所得税更正処分取消等請求事件 法令解釈・通達の効力等 補足意見

2020-09-16 14:50:47 | 税務・会計 所得税
 令和2年3月24日 第三小法廷判決 平成30年(行ヒ)第422号 所得税更正処分取消等請求事件

 補足意見

 1. 原審は,租税法規の解釈は原則として文理解釈によるべきであり,みだりに拡張解釈や類推解釈を行うことは許されないとし,通達の意味内容についてもその文理に忠実に解釈するのが相当であり,通達の文言を殊更に読み替えて異なる内容のものとして適用することは許されないという。原審のいう租税法規の文理解釈原則は,法規命令については,あり得べき解釈方法の一つといえよう。しかし,通達は,法規命令ではなく,講学上の行政規則であり,下級行政庁は原則としてこれに拘束されるものの,国民を拘束するものでも裁判所を拘束するものでもない。確かに原審の指摘するとおり,通達は一般にも公開されて納税者が具体的な取引等について検討する際の指針となっていることからすれば,課税に関する納税者の信頼及び予測可能性を確保することは重要であり,通達の公表は,最高裁昭和60年(行ツ)第125号同62年10月30日第三小法廷判決・裁判集民事152号93頁にいう「公的見解」の表示に当たり,それに反する課税処分は,場合によっては,信義則違反の問題を生ぜしめるといえよう。しかし,そのことは,裁判所が通達に拘束されることを意味するわけではない。さらに,所得税基本通達59-6は,評価通達の「例により」算定するものと定めているので,相続税と譲渡所得に関する課税の性質の相違に応じた読替えをすることを想定しており,このような読替えをすることは,そもそも,所得税基本通達の文理にも反しているとはいえないと考える。

 もっとも,租税法律主義は課税要件明確主義も内容とするものであり,所得税法に基づく課税処分について,相続税法に関する通達の読替えを行うという方法が,国民にとって分かりにくいことは否定できない。課税に関する予見可能性の点についての原審の判示及び被上告人らの主張には首肯できる面があり,より理解しやすい仕組みへの改善がされることが望ましいと思われる。

 2. 法廷意見で指摘しているとおり,所得税法に基づく譲渡所得に対する課税と相続税法に基づく相続税,贈与税の課税とでは,課税根拠となる法律を異にし,それぞれの法律に定められた課税を受けるべき主体,課税対象,課税標準の捉え方等の課税要件も異にするという差異がある。その点を踏まえると,所得税法適用のための通達の作成に当たり,相続税法適用のための通達を借用し,しかもその借用を具体的にどのように行うかを必ずしも個別に明記しないという所得税基本通達59-6で採られている通達作成手法には,通達の内容を分かりにくいものにしているという点において問題があるといわざるを得ない。本件は,そのような通達作成手法の問題点が顕在化した事案であったということができる。租税法の通達は課税庁の公的見解の表示として広く国民に受け入れられ,納税者の指針とされていることを踏まえるならば,そのような通達作成手法については,分かりやすさという観点から改善が望まれることはいうまでもない。
 
 さて,所得税基本通達59-6には上記の問題があることが認められるものの、より重要なことは,通達は,どのような手法で作られているかにかかわらず,課税庁の公的見解の表示ではあっても法規命令ではないという点である。そうであるからこそ,ある通達に従ったとされる取扱いが関連法令に適合するものであるか否か,すなわち適法であるか否かの判断においては,そのような取扱いをすべきことが関連法令の解釈によって導かれるか否かが判断されなければならない。税務訴訟においても,通達の文言がどのような意味内容を有するかが問題とされることはあるが,これは,通達が租税法の法規命令と同様の拘束力を有するからではなく,その通達が関連法令の趣旨目的及びその解釈によって導かれる当該法令の内容に合致しているか否かを判断するために問題とされているからにすぎない。そのような問題が生じた場合に,最も重要なことは,当該通達が法令の内容に合致しているか否かを明らかにすることである。通達の文言をいかに文理解釈したとしても,その通達が法令の内容に合致しないとなれば,通達の文理解釈に従った取扱いであることを理由としてその取扱いを適法と認めることはできない。このことからも分かるように,租税法の法令解釈において文理解釈が重要な解釈原則であるのと同じ意味で,文理解釈が通達の重要な解釈原則であるとはいえないのである。

