利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A

2020-07-30 16:30:49 | 法律

 利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A

 令和2年7月17日 総務省 法務省 経済産業省

 Q1. 電子署名及び認証業務に関する法律(平成12年法律第102号、以下「電子署名法」という。)における「電子署名」とはどのようなものか。
 
 電子署名法における「電子署名」は、その第2条第1項において、デジタル情報(電磁的記録に記録することができる情報)について行われる措置であって、(1)当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること(同項第1号)及び(2)当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること(同項第2号)のいずれにも該当するものとされている。
 
 Q2. サービス提供事業者が利用者の指示を受けてサービス提供事業者自身の署名鍵による電子署名を行う電子契約サービスは、電子署名法上、どのように位置付けられるのか。
 
 近時、利用者の指示に基づき、利用者が作成した電子文書(デジタル情報)について、サービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行うサービスが登場している。このようなサービスについては、サービス提供事業者が「当該措置を行った者」(電子署名法第2条第1項第1号)と評価されるのか、あるいは、サービスの内容次第では利用者が当該措置を行ったと評価することができるのか、電子署名法上の位置付けが問題となる。
電子署名法第2条第1項第1号の「当該措置を行った者」に該当するためには、必ずしも物理的に当該措置を自ら行うことが必要となるわけではなく、例えば、物理的にはAが当該措置を行った場合であっても、Bの意思のみに基づき、Aの意思が介在することなく当該措置が行われたものと認められる場合であれば、「当該措置を行った者」はBであると評価することができるものと考えられる。
 
 このため、利用者が作成した電子文書について、サービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化を行うこと等によって当該文書の成立の真正性及びその後の非改変性を担保しようとするサービスであっても、技術的・機能的に見て、サービス提供事業者の意思が介在する余地がなく、利用者の意思のみに基づいて機械的に暗号化されたものであることが担保されていると認められる場合であれば、「当該措置を行った者」はサービス提供事業者ではなく、その利用者であると評価し得るものと考えられる。
 
 そして、上記サービスにおいて、例えば、サービス提供事業者に対して電子文書の送信を行った利用者やその日時等の情報を付随情報として確認することができるものになっているなど、当該電子文書に付された当該情報を含めての全体を1つの措置と捉え直すことよって、電子文書について行われた当 該措置が利用者の意思に基づいていることが明らかになる場合には,これらを全体として1つの措置と捉え直すことにより、「当該措置を行った者(=当該利用者)の作成に係るものであることを示すためのものであること」という要件(電子署名法第2条第1項第1号)を満たすことになるものと考えられる。

 Q3. どのような電子契約サービスを選択することが適当か。

 電子契約サービスにおける利用者の本人確認の方法やなりすまし等の防御レベルなどは様々であることから、各サービスの利用に当たっては、当該サービスを利用して締結する契約等の性質や、利用者間で必要とする本人確認レベルに応じて、適切なサービスを選択することが適当と考えられる。

押印についてのQ&A 契約書 政府見解

2020-06-22 14:03:49 | 法律
 
押印についてのQ&A 令和2年6月 19 日 内 閣 府 法 務 省 経 済 産 業 省

 問1. 契約書に押印をしなくても、法律違反にならないか。
 ・ 私法上、契約は当事者の意思の合致により、成立するものであり、書面の作成及びその書面への押印は、特段の定めがある場合を除き、必要な要件とはされていない。
 ・ 特段の定めがある場合を除き、契約に当たり、押印をしなくても、契約の効力に影響は生じない。

