まずは日本語報道を確認:
NHK ケニア ソマリアで過激派掃討作戦 10月17日 11時9分
「アフリカ東部のケニアは、自国の領内にある難民キャンプで隣国のソマリアのイスラム過激派組織による誘拐が相次いでいるとして、ソマリアに部隊を派遣し、過激派組織の掃討作戦を始めました」
16日に作戦開始,アルシャバブ掃討作戦を始めたと述べ,
「派遣された部隊の規模など詳しいことは分かっていませんが、戦車を含む20台以上の武装したケニア軍の車両が、ソマリアに入ったという情報も伝えられています。また今回の作戦は、ケニア軍とソマリア暫定政府の軍が共同で実施し、国境付近の「アッシャバーブ」の2つの拠点を攻撃したという情報も伝えられています」
兵力についての明言なし。しかし,「戦車を含む20台以上」の車両とくれば,まずまずのところ。但し,方々の村落の拠点を掃討するには十分だろうが,同時に数か所で展開するのには難のある数字。都市を落とすなど思いもよらない。
MSN産経 ケニア軍、ソマリア南部に進軍 過激派と対決 2011.10.17 10:38
「ソマリアからの情報によると、隣国ケニア軍の部隊が17日までに、国境を越えてソマリア南部に戦車などで進軍した。部隊は400人規模で、空爆攻撃があったとの報道もある」
ソースの性質について言及はないものの,400人規模という具体的な数字がでている。常識的に「戦車を含む20台以上」とバランスの取れないものではないだろう。
「暫定政府軍とケニア軍は協力態勢を取っているという」
と最後に一文を付け加えているが,これが今回の作戦に限ったことか,それとも継続的に協力し続けているのかは,文脈上,必ずしも明らかではない。書き方としてはうまい。
朝日新聞 誘拐多発受けソマリアに軍派遣 ケニア 2011.10.17 10:38
「ケニア国内から外国人が相次いで誘拐され、ソマリアに連れ去られたことを受け、ケニア政府はソマリア側に軍隊を派遣し、16日に国境を越えた。現地からの報道によると、誘拐に関わった疑いがあるソマリア中南部を支配するイスラム武装勢力シャバブを追うためだという」
と,部隊派遣の理由をアルシャバブの無法にあるとする,ケニア側の見解を伝える一方,
「シャバブは国連や欧米系NGOの活動を「スパイ」と見なして活動禁止を表明。干ばつと飢饉(ききん)に苦しむ同国への援助の障害にもなっている。 ただ、今回の一連の誘拐にはシャバブのほか、海賊グループの関与も指摘されている。(ナイロビ=杉山正)」
と,『実は誘拐はアルシャバブでなくて海賊グループが関与しているかもよ!』と付言するのは,ケニアの行動に対する一定の疑念投げかけではあろう。
あり得る反論としては,『犯罪者グループの犯行の可能性があるなら,現地を支配している勢力=アルシャバブと,ケニアはまず交渉すべきだった!』だろうか。そんな事を言う人には
つ 「アルシャバブはケニアに聖戦を宣言する」2010-02-11
なので,ケニアとしては,『売られたケンカを買ってみましたが,何か?』なわけではある。
いや,『そんな口先だけの挑発を捉えて,対話もせず,いきなり軍事行動をとるのはおかしいと思う!』という向きがあるかとも思うが。
つ 「アルシャバブの兵,ケニア側に侵入―繰り返される挑発行動」2010-04-13
つ 「アルシャバブはケニア国境警備要員を攻撃した」2010-04-02
つ 「ケニア準軍事組織へ越境攻撃―ソマリア南部」2010-07-24
で,延々誘拐事件は起こるわなんだのと,対話の余地を削りまくってるのは寧ろアルシャバブの方であるな。果てはケニア市民を誘拐するし,「ケニア軍はわが市民の安寧を護る」という大義名分を営々として作り上げてきたのはアルシャバブだとは言える。
いやまあ,今から思えば:
「ケニア,Dhobleyのソマリア暫定政府軍将校団を改組」2011-09-26
これなんか,この攻撃のための調整だったりしたかなーという所ですが,こんな具合にケニアが蠢動するので,それを嫌ってアルシャバブはケニア本土にちょっかい掛けてきたと「弁護」する余地があります。
国境近くの兵力増強を嫌ったのだと―
つ 「アルシャバブはケニア首都攻撃を仄めかす」2010-01-22
つ 「ケニアはソマリアへの平和維持軍派遣を考慮している」2010-02-03
そういう「弁護」をする余地はありますが,自分の足元も確保しきってないのに,なんで戦線を広げるのかということはある。なので,この「弁護」をする向きは,
『アルシャバブは自分の実力も他人の実力も理解できないで威勢のいいことはいうけど,結局やることは辺境でちまちま銃撃戦をやったり,老人や医療関係者を誘拐したり誘拐犯から買い取ったりする程度の存在に過ぎないので,世界各国はかわいそうな子に暖かい理解の視線を投げかけてあげるべきです』
