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【銀行業務及び中央銀行の金融政策④】

2018-01-30 21:14:57 | マクロ経済の基礎の基礎

【銀行業務及び中央銀行の金融政策③】からの続き


 連邦準備局は、信用諸条件を統御し、其れ等を通じて総需要を統御する為に、主として公開市場操作に依存して居て、他の可能な手段も保有して居るが、時々其れ等も運用して居る。従って、理事会は「支払準備率」の変更が可能である。

✱ 「支払準備率」: 銀行が預金残高に対して,日々の支払請求に応じる為に以て居る支払準備(現金通貨,中央銀行預け金等)の比率。尤も,最近では,準備預金制度の下で市中金融機関は預金等の債務の一定割合相当額を通常無利子で中央銀行に預入れする義務を負って居るが,其の預入れ率のことを指す場合が多い。中央銀行は支払準備率を政策的に変動させることにより,金融機関の支払準備を直接的に増減させ,此れを通じて其の信用創造機能をコントロールすることが出来る。

 商業銀行が「超過準備」を持た無い傾向がある場合 ⇨「準備量の過剰化或いは不足化を生じさせ様とする連邦準備当局の活動は如何なる場合でも、商業銀行の貸出量や証券保有量を変化させる」ことに成る ⇨「支払準備率の低下」⇨必要な支払準備量を保持して居た銀行は「超過準備」を持つことに成る。其の「超過準備」に依って彼等は証券購入を増加させ、貸し出しを拡大することが出来る☜ 「信用のコスト」及び「其の利用可能性」が変更 ⇨ 経済は刺激される。

✱ 商業銀行等は「 受け入れて居る預金等の一定比率以上の金額を中央銀行に預け入れること」を義務付けられて居る。其の最低金額を「法定準備預金額」(又は「所要準備額」)といい、法定準備預金額を超えて日本銀行に預けて居る当座預金等を「超過準備」という。法定準備預金は無利子であるが、超過準備に関しては一定割合の利子が付く。然し、我が日本では2016年(平成28)に日本銀行が導入した「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」政策によって、一部の超過準備に対して金利がマイナスになる場合もある。

 支払準備率の引下げ ⇨「信用のコスト」を減少、「其の利用可能性」を増加
 逆に、支払準備率の引きの引上げ ⇨「信用のコスト」を増加、「其の利用可能性」を減少 ⇨支出の抑制することに成るが、又「要求払預金債務」を一定としたとき、銀行が現金又は連邦準備銀行預け金の保有量を増加させなければ成らない ⇨銀行は準備量を増加させる為に証券を売ったり、コール・ローンを求めたり、又、貸出しが回収されても、新たな貸出しは減少させる。一般に要求払預金で返済される信用は逼迫する。

✱ 「要求払預金債務」: 預入期間が決まっておらず、預金者の要求によって何時でも払い戻すことの出来る預金です。何時でも100%現金に換えられるので、現金同様、決済機能を持っています。経済学では、要求払い預金は現金同様貨幣(通貨)に分類されます。日銀のマネーストック統計では、要求払い預金を預金通貨と呼んでいます。
 当座預金と普通預金が要求払い預金の代表ですが、その他、貯蓄預金、通知預金、別段預金などがあります。郵貯銀行の貯金は名前は違いますが、銀行の預金と同じです。
 要求払い預金は出し入れ自由な反面、利子率は低く、当座預金は無利子です。当座預金を保有していれば、小切手を振り出すことによって商品やサービスの支払いに当てることができ、投資資金の決済に当てることもできます。また、普通預金も口座の振替えによって公共料金の振込みやクレジットカードの決済をすることができます。要求払い預金に対して、預け入れ期間が決まっている預金は定期性預金といいます。
✱ 「コール・ローン」: コール市場において、資金を貸し手(運用)側から見た場合の名称をいいます。これに対して、資金を借り手(調達)側から見た場合の名称を「コールマネー」と言います。
 一般にコール市場とは、日本で最も歴史のある代表的な短期金融市場であり、銀行などの金融機関同士で短期の資金の貸借が行われるマーケット(インターバンク市場)となっています。その取引には、担保を必要とする「有担保コール」と、担保を必要としない「無担保コール」の2つがあり、その中で取引の中心となるのが、今日借りて(貸して)、明日返す(返済する)「無担保コール翌日物」です。また、借りた当日のうちに資金を返済する「日中コール」が取引期間の最短です。
 ちなみに、投資信託や年金の資金がコール市場で運用された場合、運用資産の中に「コールローン」と表示されます。