 これを本件についてみると,本件においては,所得税法59条1項所定の「その時における価額」が争われているところ,同項は,譲渡所得について課税されることとなる譲渡人の下で生じた増加益の額を算定することを目的とする規定である。そして,所得税基本通達23~25共-9の(4)ニは,取引相場のない株式のうち売買実例のある株式等に該当しないものの価額を「1株又は1口当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」とし,さらに同通達59-6は,その価額について,原則として,同通達(1)~(4)によることを条件に評価通達の例により算定した価額とするとしていることは,法廷意見のとおりである。そして,先に述べたように,通達に従った取扱いは,当該通達が法令の内容に合致していない場合には,適法とはいえず,本件の場合,譲渡所得に対する所得税課税について相続税法に関する通達を借用した取扱いが適法となるのは,そのような借用が所得税法に合致する限度に限られる。所得税基本通達59-6は,取引相場のない株式に係る所得税法59条1項所定の「その時における価額」について,無限定に評価通達どおりに算定した額とするものとしているわけではなく,評価通達の「例により」算定した価額としていることは,法廷意見が指摘するとおりである。これは,同項の「その時における価額」の算定について評価通達を借用するに当たっては,少なくとも,譲渡所得に対して課される所得税と評価通達が直接対象としてきた相続税及び贈与税との差異から,所得税法の規定及びその趣旨目的に沿わない部分については,これを同法59条1項に合致するように適切な修正を加えて当てはめるという意味を含んでいると理解することができ,このことは,所得税基本通達59-6に,個別具体的にどのような修正をすべきかが明記されているか否かに左右されるものではない。

 このような理解を前提とする限り,所得税基本通達59-6による評価通達の借用は,所得税法59条1項に適合しているということができる。因みに,同項の「その時における価額」の算定においても評価通達の文言通りの取扱いをすべきとする根拠は,同項にもその他の関連する法令にも存在しない。そして,所得税基本通達59-6の(1)は,少数株主に該当するか否かの判断の前提となる「同族株主」に該当するかどうかにつき株式を譲渡又は贈与した個人(すなわち,株式を取得した者ではなく,株式の譲渡人)の当該譲渡又は贈与直前の議決権の数によると明記していることは原審判決も摘示しているとおりであるが,これは所得税法59条1項が譲渡所得に対する課税に関する規定であるため,同項に合致するよう評価通達に適切な修正を加える必要があるという理由から定められたものであることは明らかである。この理由は,評価通達188の(3)の少数株主の議決権の割合に言及している部分についても同様に当てはまる。なぜならば,譲渡人に課税される譲渡所得に対する所得税課税の場合には,譲渡の時までに譲渡人に生じた増加益の額の算定が問題となるのであるから,その額が,譲渡人が少数株主であったことによって影響を受けることはあり得るとしても,当該譲渡によって当該株式を取得し,当該譲渡後に当該株式を保有することとなる者が少数株主であるか否かによって影響を受けると解すべき理由はないからである。したがって,所得税法59条1項所定の「その時における価額」の算定に当たってなされる評価通達188の(3)を借用して行う少数株主か否かの判断は,当該株式を取得した株主についてではなく,当該株式を譲渡した株主について行うよう修正して同通達を当てはめるのでなければ,法令(すなわち所得税法59条1項)に適合する取扱いとはいえない。

 

労働基準法の一部改正 未払賃金が請求できる期間などが延長

2020-09-15 14:43:00 | 労働・社会保険

 労働基準法の一部改正 未払賃金が請求できる期間などが延長されます 2020年4月1日以降に支払われる賃金に適用されます

 概要

 1  賃金請求権の消滅時効期間の延長
 賃金請求権の消滅時効期間を5年(これまでは2年)に延長しつつ、当分の間はその期間が3年となります。※退職金請求権(現行5年)などの消滅時効期間に変更はありません。

 2 賃金台帳などの記録の保存期間の延長
 賃金台帳などの記録の保存期間を5年に延長しつつ、当分の間はその期間が3年になります。※併せて、記録の保存期間の起算日を明確化しました。

 3  付加金の請求期間の延長
 付加金を請求できる期間を5年(これまでは2年)に延長しつつ、当分の間はその期間が3年となります。
              改正前 改正後
 賃金請求権の消滅時効期間 2年 ⇒ 5年(当分の間は3年)
 記録の保存期間      3年 ⇒ 5年(当分の間は3年)
 付加金の請求期間     2年 ⇒ 5年(当分の間は3年)

