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【投資需要は如何なる要因で決まるのか?③】

2018-01-26 21:14:00 | マクロ経済の基礎の基礎

【投資需要は如何なる要因で決まるのか?②】からの続き

 投資需要の今一つの決定要因 : 信用のコストと其の利用可能性

 借り入れにより投資しようとする事業家は、「投資の収益性」を決めるときに「借り入れコスト」を考慮に入れなければ成らない⇨借入金に掛かる利率が5%である場合には、5%を上回る収益性を見込められ無いと予測する事業には手を出さ無い。其の様な利益を見込めると踏んだ場合に初めて投資意欲が現実化する。

 事業家が、借り入れをし無くても投資出来る事業資金を持ち合わせている場合は如何であろうか?此れ等の事業家も、矢張り利子率が気に成る。利子率7%で金を貸し出し出来る場合は収益性が5%しか見込め無い投資はし無い。貸し出す場合の利子率が5%で、投資した場合に見込める収益が7%であれば、事業家は事業に投資する。

 利子率が高ければ高い程、投資需要は減り、利子率が低ければ低い程、投資需要が増すというのが一般論である。

 「投資需要の重要な決定要因」として「利子率」に加えて「信用の利用可能性」というものがある。此れは、投資意欲を持つ借り手の事業家の財産状況によって貸し手が投資資金を貸すか貸さ無いか決める意味を持つ概念である。財産や資金を持ってる事業家でも負債があって、其れ等総てを合わせても貸出金より低い金額しか貸し手が回収出来無ければ、貸し手は其の事業家に貸し出すことを躊躇う。逆に、2億円の純資産を持つ事業家が、投資資金として1,000万の投資資金を借り入れることは容易い。然し、こんな場合でも、事業家が追加投資の為に、再度1億円追加借り入れしたいと申し込んだ場合には、貸し手はすんなり貸すか如何か迷うことも十分考えられる。

 貸し手は現行7%の利子率で望むだけの信用を得ることが難しいとしても、場合によってはより多くの信用を得ることが出来るときもある。例えば、政府証券の利子率が低下したすれば、貸し手は6%の利子率で以前よりも多くの貸し出しを積極的に行うであろう。此の場合、貸し手の資金の他の用途が悪化した為、貸し手は6%で以前よりも少し大きな危険を進んで冒すのである。利子率が上昇しつヽあるときには、信用割り当てはより厳しいものと成る。貸し手が他に運用する資金から得られる利益が高く成る程一定の利子率の下で借入れ額は其れだけ減少することに成る。

 金さえ持って居れば有利な融資が出来るとは限ら無いのだ。例えば、彼等が投資によって7%の収益を期待出来ると信じていても、譬え利子率が5%であったとしても、彼等は投資出来無い場合もある。彼等は5%の利子率で欲するだけの借り入れが出来無いこともあるからである。事情が変われば、潜在的借り手は今迄欲して来た資金を確保出来、投資需要は増加することに成る。

 古典派は、投資需要は必然的に貯蓄に等しく成ると断定した。人々の行動原理や社会の諸制度を前提に考えれば、「貯蓄は等しい量の投資需要を造る」ものでは無いという諸理由が存在するのである。貯蓄と投資は必ずしも等しく無いのであるが、「国民所得NNPのみが其れ等を等しくする」と論じたり、「貯蓄は決して投資需要を生み出さ無い」と論じることも誤りである。何故ならば、資金さえあれば、「投資をより一層増加させたい」と思ってる個人や企業が常に存在するからである。彼等の投資意欲は、投資資金を賄え無い為に挫折させられてるだけのことである。

 貨幣が在れば、投資を増大するであろう人が、現在、貯蓄を持ってるとすると、彼は明らかに其の貯蓄を投資の為に使うだろう。此の場合、貯蓄活動が投資需要の増加を齎すことに成る。

 無論、決して投資をし無い人や投資の増大を望まない人によっても貯蓄は為される。彼等は其の貯蓄を投資し無いが、其の貯蓄の全部或いは一部を投資が有利と思って居る人に貸し出されるであろう。此の様に全部とは言わんが貯蓄は投資需要を引き起こす。

 ケインズ的所得決定の初歩理論では、投資需要は全くの自生的なものであった。其の様な分析は、投資需要の貯蓄に対する依存性を証明する為に容易に修正することに成る。上の図を考察してみる。S-SとID-IDは当初の貯蓄-投資関数である。均衡NNPは、貯蓄が投資需要に等しく成る処の国民所得NNP水準=NNPeある。S'-S'とID'-ID'は、貯蓄意欲増大後の貯蓄-投資関数である。貯蓄関数が上方にシフトする結果、各所得水準に於ける貯蓄が増加するばかりで無く、投資需要率も各所得水準に於ける貯蓄の変化は、投資需要の変化よりも大である ⇨貯蓄の或る部分は、投資需要を生み出さ無いのである。此の様な貯蓄意欲の増大は、国民所得NNPをNNP'eに迄低下させることに成るのである。

 以上見て来た様に、投資需要が貯蓄に依存するとすれば、ケインズ的初期的分析での貯蓄意欲の変化の考察をするとき、誤った量的効果を示して居たことが分かる ⇨実際には、所得が一層低下することを示唆するものであった。だが、ケインズ的所得決定理論の初歩的説明は、正しい質的説明をしてる👈国民所得NNPは低下するであろうというのであり、実際そう成るのである。古典派の分析では、「貯蓄は総て自動的に投資需要を引き起こすという誤った仮定を置いて居ることが、所得は変化し無いと示唆したことに成る☜誤った量的効果だけで無く、誤った質的効果も惹起するも含まれて居たのだ。

 

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※ 本投稿文中の綴りや語句の使い方や理論分析の誤りは、適当に解釈して貰うか、コメント欄で指摘して頂きたい。

 


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