瑕疵担保責任 改正民法 2020.4月施行

2019-04-18 13:33:23 | 法律

瑕疵担保責任 改正民法 2020.4月施行

(1) 瑕疵担保責任に関する変更

 ① 瑕疵から契約不適合へ

 現行民法では、売買の目的物に瑕疵があり、それが取引上要求される一般的な注意をしても発見できないものである場合に、瑕疵担保責任として、契約をした目的が達せられないときには契約の解除を、契約の解除ができないときには損害賠償の請求ができると定めていました(現行民法570条)。一方、改正法は、瑕疵という言葉の使用をやめ、契約の内容に適合しないもの(契約不適合)としています(改正民法562条)。

(買主の追完請求権)
 第五百六十二条 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
 2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。

 ② 履行追完請求権及び代金減額請求権 新設

 契約不適合の場合に当事者が求められる請求について、現行民法の瑕疵担保責任が規定していた契約の解除及び損害賠償請求に加えて、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完請求、及び履行の追完がなされない場合の代金の減額請求を新たに規定(改正民法562条及び563条)。

(買主の代金減額請求権)
 第五百六十三条 前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
 2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
  一 履行の追完が不能であるとき。
  二 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
  三 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
  四 前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
 3 第一項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前二項の規定による代金の減額の請求をすることができない。

③ 損害賠償請求 要件

 現行民法における瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求は、売主の帰責事由を要求しない無過失責任と解されていましたが、契約不適合に基づく損害賠償請求権は、債務不履行に基づく損害賠償請求と同様のものであるとされ(改正民法564条)、契約不適合が債務者の責めに帰さない事由による場合には、損害賠償請求が認められないことへ(改正民法415条1項但書)。

 (買主の損害賠償請求及び解除権の行使)
 第五百六十四条 前二条の規定は、第四百十五条の規定による損害賠償の請求並びに第五百四十一条及び第五百四十二条の規定による解除権の行使を妨げない。

(債務不履行による損害賠償)
第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
一 債務の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

 ④ 契約解除 要件

 現行民法の瑕疵担保責任に基づく契約解除は、契約をした目的が達せられないときに可能でした。改正法では、解除についても、債務不履行に基づく解除と同様のものであるとされ(改正民法564条)、買主は契約をした目的が達せられないという事情がなくても、催告のうえで契約を解除することができますが、債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときには、解除は認められません(改正民法541条)。

(催告による解除)
 第五百四十一条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

(催告によらない解除)
 第五百四十二条 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
  一 債務の全部の履行が不能であるとき。
  二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
  三 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
  四 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
  五 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
 2 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。
  一 債務の一部の履行が不能であるとき。
  二 債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

 (債権者の責めに帰すべき事由による場合)
 第五百四十三条 債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、前二条の規定による契約の解除をすることができない。

 ⑤ 担保責任の追及期間

 現行民法では、瑕疵担保責任の追及は、事実を知った時から1年以内に契約の解除又は損害賠償の請求をしなければならないとされていました。これに対し、改正法では、品質又は種類に関しての契約不適合があった場合、買主は、契約不適合を知った時から1年以内に、契約不適合である旨を相手方に通知するものとされ(改正民法566条)、1年以内に買主が行うべき行為が、契約解除又は損害賠償請求から契約不適合である旨の通知に変更されました。
 ただし,消滅時効の一般準則の適用は排除されないため,客観的起算点として,権利を行使することができる時から10年を経過した場合には,消滅時効が成立することになります(新166条1項2号)。この場面における「権利を行使することができる時」とは,目的物の引渡時を指します(最判平成13年11月27日民集55巻6号1311頁)。
 なお,上記の1年の期間制限は,数量・権利に関する契約不適合の場合には適用されません。これらの契約不適合に係る責任追及の期間制限については,消滅時効の一般準則(新166条1項)によることになります。

 (目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)
 第五百六十六条 売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。

(債権等の消滅時効)
 第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
  一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
  二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
 2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないときは、時効によって消滅する。
 3 前二項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。

(2)危険負担に関する変更

 現行民法では、当事者の責めに帰さない事由により契約の目的物が滅失・損傷した場合の危険の負担について、売主の帰責によらずに目的物(特定物及び不特定物で債権の目的物と確定したもの)が滅失・損傷した場合、その不利益は買主が負担するという、債権者主義がとられていました(現行民法534条)。改正民法では、現行民法534条及び535条を廃止して、売買の規定の中に、新たな規定を設けました。
 目的物が滅失・損傷した場合の危険は、目的物(特定物に限ります。)の引渡しによって売主から買主に移転することが明記され、引渡し後に当事者双方の責めに帰さない事由によって目的物が滅失・損傷した場合、買主は、履行の追完請求、代金減額請求、損害賠償請求及び契約の解除をすることができず、他方、買主は、代金の支払いを拒むことはできないとされています(改正民法567条1項)。また、売主が契約の内容に適合する目的物をもって引渡しの債務の履行を提供したにもかかわらず、買主がその履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合には、その履行の提供があったとき以降の目的物の滅失・損傷についても、同様とされています(改正民法567条2項)。

 (目的物の滅失等についての危険の移転)
 第五百六十七条 売主が買主に目的物(売買の目的として特定したものに限る。以下この条において同じ。)を引き渡した場合において、その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、買主は、その滅失又は損傷を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。この場合において、買主は、代金の支払を拒むことができない。
 2 売主が契約の内容に適合する目的物をもって、その引渡しの債務の履行を提供したにもかかわらず、買主がその履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその目的物が滅失し、又は損傷したときも、前項と同様とする。


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。