と,アルシャバブを超disる発言をしていることになるので注意。
あとまあ,辺境地の医療に挺身しようと思ったらその辺境の人に誘拐された人たちとか,目の前で旦那を銃殺された小母さんとかにも優しい視線が必要な気がする。
何にせよ,基本的には,この緩衝地帯―Jubalandの扱いについては,常識的なところに収まるのではなかろうか,
つ 「ジュバランド―ケニアにとっての緩衝地帯?」2011-05-07
他に
ロイター ケニア軍がソマリアに進攻、イスラム過激派への作戦で 2011年 10月 17日 09:06 JST
「ソマリア軍の司令官は、15日夜に同国南部にあるアルシャバブの基地に対して複数の空爆が行われたと発表。ケニア軍機によるものかどうかは確認できていないものの、「ケニアは軍事的にわが国を支援し、われわれの目的はアルシャバブをこの地域から追いやることだ」と語った」
空爆の存在を報じつつ,ケニア軍の攻撃はあくまでアルシャバブ追討に目的をおき,ソマリア政府ないしソマリア国民との衝突ではない旨の,ケニアの見解を伝える。
AFP ケニア軍、武装勢力攻撃のためソマリアに越境 2011年10月17日 11:49 発信地:ナイロビ/ケニア
「ケニア政府報道官のアルフレッド・マツア(Alfred Matua)氏は、ケニアで誘拐や攻撃を行ったアルシャバブを追って軍の部隊がソマリアに入ったと説明した。一方、アルシャバブ幹部のシェイク・ハッサン・トゥルキ(Sheikh Hassan Turki)氏は、「ケニアはソマリアの聖なる大地に入り、ソマリアの領有権を侵害した。だが彼らは落胆して帰国することになるだろう」と述べ、「ムジャヒディン戦士たちは彼らに銃弾の痛みを味わわせることになるだろう」と警告した」
…そう言えば先日のMSF誘拐事件の際,空陸から犯人を追跡している―とケニアは言っていたな。ケニアには,北部のソマリ人徴募の用意さえあった模様である。用意万端整って,切欠さえあればというタイミングだったと,そういうことになろうか。
もしもそうなら,この「400人」は第一次派遣団に過ぎない可能性さえある。現状なら,「誘拐犯」を追跡・捕縛するのに妥当なところではある。しかし,今後は―? いつの間にかJubalandの「ソマリア暫定政府軍」が増強していたり? そんなこともあるかもしれない。ソマリアではありえない練度の歩兵がいたり,とか。
NHK ケニア ソマリアで過激派掃討作戦 10月17日 11時9分
「アフリカ東部のケニアは、自国の領内にある難民キャンプで隣国のソマリアのイスラム過激派組織による誘拐が相次いでいるとして、ソマリアに部隊を派遣し、過激派組織の掃討作戦を始めました」
16日に作戦開始,アルシャバブ掃討作戦を始めたと述べ,
「派遣された部隊の規模など詳しいことは分かっていませんが、戦車を含む20台以上の武装したケニア軍の車両が、ソマリアに入ったという情報も伝えられています。また今回の作戦は、ケニア軍とソマリア暫定政府の軍が共同で実施し、国境付近の「アッシャバーブ」の2つの拠点を攻撃したという情報も伝えられています」
兵力についての明言なし。しかし,「戦車を含む20台以上」の車両とくれば,まずまずのところ。但し,方々の村落の拠点を掃討するには十分だろうが,同時に数か所で展開するのには難のある数字。都市を落とすなど思いもよらない。
MSN産経 ケニア軍、ソマリア南部に進軍 過激派と対決 2011.10.17 10:38
「ソマリアからの情報によると、隣国ケニア軍の部隊が17日までに、国境を越えてソマリア南部に戦車などで進軍した。部隊は400人規模で、空爆攻撃があったとの報道もある」
ソースの性質について言及はないものの,400人規模という具体的な数字がでている。常識的に「戦車を含む20台以上」とバランスの取れないものではないだろう。
「暫定政府軍とケニア軍は協力態勢を取っているという」
と最後に一文を付け加えているが,これが今回の作戦に限ったことか,それとも継続的に協力し続けているのかは,文脈上,必ずしも明らかではない。書き方としてはうまい。
朝日新聞 誘拐多発受けソマリアに軍派遣 ケニア 2011.10.17 10:38
「ケニア国内から外国人が相次いで誘拐され、ソマリアに連れ去られたことを受け、ケニア政府はソマリア側に軍隊を派遣し、16日に国境を越えた。現地からの報道によると、誘拐に関わった疑いがあるソマリア中南部を支配するイスラム武装勢力シャバブを追うためだという」
と,部隊派遣の理由をアルシャバブの無法にあるとする,ケニア側の見解を伝える一方,
「シャバブは国連や欧米系NGOの活動を「スパイ」と見なして活動禁止を表明。干ばつと飢饉(ききん)に苦しむ同国への援助の障害にもなっている。 ただ、今回の一連の誘拐にはシャバブのほか、海賊グループの関与も指摘されている。(ナイロビ=杉山正)」
