被相続人の死亡によりいったん相続登記(2人各2分の1)がされた土地について、調停がされ、その結果、相続人間で、一方が当該土地を取得し、他方(請求人)が金銭を受領した場合において、旧相続登記は共同相続人全員の遺産分割協議に基づいたものとは認められず、一方、調停による新相続登記と金銭の授受は、代償分割と認められ、請求人が土地の共有持分を他の相続人に譲渡したものではないとした事例
原処分庁は、被相続人(父)からの相続に係る旧相続登記(兄弟2人各2分の1)に際し、請求人の母が請求人の妻に、登記に必要な印鑑の預託及び登記費用の負担を請求しており、請求人の妻はその事実を請求人に説明していることから、請求人はそのことを承知しており、また、本件土地についてなされた旧相続登記に無効ないし錯誤の要因は認められず、本件土地の錯誤登記による所有権の抹消は、いったん有効になされた遺産分割のやり直しによる請求人の共有持分の譲渡と認めるのが相当であると主張する。
しかしながら、
[1]被相続人の遺産について、共同相続人の答述等からも遺産分割協議をした事実を確認できないこと、
[2]請求人の妻も三文判しか渡していないと認められること及び
[3]遺産分割協議書の存在が確認できないことから、
旧相続登記は被相続人の遺産について共同相続人全員の遺産分割協議に基づいて行われたものとは認められず、したがって、本件土地は、請求人と弟の間において分割前の共有の状態であったといわざるを得ない。
本件調停書に基づき、弟が本件土地を取得し、その代償として請求人が弟から250,000,000円を受領したことは、代償分割そのものであって、請求人が本件土地の持分2分の1を弟に譲渡したと認定することはできない。
平成7年1月30日裁決