 1  賃金請求権の消滅時効期間の延長
 2020年4月1日以降に支払期日が到来する全ての労働者の賃金請求権についての消滅時効期間を賃金支払期日から5年(これまでは2年)に延長しつつ、当分の間はその期間は3年となります。
 なお、退職金請求権(現行5年)などの消滅時効期間などに変更はありません。
 ○ 時効期間延長の対象となるもの
 金品の返還(労基法23条、賃金の請求に限る)賃金の支払(労基法24条) 非常時払(労基法25条)休業手当(労基法26条) 出来高払制の保障給(労基法27条)時間外・休日労働等に対する割増賃金(労基法37条)年次有給休暇中の賃金(労基法39条9項) 未成年者の賃金(労基法59条)

 2 賃金台帳などの記録の保存期間の延長
 事業者が保存すべき賃金台帳などの記録の保存期間について、5年に延長しつつ、当分の間はその期間は3年となります。また、②⑥⑦⑧の記録に関する賃金の支払期日が記録の完結の日などより遅い場合には、当該支払期日が記録の保存期間の起算日となることを明確化しました。
 ○ 保存期間延長の対象となるもの
 ①  労働者名簿
 ②  賃金台帳
 ③  雇入れに関する書類 ・・・ 雇入決定関係書類、契約書、労働条件通知書、履歴書 など
 ④ 解雇に関する書類 ・・・ 解雇決定関係書類、予告手当または退職手当の領収書など
 ⑤  災害補償に関する書類 ・・・ 診断書、補償の支払、領収関係書類など
 ⑥  賃金に関する書類 ・・・ 賃金決定関係書類、昇給減給関係書類など
 ⑦  その他の労働関係に関する重要な書類
  ・・・ 出勤簿、タイムカードなどの記録、労使協定の協定書、各種許認可書、始業・終業時刻など労働時間の記録に関する書類、退職関係書類など
 ⑧  労働基準法施行規則・労働時間等設定改善法施行規則で保存期間が定められている記録
 (※起算日の明確化を行う記録は、このうち賃金の支払いに係るものに限ります。)

 3  付加金の請求期間の延長
 2020年4月1日以降に、割増賃金等の支払がされなかったなどの違反があった場合、付加金※を請求できる期間を5年(これまでは2年)に延長しつつ、当分の間はその期間は3年となります。
 ○ 付加金制度の対象となるもの
  ・・・ 解雇予告手当(労基法20条1項) 休業手当(労基法26条)割増賃金(労基法37条) 年次有給休暇中の賃金(労基法39条9項)
 ※ 付加金とは、裁判所が、労働者の請求により、事業主に対して未払賃金に加えて支払を命じることができるもの

副業・兼業の促進に関するガイドライン 概要 (平成30年1月策定、令和2年9月改定)

2020-09-15 14:28:51 | 労働・社会保険
 副業・兼業の促進に関するガイドライン 概要 (平成30年1月策定、令和2年9月改定)

 ガイドラインの目的
 副業・兼業を希望する者が年々増加傾向にある中、安心して副業・兼業に取り組むことができるよう、副業・兼業の場合における労働時間管理や健康管理等について示す。

 ガイドラインの構成

 1  副業・兼業の現状
 ・ 副業・兼業を希望する者は、年々増加傾向にある。
 ・ 副業・兼業に関する裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であるとされている。
 ・ 厚生労働省のモデル就業規則でも、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。」とされている。
 
 2  副業・兼業の促進の方向性
 ・ 人生100年時代を迎え、若いうちから、自らの希望する働き方を選べる環境を作っていくことが必要。副業・兼業は、オープンイノベーションや起業の手段としても有効であり、都市部の人材を地方でも活かすという観点から地方創生にも資する面もある。
 ・ 副業・兼業を希望する労働者については、その希望に応じて幅広く副業・兼業を行える環境を整備することが重要である。
 ・ 長時間労働にならないよう、以下の3~5に留意して行われることが必要である。
 
 3  企業の対応
(1)基本的な考え方
 ・ 副業・兼業を進めるに当たっては、労働者と企業の双方が納得感を持って進めることができるよう、企業と労働者との間で十分にコミュニケーションをとることが重要である。
 ・ 使用者及び労働者は、①安全配慮義務、②秘密保持義務、③競業避止義務、④誠実義務に留意する必要がある。
 ・ 就業規則において、原則として労働者は副業・兼業を行うことができること、例外的に上記①~④に支障がある場合には副業・兼業を禁止又は制限できることとしておくことが考えられる。