と,『実は誘拐はアルシャバブでなくて海賊グループが関与しているかもよ!』と付言するのは,ケニアの行動に対する一定の疑念投げかけではあろう。
あり得る反論としては,『犯罪者グループの犯行の可能性があるなら,現地を支配している勢力=アルシャバブと,ケニアはまず交渉すべきだった!』だろうか。そんな事を言う人には
つ 「アルシャバブはケニアに聖戦を宣言する」2010-02-11
なので,ケニアとしては,『売られたケンカを買ってみましたが,何か?』なわけではある。
いや,『そんな口先だけの挑発を捉えて,対話もせず,いきなり軍事行動をとるのはおかしいと思う!』という向きがあるかとも思うが。
つ 「アルシャバブの兵,ケニア側に侵入―繰り返される挑発行動」2010-04-13
つ 「アルシャバブはケニア国境警備要員を攻撃した」2010-04-02
つ 「ケニア準軍事組織へ越境攻撃―ソマリア南部」2010-07-24
で,延々誘拐事件は起こるわなんだのと,対話の余地を削りまくってるのは寧ろアルシャバブの方であるな。果てはケニア市民を誘拐するし,「ケニア軍はわが市民の安寧を護る」という大義名分を営々として作り上げてきたのはアルシャバブだとは言える。
いやまあ,今から思えば:
「ケニア,Dhobleyのソマリア暫定政府軍将校団を改組」2011-09-26
これなんか,この攻撃のための調整だったりしたかなーという所ですが,こんな具合にケニアが蠢動するので,それを嫌ってアルシャバブはケニア本土にちょっかい掛けてきたと「弁護」する余地があります。
国境近くの兵力増強を嫌ったのだと―
つ 「アルシャバブはケニア首都攻撃を仄めかす」2010-01-22
つ 「ケニアはソマリアへの平和維持軍派遣を考慮している」2010-02-03
そういう「弁護」をする余地はありますが,自分の足元も確保しきってないのに,なんで戦線を広げるのかということはある。なので,この「弁護」をする向きは,
『アルシャバブは自分の実力も他人の実力も理解できないで威勢のいいことはいうけど,結局やることは辺境でちまちま銃撃戦をやったり,老人や医療関係者を誘拐したり誘拐犯から買い取ったりする程度の存在に過ぎないので,世界各国はかわいそうな子に暖かい理解の視線を投げかけてあげるべきです』
と,アルシャバブを超disる発言をしていることになるので注意。
あとまあ,辺境地の医療に挺身しようと思ったらその辺境の人に誘拐された人たちとか,目の前で旦那を銃殺された小母さんとかにも優しい視線が必要な気がする。
何にせよ,基本的には,この緩衝地帯―Jubalandの扱いについては,常識的なところに収まるのではなかろうか,
つ 「ジュバランド―ケニアにとっての緩衝地帯?」2011-05-07
他に
ロイター ケニア軍がソマリアに進攻、イスラム過激派への作戦で 2011年 10月 17日 09:06 JST
「ソマリア軍の司令官は、15日夜に同国南部にあるアルシャバブの基地に対して複数の空爆が行われたと発表。ケニア軍機によるものかどうかは確認できていないものの、「ケニアは軍事的にわが国を支援し、われわれの目的はアルシャバブをこの地域から追いやることだ」と語った」
空爆の存在を報じつつ,ケニア軍の攻撃はあくまでアルシャバブ追討に目的をおき,ソマリア政府ないしソマリア国民との衝突ではない旨の,ケニアの見解を伝える。
AFP ケニア軍、武装勢力攻撃のためソマリアに越境 2011年10月17日 11:49 発信地:ナイロビ/ケニア
「ケニア政府報道官のアルフレッド・マツア(Alfred Matua)氏は、ケニアで誘拐や攻撃を行ったアルシャバブを追って軍の部隊がソマリアに入ったと説明した。一方、アルシャバブ幹部のシェイク・ハッサン・トゥルキ(Sheikh Hassan Turki)氏は、「ケニアはソマリアの聖なる大地に入り、ソマリアの領有権を侵害した。だが彼らは落胆して帰国することになるだろう」と述べ、「ムジャヒディン戦士たちは彼らに銃弾の痛みを味わわせることになるだろう」と警告した」
…そう言えば先日のMSF誘拐事件の際,空陸から犯人を追跡している―とケニアは言っていたな。ケニアには,北部のソマリ人徴募の用意さえあった模様である。用意万端整って,切欠さえあればというタイミングだったと,そういうことになろうか。
もしもそうなら,この「400人」は第一次派遣団に過ぎない可能性さえある。現状なら,「誘拐犯」を追跡・捕縛するのに妥当なところではある。しかし,今後は―? いつの間にかJubalandの「ソマリア暫定政府軍」が増強していたり? そんなこともあるかもしれない。ソマリアではありえない練度の歩兵がいたり,とか。
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