公的年金制度の仕組み

2019-05-31 17:29:25 | 労働・社会保険

 公的年金制度の仕組み

 現役世代が払った保険料を高齢者に給付する、世代間での支え合い

 公的年金制度は、いま働いている世代(現役世代)が支払った保険料を仕送りのように高齢者などの年金給付に充てるという「世代と世代の支え合い」という考え方(これを賦課方式といいます)を基本とした財政方式で運営されています(保険料収入以外にも、年金積立金や税金が年金給付に充てられています)。

 また、日本の公的年金制度は、「国民皆年金」という特徴を持っており、20歳以上の全ての人が共通して加入する国民年金と、会社員が加入する厚生年金などによる、いわゆる「2階建て」と呼ばれる構造になっています。

 具体的には、自営業者など国民年金のみに加入している人(第一号被保険者)は、毎月定額の保険料を自分で納め、会社員や公務員で厚生年金や共済年金に加入している人(第二号被保険者)は、毎月定率の保険料を会社と折半で負担し、保険料は毎月の給料から天引きされます。専業主婦など扶養されている人(第三号被保険者)は、厚生年金制度などで保険料を負担しているため、個人としては保険料を負担する必要はありません。老後には、全ての人が老齢基礎年金を、厚生年金などに加入していた人は、それに加えて、老齢厚生年金などを受け取ることができます。

 このように、公的年金制度は、基本的に日本国内に住む20歳から60歳の全ての人が保険料を納め、その保険料を高齢者などへ年金として給付する仕組みとなっています。


取引相場のない株式 弔慰金控除の可否 裁決事例 相続税

2019-05-31 17:16:26 | 相続・贈与(税)

 取引相場のない株式を純資産価額方式により評価する場合において、評価会社が負担した弔慰金については、相続財産とみなされず、実質上の二重課税とはならないので、負債に計上する必要はないとした事例

 取引相場のない株式の課税時期における1株当たりの純資産価額の計算を行う場合、退職手当金等も弔慰金も、課税時期において確定している債務ではないから、本来、評価会社の純資産価額を算定するについての負債とはならないものである。
 
 しかしながら、退職手当金等については、相続税法第3条第1項第2号の規定により相続又は遺贈により取得したものとみなされ、相続税の課税価格に算入されて課税されるため、評価会社の純資産価額の計算において負債に計上しなければ、相続税において実質上の二重課税が生じることになるので、退職手当金等を負債として計上する必要があり、財産評価基本通達186において、負債に含まれるものとして取り扱われているものであり、この取り扱いは当審判所においても相当と認められる。

 これに対して、相続税法基本通達3-18ないし3-23の区分により弔慰金とされたものについては、退職手当金等と異なり相続財産とはみなされず、実質上の二重課税とはならないので、弔慰金を負債に計上する必要はない。したがって、弔慰金を負債に計上することはできないと解するのが相当である。

 また、請求人らは、株式の評価に当たり弔慰金を負債に計上しないと、弔慰金の給付を非課税としている労働者災害補償保険法等の法規との均衡を欠く旨主張するが、本件においては、弔慰金そのものを課税の対象としたものではなく、課税の対象となる株式の評価に当たり弔慰金に相当する金額を考慮して(相続する株式の価値を減少させて)算定するか否かという相続財産の評価の問題であるから、弔慰金を負債に計上せずに株式を評価することは、労働者災害補償保険法等の法規との均衡を欠くものとはいえない。

 平成16年4月22日裁決

過大な不動産管理料 裁決事例 不動産所得 所得税

2019-05-31 17:11:06 | 税務・会計 所得税

 過大な不動産管理料につき、所得税法第157条を適用して否認した更正は適法であるとした事例

 所得税法第157条に規定する同族会社の行為又は計算の否認は、同族会社たる法人の選択した行為又は計算が実在し、それが私法上有効なものであっても、その私法上許された形式を濫用し、異常な取引形式を選択した場合において、それが所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合には、実質課税の原則及び租税負担公平の原則の見地から税務計算上これを否認し、通常あるべき行為又は計算に引き直して税法を適用するものである。

 ところで、原処分庁が算定した同業者の不動産管理料割合は適正と認められ、これを基に算出された適正管理料の額に基づいて計算した請求人の所得税額は請求人の申告所得税の額に比べて著しくかい離していることが明らかであり、本件不動産管理委託契約に基づく行為又は計算は、請求人の所得税の負担を不当に減少させる結果となっていると認められるから、請求人の不動産所得の金額を所得税法第157条を適用して算定した原処分は相当である。