 商業銀行の貸出量と証券保有量に対する支払準備率への影響は、👇の式を再検討することに依って理解される。

LS = {(1-r)/r}R + IF

・商業銀行の連邦準備銀行への債務を無視すると、
 IFは0と成り、👆の式は、商業銀行の収益資産が銀行準備金の {(1-r)/r}倍であることを示す。
・支払準備率が低下すれば、
 {(1-r)/r}は一層大と成る。
・現実の支払い準備が変化し無い場合、
 商業銀行の貸出し、及び証券保有は増加する ⇨信用の取得は安価で且つ容易に成る。
・支払準備が250億$あって、支払準備率が20%であると仮定すると、
 貸出しは1,000億$と成る。
・支払準備率が19%に低下すれば、
 商業銀行の収益資産は60億$以上増加する。

 支払準備率が低下すれば低下する程、銀行は其れだけ信用供与を拡大することが出来る。逆に、支払準備率が上昇する程、銀行は信用供与を縮小する。

「支払準備率」: 「預金準備率」とも呼ばれ、準備金制度により、金融機関が預金等の残高の一定比率以上を中央銀行 (日本銀行)に無利子で預け入れる比率のことをいいます。また、準備預金制度とは、金融機関に対して、受け入れている預金等の一定比率(準備率)以上の金額を中央銀行に預け入れることを義務づける制度で、実際に預け入れなければいけない最低金額を「法定準備預金額」または「所要準備額」と言います。
一般に支払準備率は、金融機関の種類、預金等の種類、預金等の額(残高)によって決められています。現在、対象となる金融機関は、日本の場合、都市銀行、地方銀行、第二地方銀行、信託銀行、外国銀行在日支店、信用金庫(預金残高1600億円超の信用金庫のみ)、農林中央金庫などとなっています。なお、時々の金融動向から、中央銀行がこの準備率を変更することを「支払準備率マ操作」と言います。

 連邦準備当局は、もう一つの統御手段を持って居る。割引率の変更である。其れを理解する為に、先ず、商業銀行が連邦準備銀行から借入れる場合、信用条件が如何成るかを考察する。

商業銀行が連銀から10万$借り入れる場合



 銀行は10万$の現金か連銀の要求払預金貸方勘定10万$を受け取る。何方の場合でも、銀行の支払準備は借入額だけ増加する。債務も同額増加し、其れは、其の銀行の貸借対照表に於ける取引先連銀への債務の増加として扱われる。全銀行の総合貸借対照表は👇の様に変更される。


全商業銀行の統合貸借対照表



 支払準備の増加は、要求払預金債務が不変で支払準備も不変に留まって居る限り、⇨超過準備の増加を表す。
 超過準備の存在 ⇨商業銀行に、其の超過準備の乗数倍だけの貸し出しや証券保有の増加を可能にさせる☜「LS = {(1-r)/r}R + IF」式は、其の乗数の大きさを決定する為に用いることが出来る。
 支払準備率が20%であれば、(1-r)/rは4と成り、LSは「支払準備」の増加の4倍+連銀への銀行の債務と成る。RとIFは各々10万$づヽ増加したのだから、収益資産の増加は50万$=「支払準備の増加の4倍」+「連準への銀行の債務の増加」と成る。

 一般に、商業銀行の借入額は、商業銀行組織に於いて支払準備率の逆数だけの貸出しを可能にさせる。「LS = {(1-r)/r}R + IF」⇨「貸出し及び証券」=「(1-支払準備率)/支払準備率」×「支払準備」+「連銀に対する債務」☜ 「LSの変化」がRの変化の(1-r)/r倍+IFの変化に等しい ⇨銀行が連銀から借入れるときは、Rの変化=IFの変化であるから ⇨ ΔLS={(1-r)/r}ΔIF+IFΔIF
={(1/r-1)+1}ΔIF=1/r×ΔIF ☜ ΔLSはΔIFの1/r倍と成る。




 連銀が利子率0で商業銀行に自由に貸出すとすれば、連邦準備当局は信用条件や貨幣供給を統御出来無いだろう。
 証券の利回り>0である限り、⇨ 商業銀行は連銀から借り続けることに成る。
 利子>0であると予想される貸出であれば、拒絶することは無い。

👆


 そうする為に必要な資金は連銀から自由に獲得出来るからである。

 連銀は何ら料金を課さ無いで、喜んで無限に貸し出す様なことはし無い。彼等は総ての貸し出しに利子率を課す。

此の率=「割引率

 連邦準備当局が連邦準備銀行からの借り入れを抑制したい場合 ⇨「割引率」を引き上げる。
 逆に促進したい場合 ⇨引き下げる。
 詰まり、割引率は「総需要」の統御に使われ、貨幣当局の自由裁量に委ねられた一つの追加的手段である。


つ づ く

※ 本投稿文中の綴りや語句の使い方や理論分析の誤りは、適当に解釈して貰うか、コメント欄で指摘して頂きたい。


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