(2)労働時間管理
 労働者が事業主を異にする複数の事業場で労働する場合には、労働基準法第38条第1項に基づき、以下により、労働時間を通算して管理することが必要である。
 ① 労働時間の通算が必要となる場合
 ・ 労働者が事業主を異にする複数の事業場において「労働基準法に定められた労働時間規制が適用される労働者」に該当する場合に、労働時間が通算される。
 ・ 事業主、委任、請負など労働時間規制が適用されない場合には、その時間は通算されない。
 ・ 法定労働時間、上限規制(単月100時間未満、複数月平均80時間以内)について、労働時間を通算して適用される。
 ・ 労働時間を通算して法定労働時間を超える場合には、長時間の時間外労働とならないようにすることが望ましい。
 ② 副業・兼業の確認
 ・ 使用者は、労働者からの申告等により、副業・兼業の有無・内容を確認する。
 ・ 使用者は、届出制など副業・兼業の有無・内容を確認するための仕組みを設けておくことが望ましい。
 ③ 労働時間の通算
 ・ 副業・兼業を行う労働者を使用する全ての使用者は、労働時間を通算して管理する必要がある。
 ・ 労働時間の通算は、自社の労働時間と、労働者からの申告等により把握した他社の労働時間を通算することによって行う。
 ・ 副業・兼業の開始前に、自社の所定労働時間と他社の所定労働時間を通算して、法定労働時間を超える部分がある場合には、その部分は後から契約した会社の時間外労働となる。
 ・ 副業・兼業の開始後に、所定労働時間の通算に加えて、自社の所定外労働時間と他社の所定外労働時間を、所定外労働が行われる順に通算して、法定労働時間を超える部分がある場合には、その部分が時間外労働となる。
 ④ 時間外労働の割増賃金の取扱い
 ・ 上記③の労働時間の通算によって時間外労働となる部分のうち、自社で労働させた時間について、時間外労働の割増賃金を支払う必要がある。
 ⑤ 簡便な労働時間管理の方法(「管理モデル」)
 ・ 上記③④のほかに、労働時間の申告等や通算管理における労使双方の手続上の負担を軽減し、労働基準法が遵守されやすくなる簡便な労働時間管理の方法(「管理モデル」)によることができる。
 ・ 「管理モデル」では、副業・兼業の開始前に、A社(先契約)の法定外労働時間とB社(後契約)の労働時間について、上限規制(単月100時間未満、複数月平均80時間以内)の範囲内でそれぞれ上限を設定し、それぞれについて割増賃金を支払うこととする。これにより、副業・兼業の開始後は、他社の実労働時間を把握しなくても労働基準法を遵守することが可能となる。
 ・ 「管理モデル」は、副業・兼業を行おうとする労働者に対してA社(先契約)が管理モデルによることを求め、労働者及び労働者を通じて使用者B(後契約)が応じることによって導入される。

 (3)健康管理
 ・ 使用者は、労働安全衛生法に基づき、健康診断、長時間労働者に対する面接指導、ストレスチェックやこれらの結果に基づく事後措置等を実施しなければならない。
 ・ 使用者の指示により副業・兼業を開始した場合は、原則として他社との情報交換により、難しい場合には労働者からの申告により他社の労働時間を把握し、自社の労働時間と通算した労働時間に基づき、健康確保措置を実施することが適当である。
 ・ 使用者が労働者の副業・兼業を認めている場合は、健康保持のため自己管理を行うよう指示し、心身の不調があれば都度相談を受けることを伝えること、副業・兼業の状況も踏まえ必要に応じ法律を超える健康確保措置を実施することなど、労使の話し合い等を通じ、副業・兼業を行う者の健康確保に資する措置を実施することが適当である。
 ・ 使用者の指示により副業・兼業を開始した場合は、実効ある健康確保措置を実施する観点から、他社との間で、労働の状況等の情報交換を行い、それに応じた健康確保措置の内容に関する協議を行うことが適当である。

 4  労働者の対応
 ・ 労働者は、自社の副業・兼業に関するルールを確認し、そのルールに照らして、業務内容や就業時間等が適切な副業・兼業を選択する必要がある。
 ・ 労働者は、副業・兼業による過労によって健康を害したり、業務に支障を来したりすることがないよう、自ら業務量や進捗状況、時間や健康状態を管理する必要がある。
 ・ 他社の業務量、自らの健康の状況等について報告することは、企業による健康確保措置を実効あるものとする観点から有効である。

 5  副業・兼業に関わるその他の制度
(1)労災保険の給付
 ・ 複数就業者について、非災害発生事業場の賃金額も合算して労災保険給付を算定する。
 ・ 複数就業者の就業先の業務上の負荷を総合的に評価して労災認定を行う。
 ・ 副業先への移動時に起こった災害は、通勤災害として労災保険給付の対象となる。