 問2. 押印に関する民事訴訟法のルールは、どのようなものか。
 ・ 民事裁判において、私文書が作成者の認識等を示したものとして証拠(書証)になるためには、その文書の作成者とされている人(作成名義人)が真実の作成者であると相手方が認めるか、そのことが立証されることが必要であり、これが認められる文書は、「真正に成立した」ものとして取り扱われる。民事裁判上、真正に成立した文書は、その中に作成名義人の認識等が示されているという意味での証拠力(これを「形式的証拠力」という。)が認められる。
 ・ 民訴法第 228 条第4項には、「私文書は、本人[中略]の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」という規定がある。この規定により、契約書等の私文書の中に、本人の押印(本人の意思に基づく押印と解釈されている。)があれば、その私文書は、本人が作成したものであることが推定される。
 ・ この民訴法第 228 条第4項の規定の内容を簡単に言い換えれば、裁判所は、ある人が自分の押印をした文書は、特に疑わしい事情がない限り、真正に成立したものとして、証拠に使ってよいという意味である。そのため、文書の真正が裁判上争いとなった場合でも、本人による押印があれば、証明の負担が軽減されることになる。
 ・ もっとも、この規定は、文書の真正な成立を推定するに過ぎない。その文書が事実の証明にどこまで役立つのか(=作成名義人によってその文書に示された内容が信用できるものであるか)といった中身の問題(これを「実質的証拠力」という。)は、別の問題であり、民訴法第 228 条第4項は、実質的証拠力については何も規定していない。
 ・ なお、文書に押印があるかないかにかかわらず、民事訴訟において、故意又は重過失により真実に反して文書の成立を争ったときは、過料に処せられる(民訴法第 230 条第1項)。

 問3. 本人による押印がなければ、民訴法第 228 条第4項が適用されないため、文書が真正に成立したことを証明できないことになるのか。
 ・ 本人による押印の効果として、文書の真正な成立が推定される(問2参照)。
 ・ そもそも、文書の真正な成立は、相手方がこれを争わない場合には、基本的に問題とならない。また、相手方がこれを争い、押印による民訴法第 228 条第4項の推定が及ばない場合でも、文書の成立の真正は、本人による押印の有無のみで判断されるものではなく、文書の成立経緯を裏付ける資料など、証拠全般に照らし、裁判所の自由心証により判断される。他の方法によっても文書の真正な成立を立証することは可能であり(問6参照)、本人による押印がなければ立証できないものではない。
 ・ 本人による押印がされたと認められることによって文書の成立の真正が推定され、そのことにより証明の負担は軽減されるものの、相手方による反証が可能なものであって、その効果は限定的である(問4、5参照)。
 ・ このように、形式的証拠力を確保するという面からは、本人による押印があったとしても万全というわけではない。そのため、テレワーク推進の観点からは、必ずしも本人による押印を得ることにこだわらず、不要な押印を省略したり、「重要な文書だからハンコが必要」と考える場合であっても押印以外の手段で代替したりすることが有意義であると考えられる。

 問4. 文書の成立の真正が裁判上争われた場合において、文書に押印がありさえすれば、民訴法第 228 条第4項が適用され、証明の負担は軽減されることになるのか。
 ・ 押印のある文書について、相手方がその成立の真正を争った場合は、通常、その押印が本人の意思に基づいて行われたという事実を証明することになる。
 ・ そして、成立の真正に争いのある文書について、印影と作成名義人の印章が一致することが立証されれば、その印影は作成名義人の意思に基づき押印されたことが推定され、更に、民訴法第 228条第4項によりその印影に係る私文書は作成名義人の意思に基づき作成されたことが推定されるとする判例(最判昭 39・5・12民集 18 巻4号 597 頁)がある。これを「二段の推定」と呼ぶ。
 ・  この二段の推定により証明の負担が軽減される程度は、次に述べるとおり、限定的である。
 ① 推定である以上、印章の盗用や冒用などにより他人がその印章を利用した可能性があるなどの反証が相手方からなされた場合には、その推定は破られ得る。
 ② 印影と作成名義人の印章が一致することの立証は、実印である場合には印鑑証明書を得ることにより一定程度容易であるが、いわゆる認印の場合には事実上困難が生じ得ると考えられる(問5参照)。
 ・ なお、次に述べる点は、文書の成立の真正が証明された後の話であり、形式的証拠力の話ではないが、契約書を始めとする法律行為が記載された文書については、文書の成立の真正が認められれば、その文書に記載された法律行為の存在や内容(例えば契約の成立や内容)は認められやすい。他方、請求書、納品書、検収書等の法律行為が記載されていない文書については、文書の成立の真正が認められても、その文書が示す事実の基礎となる法律行為の存在や内容(例えば、請求書記載の請求額の基礎となった売買契約の成立や内容)については、その文書から直接に認められるわけではない。このように、仮に文書に押印があることにより文書の成立の真正についての証明の負担が軽減されたとしても、そのことの裁判上の意義は、文書の性質や立証命題との関係によっても異なり得ることに留意する必要がある。