 平成4年11月9日裁決

副業・兼業の促進に関するガイドライン 抜粋

2019-05-30 15:16:27 | 労働・社会保険
 
 1. 副業・兼業の促進の方向性

 (1) 副業・兼業は、労働者と企業それぞれにメリットと留意すべき点がある。

 労働者

 メリット
 ① 離職せずとも別の仕事に就くことが可能となり、スキルや経験を得ることで、労働者が主体的にキャリアを形成することができる。
 ② 本業の所得を活かして、自分がやりたいことに挑戦でき、自己実現を追求することができる。
 ③ 所得が増加する。
 ④ 本業を続けつつ、よりリスクの小さい形で将来の起業・転職に向けた準備・試行ができる。
 留意点
 ① 就業時間が長くなる可能性があるため、労働者自身による就業時間や健康の管理も一定程度必要である。
 ② 職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務を意識することが必要である。
 ③ 1週間の所定労働時間が短い業務を複数行う場合には、雇用保険等の適用がない場合があることに留意が必要である。

 企業

 メリット
 ① 労働者が社内では得られない知識・スキルを獲得することができる。
 ② 労働者の自律性・自主性を促すことができる。
 ③ 優秀な人材の獲得・流出の防止ができ、競争力が向上する。
 ④ 労働者が社外から新たな知識・情報や人脈を入れることで、事業機会の拡大につながる。
 留意点
 ① 必要な就業時間の把握・管理や健康管理への対応、職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務をどう確保するかという懸念への対応が必要である。
 
 (2) また、副業・兼業は、社会全体としてみれば、オープンイノベーションや 起業の手段としても有効であり、都市部の人材を地方でも活かすという観点から地方創生にも資する面もあると考えられる。

 (3) これらを踏まえると、労働者が副業・兼業を行う理由は、自分がやりたい 仕事であること、十分な収入の確保等さまざまであり、業種や職種によって 仕事の内容、収入等も様々な実情があるが、自身の能力を一企業にとらわれ ずに幅広く発揮したい、スキルアップを図りたいなどの希望を持つ労働者が いることから、こうした労働者については、長時間労働、企業への労務提供上の支障や企業秘密の漏洩等を招かないよう留意しつつ、雇用されない働き 方も含め、その希望に応じて幅広く副業・兼業を行える環境を整備すること が重要である。いずれの形態の副業・兼業においても、長時間労働にならないよう、以下 の3~5に留意して行われることが必要である。 なお、労働基準法の労働時間規制を潜脱するような形態や、合理的な理由なく労働条件を労働者の不利益に変更するような形態で行われる副業・兼業 は、認められない。

 2. 企業の対応

 (1) 裁判例を踏まえれば、原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当である。副業・兼業を禁止、一律許可制にしている企業は、副業・兼業が自社での業務に支障をもたらすものかどうかを今一度精査したうえで、そのような事情がなければ、労働時間以外の時間については、労働者の希望に応じて、原則、副業・兼業を認める方向で検討することが求められる。 また、実際に副業・兼業を進めるにあたっては、労働者と企業双方が納得感を持って進めることができるよう、労働者と十分にコミュニケーションをとることが重要である。

 (2) 副業・兼業を認める場合、労務提供上の支障や企業秘密の漏洩等がないか、また、長時間労働を招くものとなっていないか確認する観点から、副業・兼業の内容等を労働者に申請・届出させることも考えられる。 その場合も、労働者と企業とのコミュニケーションが重要であり、副業・兼業の内容等を示すものとしては、当該労働者が副業・兼業先に負っている 守秘義務に留意しつつ、例えば、自己申告のほか、労働条件通知書や契約書、副業・兼業先と契約を締結する前であれば、募集に関する書類を活用することが考えられる。

 (3) 特に、労働者が、自社、副業・兼業先の両方で雇用されている場合には、 労働時間に関する規定の適用について通算するとされていることに留意する 必要がある。また、労働時間や健康の状態を把握するためにも、副業・兼業 の内容等を労働者に申請・届出させることが望ましい。

 就業時間の把握について

 労働基準法第38条では「労働時間は、事業場を異にする場合においても、 労働時間に関する規定の適用については通算する。」と規定されており、「事業場を異にする場合」とは事業主を異にする場合をも含む。(労働基準 局長通達(昭和23年5月14日基発第769号))
 使用者は、労働者が労働基準法の労働時間に関する規定が適用される副 業・兼業をしている場合、労働者からの自己申告により副 業・兼業先での労働時間を把握することが考えられる。
 個人事業主や委託契約・請負契約等により労働基準法上の労働者でない者 として、または、労働基準法上の管理監督者として、副業・兼業を行う者に ついては、労働基準法の労働時間に関する規定が適用されない。 なお、この場合においても、過労等により業務に支障を来さないようにす る観点から、その者の自己申告により就業時間を把握すること等を通じて、就業時間が長時間にならないよう配慮することが望ましい。

