空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

大分・日出町 ムスリム用墓地の問題

2020-12-05 23:15:12 | ノート
 住民による反対陳情を採択。

朝日新聞 ムスリム専用の土葬墓地、反対陳情を採択 大分の町議会 加藤勝利 2020年12月5日 9時34分

 ムスリムとしては土葬でなければ宗教的に極めて難である一方、日本は近年、一般に火葬を前提とするので、土葬墓地に対する忌避感が強く出た―というわけだ。

大分県日出町の山中に計画が持ち上がっているイスラム教徒(ムスリム)専用の土葬墓地について、定例町議会は4日、計画に反対する住民の陳情を賛成多数で採択した。水源への土葬墓地の影響による不安が理由。本田博文町長は「議会や住民の判断は尊重する」とする一方、墓地の整備に関する町条例に伴うムスリム側との事前協議中で、話し合いは続ける考えを示した

計画反対の陳情は8月、区長2人が池田淳子議長に提出した。「計画地から下方約1・2キロにある生活・農業用のため池などに墓地からの排水が流れ込み、農作物の風評被害が心配される」と訴え、整備に反対する周辺住民ら約100人分の署名簿をつけたという

 1.2kmでは、まあ、常識的には影響はないだろうところ、なんぼでも「火」をつける類の人々はいるし、色々な面倒を避けてそもそも拒否するというのも、まあ…一定の合理性があるだろうなあ、とは同情する。ほら、風評被害を煽り立てる種類の職業には心当たりがあるだろう。

傍聴席には予定地周辺の住民10人近くが陣取った。閉会後、前区長の末綱文雄さん(77)は「生活、農業、飲み水に使うため池が守られ、ほっとしている。賛成するなら、その人の場所の近くに建てて」

 超典型的なNIMBY案件である。

一方、議場外では別府ムスリム協会代表のタヒル・アバス・カーン・立命館アジア太平洋大教授(53)らが、議場を映すテレビを見ながら「私たちは墓地を10年以上前から探し、現状でも町長の許可を約3年待っている。私たちがどれぐらい困っているか分かってもらえないのでしょうね」と肩を落とした

 この「私たちがどれぐらい困っているか分かってもらえないのでしょうね」の点。困っていることは理解するが、それはそれとして私の所に来るのは反対だ、というのも尤もなことでしょう。そりゃ困っているだろう、その点は同情する。しかしその理解をしたからといって、迷惑施設を喜んで受け入れるという判断とは別のものだ―という。


 …うんまあ。例えば私に、とある女性が大変生活に困る見込みなのだが、という話をしてきた同僚がいた。なるほど大変になるんでしょうね、そりゃ大変、とは私は理解したが、その理解は、ウム私はその女性を嫁にしよう!という行動には直結しないわね。なんで直結しないんだ、お前は人格が異常だ!という非難を受けたが、いや、見ず知らず縁も所縁もない女性について、ご同情申し上げる以上の行動に即座に出るべき理由ってあるのかなあ。とゆーか、アンタが援助したらいいんじゃね?と思ったりする。


 …閑話休題。
 ごみ焼却場がないと困るのは分かる。しかし我が家の裏庭に来るのは困る。こういう場合、この当の人に迷惑料を支払う―固定資産税を安くするだの、なんだの―ことで解決を図ることになる。では今回の場合はどうか? と。

毎日新聞 イスラム教徒困った「墓がない」 土葬に住民反発、建設頓挫「町のイメージダウン」 2020年10月24日 21時16分(最終更新 10月24日 22時19分)

大分県別府市の会社役員で、パキスタン出身のザファー・サイードさん(39)も埋葬の問題で頭を悩ませたイスラム教徒の一人だ。2011年12月、早産で生まれた長男を失ったが、九州に信者用の墓地はない。00年に来日し、既に日本国籍を取得したサイードさんにとって母国は日本。土葬が可能な市内のカトリック教会の墓地に埋葬させてもらい、ようやく息子を天国に送ることができた

だが、その墓地も空きがなくなり、サイードさんの周囲のイスラム教徒は困り果てた。そこで、別府市の宗教法人「別府ムスリム協会」は九州初の信者用の墓地を建設しようと、18年12月、同県日出町(ひじまち)に約8000平方メートルの土地を購入した

購入した土地は住宅や畑がある集落からは約3キロ離れた山間部にあり、しかも土葬が可能なカトリック信者向けの墓地や一般の霊園に隣接している。協会のカーン・タヒル代表(53)は「これで問題が解決できると思った」と語る

 集落から3km程も離れていれば、そりゃあ大丈夫と思えよう。が、何が何でも風評被害を見出す昨今の風潮から、ここにもそんな風評被害が来るんでは―というのは、うん、まあ…今は新聞さんは”ムスリム墓地はポリコレ的に正しいよね!”と言った雰囲気のようだが、いついかなる時に”やっぱりナマ死体があるのってちょっとこわーい”とか言い出すか、分かったもんじゃない。そりゃあ新聞・マスコミの口車になんか乗るものか! という思いが発生しても、まあ…おかしくはない。

 …ムスリム側としては、「観光においでよ!」とか「住みやすいよ!」とか「支援は必要? どんな支援がいい?」と言ったり聞いたりしているわりには、我々には死んで埋められる自由はないのか、と言いたいところだろうが。
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