 問5. 認印や企業の角印についても、実印と同様、「二段の推定」により、文書の成立の真正について証明の負担が軽減されるのか。
 ・ 「二段の推定」は、印鑑登録されている実印のみではなく認印にも適用され得る(最判昭和 50・6・12 裁判集民 115 号 95 頁)。
 ・ 文書への押印を相手方から得る時に、その印影に係る印鑑証明書を得ていれば、その印鑑証明書をもって、印影と作成名義人の印章の一致を証明することは容易であるといえる。
 ・ また、押印されたものが実印であれば、押印時に印鑑証明書を得ていなくても、その他の手段により事後的に印鑑証明書を入手すれば、その印鑑証明書をもって、印影と作成名義人の印章の一致を証明することができる。ただし、印鑑証明書は通常相手方のみが取得できるため、紛争に至ってからの入手は容易ではないと考えられる。
 ・ 他方、押印されたものが実印でない(いわゆる認印である)場合には、印影と作成名義人の印章の一致を相手方が争ったときに、その一致を証明する手段が確保されていないと、成立の真正について「二段の推定」が及ぶことは難しいと思われる。そのため、そのような押印が果たして本当に必要なのかを考えてみることが有意義であると考えられる。
 ・ なお、3Dプリンター等の技術の進歩で、印章の模倣がより容易であるとの指摘もある。

 問6. 文書の成立の真正を証明する手段を確保するために、どのようなものが考えられるか。
 ・ 次のような様々な立証手段を確保しておき、それを利用することが考えられる。
 ①  継続的な取引関係がある場合
 取引先とのメールのメールアドレス・本文及び日時等、送受信記録の保存(請求書、納品書、検収書、領収書、確認書等は、このような方法の保存のみでも、文書の成立の真正が認められる重要な一事情になり得ると考えられる。)
 ②  新規に取引関係に入る場合
  契約締結前段階での本人確認情報(氏名・住所等及びその根拠資料としての運転免許証など)の記録・保存
  本人確認情報の入手過程(郵送受付やメールでの PDF 送付)の記録・保存
  文書や契約の成立過程(メールや SNS 上のやり取り)の保存
 ③  電子署名や電子認証サービスの活用(利用時のログイン ID・日時や認証結果などを記録・保存できるサービスを含む。)

 ・ 上記①、②については、文書の成立の真正が争われた場合であっても、例えば下記の方法により、その立証が更に容易になり得ると考えられる。また、こういった方法は技術進歩により更に多様化していくことが想定される。
 (a) メールにより契約を締結することを事前に合意した場合の当該合意の保存
 (b) PDF にパスワードを設定
 (c) (b)の PDF をメールで送付する際、パスワードを携帯電話等の別経路で伝達
 (d) 複数者宛のメール送信(担当者に加え、法務担当部長や取締役等の決裁権者を宛先に含める等)
 (e) PDF を含む送信メール及びその送受信記録の長期保存

法務局における遺言書の保管等に関する政令の概要

2020-06-13 12:28:53 | 法律
 法務局における遺言書の保管等に関する政令の概要

 令和元年12月11日に公布された法務局における遺言書の保管等に関する政令の概要は以下のとおりです(令和2年7月10日施行)。

 ○ 遺言書の保管の申請の却下
 遺言書保管官は,遺言書の保管の申請が遺言者以外の者によるものである場合等には,理由を付した決定で,当該申請を却下することとなります(第2条)。

 ○  遺言者の住所等の変更の届出
 遺言者は,保管の申請をした遺言書が遺言書保管所に保管されている場合において,遺言者の住所等に変更が生じたときは,速やかに,その旨を遺言書保管官に届出をする必要があります(第3条)。

 ○  遺言者による遺言書保管ファイルの記録の閲覧
 遺言者は,遺言書保管官に対し,いつでも,保管の申請をした遺言書に係る遺言書保管ファイルに記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求をすることができます(第4条)。