 3. 労働者の対応

 (1) 労働者は、副業・兼業を希望する場合にも、まず、自身が勤めている企業 の副業・兼業に関するルール(労働契約、就業規則等)を確認し、そのルー ルに照らして、業務内容や就業時間等が適切な副業・兼業を選択する必要が ある。また、実際に副業・兼業を行うにあたっては、労働者と企業双方が納 得感を持って進めることができるよう、企業と十分にコミュニケーションをとることが重要である。
 
 (2) また、(1)により副業・兼業を行うにあたっては、副業・兼業による過 労によって健康を害したり、業務に支障を来したりすることがないよう、労働者(管理監督者である労働者も含む)が自ら、本業及び副業・兼業の業務 量や進捗状況、それらに費やす時間や健康状態を管理する必要がある。

 (3) そこで、使用者が提供する健康相談等の機会の活用や、勤務時間や健康診 断の結果等の管理が容易になるようなツールを用いることが望ましい。始業 ・終業時刻、休憩時間、勤務時間、健康診断等の記録をつけていくような民間等のツールを活用して、自己の就業時間や健康の管理に努めることが考えられる。ツールは、副業・兼業先の就業時間を自己申告により使用者に伝えるときにも活用できるようなものが望ましい。

 (4) なお、副業・兼業を行い、20万円を超える副収入がある場合は、企業によ る年末調整ではなく、個人による確定申告が必要である。

 4. 副業・兼業に関わるその他の現行制度について

 (1) 労災保険の給付(休業補償、障害補償、遺族補償等)事業主は、労働者が副業・兼業をしているかにかかわらず、労働者を1人でも雇用していれば、労災保険の加入手続を行う必要がある。なお、労災保険制度は労働基準法における個別の事業主の災害補償責任を担 保するものであるため、その給付額については、災害が発生した就業先の賃金 分のみに基づき算定している。また、労働者が、自社、副業・兼業先の両方で雇用されている場合、一の就業先から他の就業先への移動時に起こった災害については、通勤災害として労災保険給付の対象となる。

 (注)事業場間の移動は、当該移動の終点たる事業場において労務の提供を行 うために行われる通勤であると考えられ、当該移動の間に起こった災害に関する保険関係の処理については、終点たる事業場の保険関係で行うものとしている。(労働基準局長通達(平成18年3月31日基発第0331042号))

 (2) 雇用保険、厚生年金保険、健康保険 雇用保険制度において、労働者が雇用される事業は、その業種、規模等を問わず、全て適用事業(農林水産の個人事業のうち常時5人以上の労働者を雇用する事業以外の事業については、暫定任意適用事業)である。 このため、適用事業所の事業主は、雇用する労働者について雇用保険の加入手続きを行わなければならない。
 ただし、同一の事業主の下で、①1週間の所 定労働時間が20時間未満である者、②継続して31日以上雇用されることが見込まれない者については被保険者とならない(適用除外)。また、同時に複数の事業主に雇用されている者が、それぞれの雇用関係において被保険者要件を満たす場合、その者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係についてのみ被保険者となる。
 社会保険(厚生年金保険及び健康保険)の適用要件は、事業所毎に判断するため、複数の雇用関係に基づき複数の事業所で勤務する者が、いずれの事業所においても適用要件を満たさない場合、労働時間等を合算して適用要件を満たしたとしても、適用されない。
 また、同時に複数の事業所で就労している者が、それぞれの事業所で被保険者要件を満たす場合、被保険者は、いずれかの事業所の管轄の年金事務所及び医療保険者を選択し、当該選択された年金事務所及び医療保険者において各事業所の報酬月額を合算して、標準報酬月額を算定し、 保険料を決定する。その上で、各事業主は、被保険者に支払う報酬の額により按分した保険料を、選択した年金事務所に納付(健康保険の場合は、選択した医療保険者等に納付)することとなる。


連帯納付義務の解釈 裁決事例 相続税

2019-05-30 15:07:53 | 相続・贈与(税)

 相続税法第34条第1項の連帯納付義務は、相続税徴収の確保を図るため、相互に各相続人に課した特別の責任であって、各相続人の固有の納税義務が確定すれば、他の共同相続人に徴収手続を行うことができ、滞納者に徴収手続を尽くした後でなければ、共同相続人に徴収手続を行えないというものではないとされた事例

 相続税法第34条第1項の相続税の連帯納付義務は、相続税徴収の確保を図るため、相互に各相続人に課した特別の責任であって、各相続人の納税義務の確定という事実が発生していれば法律上当然に生ずるものであり、格別の確定手続を要するものではない。

 また、連帯納付義務は、民法上の連帯保証債務に類似するものと解するのが相当であり、滞納者に徴収手続を尽くした後でなければ、共同相続人に徴収手続を行うことができないというものではない。

 したがって、各相続人の一部にその相続税額を滞納した者がある場合には、国税徴収に当たる所轄庁は、その他の相続人に対して、その相続により受けた利益の価額に相当する金額を限度として連帯納付義務の履行を求めることができる

 平成10年4月2日裁決