

それは、こうして失敗するケースが後を絶たないからなのでしょう。

 

“興味深いのは、不振店のオーナーが
それを自覚しつつも改めようとしないことである。”

本当はこうしたらいいのだが、ということはわかっている。

なのに、やめられない。

 

“なぜか。
そのスタイルでかつて成功したことがあるからである。
そのスタイルがもう通用しないと認めることは、
それまでの努力の否定につながるからである。”

今ままでのやり方を否定して変えていくことは、自ら川の流れに逆らうような、とても大きな抵抗感があるのではないでしょうか。

 

“しかし、破壊と創造という相反する行為を
同時に実行していくことは至難の業である。
ここに経営の難しさがある。”

“頭のなかだけで考えたアイデアは、
これからは通用しなくなってくると思う。

どれだけ感性が磨かれるような体験をしたか、
どれだけ本物に触れる体験をしてきたか。
その蓄積がものをいうと思う。”

“遊び心ある人間の発言は、
他とひと味違ってユニークである。
その言葉はたいてい耳に痛いものだが、
会社はそれを受け止めるだけの度量がなければ伸びない。”

“ハードの面でいくら検討してもその要因が見えてこない。
行き着いたのは、見えない部分。
すなわち、心や人間力であった。”

“いま痛感するのは、もはや机上の戦略戦術だけで通用する
時代ではないということである。
もてなしや満足感といった目に見えない部分、
心や人間力の充実がますます重要になってくると確信している。”

 

そのための社員教育。

経験に基づいた奥深い言葉に満ちていますね。


2 コメント

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達人は死なない (骨董君)
2012-01-29 06:06:26
例え話ですが剣豪とか達人は簡単に死にません

どんなに強くても殺そうと思えば殺せそうですが実は殺す隙が無い

隙が無いとはどういう事かと言えば「気配」とか「異変」を察知する能力があるからです

ならどうしてそんな「気配」や「異変」が察知できるかといえば

常に死を意識し臆病であるから死なないんです

成功して失敗する人って絶対に「死」=失敗を意識しませんよね

失敗を常に意識できる人は失敗しないんですよ

失敗には理由が必ずあり

成功には必ず理由がある訳ではない

死を意識している人は死を回避できるから死なない

すると達人になれるのです

達人とは天才とは違います

達人の底辺は只の人です

人は鍛錬をくり返しやり続ける努力を惜しまなければ誰でも達人になれるのです

そして鍛錬が出来なくなると只の人に戻ってしまう

どんな世界の人でも同じ事が言えますが

「極めた」

と思った瞬間に只の人に成り下がってしまうんです

つまりどんな仕事でも成功するのには鍛錬を止める事の無い強い精神が必要なんです

それが出来れば誰でも達人には成れると思います





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骨董君さん (テラ)
2012-01-29 20:23:37
ありがとうございます。

“失敗を常に意識できる人は失敗しない”

“死を意識している人は死を回避できるから死なない”

常にそうした場に身をおく、心に隙をつくらない剣豪、それは武士としての基本なのかも知れませんね。
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