 ○  遺言書の保管期間
 遺言書保管法第6条第5項(法第7条第3項において準用する場合を含む。)の遺言者の生死が明らかでない場合における遺言者の死亡の日に相当する日として政令で定める日は,遺言者の出生の日から起算して120年を経過した日です(第5条第1項)。
 遺言書保管法第6条第5項(法第7条第3項において準用する場合を含む。 )の相続に関する紛争を防止する必要があると認められる期間として政令で定める期間は,遺言書については50年,遺言書に係る情報については150年です(第5条第2項)。

 ○ 遺言書情報証明書の送付請求
 遺言書情報証明書又は遺言書保管事実証明書の交付を請求する場合において,その送付を求めるときは,当該送付に要する費用を納付する必要があります(第6条)。

 ○ 遺言書の保管申請書等の閲覧
 遺言者は,特別の事由があるときは,遺言書保管官に対し,遺言書の保管の申請に係る申請書又はその添付書類等の閲覧の請求をすることができます(第10条第1項,第2項)。
 遺言者の相続人等は,当該遺言者が死亡している場合において,特別の事由があるときは,遺言書保管官に対し,遺言書の保管の申請に係る申請書又はその添付書類等の閲覧の請求をすることができます(第10条第3項,第4項)。

 法務局における遺言書の保管等に関する法律関係手数料令の概要
 令和2年3月23日,法務局における遺言書の保管等に関する法律関係手数料令が公布されました(令和2年7月10日施行)。
 同令において,以下のとおり遺言書の保管の申請等に係る手数料の額が定められました。

 申請・請求の種別         申請・請求者      手数料
 遺言書の保管の申請       遺言者          一件につき,3900円
 遺言書の閲覧の請求(モニター)   遺言者 関係相続人等  一回につき,1400円
 遺言書の閲覧の請求(原本)      遺言者 関係相続人等  一回につき,1700円
 遺言書情報証明書の交付請求     関係相続人等      一通につき,1400円
 遺言書保管事実証明書の交付請求  関係相続人等       一通につき,800円
 申請書等・撤回書等の閲覧の請求  遺言者 関係相続人等  一の申請に関する申請書等又は一の撤回に関する撤回書等につき,1700円

※ 遺言書の保管の申請の撤回及び変更の届出については手数料はかかりません。

東京都自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例

2019-11-30 17:42:05 | 法律

 東京都自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例 改正

 施行 令和2年4月1日

 自転車利用中の対人賠償事故に備える保険等(自転車の利用によって生じた他人の生命または身体の損害を賠償するための保険・共済)の加入が義務化

 対象

 自転車利用者・利用者が未成年の場合はその保護者・自転車使用事業者・自転車貸付事業者

司法書士の業務

2019-11-22 16:09:29 | 法律

 司法書士の業務

 (1) 登記又は供託に関する手続について代理すること。
(登記に関する手続とは,不動産の権利に関する登記に関する登記申請手続のほか,会社・法人に関する登記申請手続及び抵当証券法に基づく抵当証券交付申請手続などをいう。)

 (2) 裁判所,検察庁又は(地方)法務局に提出する書類を作成すること。
(裁判所に提出する書類とは訴状や準備書面を指し,検察庁に提出する書類とは告訴状等を指し,法務局・地方法務局に提出する書類とは,登記申請書のほか,登記原因証書となる売買契約書等をいう。)

 (3) (地方)法務局長に対する登記又は供託に関する審査請求の手続について代理すること。
(審査請求とは,不動産の権利に関する登記についての登記官の処分が不当であるとする者が(地方)法務局長に対して行う不服申立てをいう。)

 (4) 簡裁訴訟代理等関係業務を行うこと。
(簡裁訴訟代理等関係業務とは,簡易裁判所における訴訟手続,支払督促手続,民事保全手続,民事調停手続等であって,簡易裁判所の事物管轄に属する事件について代理することをいう。)

 ※  (1)~(4)の事務に関して,相談に応じること等も,業務に含まれる。
 ※  (4)の業務については,簡裁訴訟代理等関係業務を行うのに必要な能力を有すると法務大臣が認定した司法書士に限り,行うことができる。