(2)雇用保険
 ・ 令和4年1月より、65歳以上の労働者本人の申出を起点として、一の雇用関係では被保険者要件を満たさない場合であっても、二の事業所の労働時間を合算して雇用保険を適用する制度が試行的に開始される。

請求人が前代表者に支給した金員は給与等の性質を有するから交際費等に該当しないとした事例 法人税 裁決事例

2020-09-15 10:34:43 | 税務・会計 法人税
 請求人が前代表者に支給した金員は給与等の性質を有するから交際費等に該当しないとした事例

 要旨

 原処分庁は、請求人の前代表者に支給された給与等(本件各金額)について、同人は請求人に対して人的役務の提供を行っておらず、地元対策等を目的とする同人の影響力に対する謝礼であるから交際費等に該当する旨主張する。
 しかしながら、前代表者は、取締役を退任する際に現在の代表者から、請求人と事業所周辺の住民との協調関係を維持すること、同業者及び取引先との調整等に協力すること、及び、請求人の従業員から相談を受けることや指導をすることなどの業務の依頼を受けており、代表取締役を退任した後、請求人の事務所に毎日出勤してこれらの業務を行っていたと認められる。そうすると、請求人と前代表者との間には雇用契約又はこれに類する合意が成立していると認められ、前代表者は、請求人の事務所等において、請求人の指揮命令に服して、継続的又は断続的に労務の提供を行っていたと認められることから、本件各金額は、労務の対価として支給した給与等に該当し、謝礼金(交際費等)には該当しない。

 平成24年3月6日裁決

利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A

2020-07-30 16:30:49 | 法律

 利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A

 令和2年7月17日 総務省 法務省 経済産業省

 Q1. 電子署名及び認証業務に関する法律(平成12年法律第102号、以下「電子署名法」という。)における「電子署名」とはどのようなものか。
 
 電子署名法における「電子署名」は、その第2条第1項において、デジタル情報(電磁的記録に記録することができる情報)について行われる措置であって、(1)当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること(同項第1号)及び(2)当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること(同項第2号)のいずれにも該当するものとされている。
 
 Q2. サービス提供事業者が利用者の指示を受けてサービス提供事業者自身の署名鍵による電子署名を行う電子契約サービスは、電子署名法上、どのように位置付けられるのか。
 
 近時、利用者の指示に基づき、利用者が作成した電子文書(デジタル情報)について、サービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行うサービスが登場している。このようなサービスについては、サービス提供事業者が「当該措置を行った者」(電子署名法第2条第1項第1号)と評価されるのか、あるいは、サービスの内容次第では利用者が当該措置を行ったと評価することができるのか、電子署名法上の位置付けが問題となる。
電子署名法第2条第1項第1号の「当該措置を行った者」に該当するためには、必ずしも物理的に当該措置を自ら行うことが必要となるわけではなく、例えば、物理的にはAが当該措置を行った場合であっても、Bの意思のみに基づき、Aの意思が介在することなく当該措置が行われたものと認められる場合であれば、「当該措置を行った者」はBであると評価することができるものと考えられる。
 
 このため、利用者が作成した電子文書について、サービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化を行うこと等によって当該文書の成立の真正性及びその後の非改変性を担保しようとするサービスであっても、技術的・機能的に見て、サービス提供事業者の意思が介在する余地がなく、利用者の意思のみに基づいて機械的に暗号化されたものであることが担保されていると認められる場合であれば、「当該措置を行った者」はサービス提供事業者ではなく、その利用者であると評価し得るものと考えられる。
 
 そして、上記サービスにおいて、例えば、サービス提供事業者に対して電子文書の送信を行った利用者やその日時等の情報を付随情報として確認することができるものになっているなど、当該電子文書に付された当該情報を含めての全体を1つの措置と捉え直すことよって、電子文書について行われた当 該措置が利用者の意思に基づいていることが明らかになる場合には,これらを全体として1つの措置と捉え直すことにより、「当該措置を行った者(=当該利用者)の作成に係るものであることを示すためのものであること」という要件(電子署名法第2条第1項第1号)を満たすことになるものと考えられる。

 Q3. どのような電子契約サービスを選択することが適当か。

 電子契約サービスにおける利用者の本人確認の方法やなりすまし等の防御レベルなどは様々であることから、各サービスの利用に当たっては、当該サービスを利用して締結する契約等の性質や、利用者間で必要とする本人確認レベルに応じて、適切なサービスを選択することが適当と考えられる。