労働基準法の一部改正 未払賃金が請求できる期間などが延長

2020-09-15 14:43:00 | 労働・社会保険

 労働基準法の一部改正 未払賃金が請求できる期間などが延長されます 2020年4月1日以降に支払われる賃金に適用されます

 概要

 1  賃金請求権の消滅時効期間の延長
 賃金請求権の消滅時効期間を5年(これまでは2年)に延長しつつ、当分の間はその期間が3年となります。※退職金請求権(現行5年)などの消滅時効期間に変更はありません。

 2 賃金台帳などの記録の保存期間の延長
 賃金台帳などの記録の保存期間を5年に延長しつつ、当分の間はその期間が3年になります。※併せて、記録の保存期間の起算日を明確化しました。

 3  付加金の請求期間の延長
 付加金を請求できる期間を5年(これまでは2年)に延長しつつ、当分の間はその期間が3年となります。
              改正前 改正後
 賃金請求権の消滅時効期間 2年 ⇒ 5年(当分の間は3年)
 記録の保存期間      3年 ⇒ 5年(当分の間は3年)
 付加金の請求期間     2年 ⇒ 5年(当分の間は3年)

 1  賃金請求権の消滅時効期間の延長
 2020年4月1日以降に支払期日が到来する全ての労働者の賃金請求権についての消滅時効期間を賃金支払期日から5年(これまでは2年)に延長しつつ、当分の間はその期間は3年となります。
 なお、退職金請求権(現行5年)などの消滅時効期間などに変更はありません。
 ○ 時効期間延長の対象となるもの
 金品の返還(労基法23条、賃金の請求に限る)賃金の支払(労基法24条) 非常時払(労基法25条)休業手当(労基法26条) 出来高払制の保障給(労基法27条)時間外・休日労働等に対する割増賃金(労基法37条)年次有給休暇中の賃金(労基法39条9項) 未成年者の賃金(労基法59条)

 2 賃金台帳などの記録の保存期間の延長
 事業者が保存すべき賃金台帳などの記録の保存期間について、5年に延長しつつ、当分の間はその期間は3年となります。また、②⑥⑦⑧の記録に関する賃金の支払期日が記録の完結の日などより遅い場合には、当該支払期日が記録の保存期間の起算日となることを明確化しました。
 ○ 保存期間延長の対象となるもの
 ①  労働者名簿
 ②  賃金台帳
 ③  雇入れに関する書類 ・・・ 雇入決定関係書類、契約書、労働条件通知書、履歴書 など
 ④ 解雇に関する書類 ・・・ 解雇決定関係書類、予告手当または退職手当の領収書など
 ⑤  災害補償に関する書類 ・・・ 診断書、補償の支払、領収関係書類など
 ⑥  賃金に関する書類 ・・・ 賃金決定関係書類、昇給減給関係書類など
 ⑦  その他の労働関係に関する重要な書類
  ・・・ 出勤簿、タイムカードなどの記録、労使協定の協定書、各種許認可書、始業・終業時刻など労働時間の記録に関する書類、退職関係書類など
 ⑧  労働基準法施行規則・労働時間等設定改善法施行規則で保存期間が定められている記録
 (※起算日の明確化を行う記録は、このうち賃金の支払いに係るものに限ります。)

 3  付加金の請求期間の延長
 2020年4月1日以降に、割増賃金等の支払がされなかったなどの違反があった場合、付加金※を請求できる期間を5年(これまでは2年)に延長しつつ、当分の間はその期間は3年となります。
 ○ 付加金制度の対象となるもの
  ・・・ 解雇予告手当(労基法20条1項) 休業手当(労基法26条)割増賃金(労基法37条) 年次有給休暇中の賃金(労基法39条9項)
 ※ 付加金とは、裁判所が、労働者の請求により、事業主に対して未払賃金に加えて支払を命じることができるもの

副業・兼業の促進に関するガイドライン 概要 (平成30年1月策定、令和2年9月改定)

2020-09-15 14:28:51 | 労働・社会保険
 副業・兼業の促進に関するガイドライン 概要 (平成30年1月策定、令和2年9月改定)

 ガイドラインの目的
 副業・兼業を希望する者が年々増加傾向にある中、安心して副業・兼業に取り組むことができるよう、副業・兼業の場合における労働時間管理や健康管理等について示す。

 ガイドラインの構成

 1  副業・兼業の現状
 ・ 副業・兼業を希望する者は、年々増加傾向にある。
 ・ 副業・兼業に関する裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であるとされている。
 ・ 厚生労働省のモデル就業規則でも、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。」とされている。
 
 2  副業・兼業の促進の方向性
 ・ 人生100年時代を迎え、若いうちから、自らの希望する働き方を選べる環境を作っていくことが必要。副業・兼業は、オープンイノベーションや起業の手段としても有効であり、都市部の人材を地方でも活かすという観点から地方創生にも資する面もある。
 ・ 副業・兼業を希望する労働者については、その希望に応じて幅広く副業・兼業を行える環境を整備することが重要である。
 ・ 長時間労働にならないよう、以下の3~5に留意して行われることが必要である。
 
 3  企業の対応
(1)基本的な考え方
 ・ 副業・兼業を進めるに当たっては、労働者と企業の双方が納得感を持って進めることができるよう、企業と労働者との間で十分にコミュニケーションをとることが重要である。
 ・ 使用者及び労働者は、①安全配慮義務、②秘密保持義務、③競業避止義務、④誠実義務に留意する必要がある。
 ・ 就業規則において、原則として労働者は副業・兼業を行うことができること、例外的に上記①~④に支障がある場合には副業・兼業を禁止又は制限できることとしておくことが考えられる。

(2)労働時間管理
 労働者が事業主を異にする複数の事業場で労働する場合には、労働基準法第38条第1項に基づき、以下により、労働時間を通算して管理することが必要である。
 ① 労働時間の通算が必要となる場合
 ・ 労働者が事業主を異にする複数の事業場において「労働基準法に定められた労働時間規制が適用される労働者」に該当する場合に、労働時間が通算される。
 ・ 事業主、委任、請負など労働時間規制が適用されない場合には、その時間は通算されない。
 ・ 法定労働時間、上限規制(単月100時間未満、複数月平均80時間以内)について、労働時間を通算して適用される。
 ・ 労働時間を通算して法定労働時間を超える場合には、長時間の時間外労働とならないようにすることが望ましい。
 ② 副業・兼業の確認
 ・ 使用者は、労働者からの申告等により、副業・兼業の有無・内容を確認する。
 ・ 使用者は、届出制など副業・兼業の有無・内容を確認するための仕組みを設けておくことが望ましい。
 ③ 労働時間の通算
 ・ 副業・兼業を行う労働者を使用する全ての使用者は、労働時間を通算して管理する必要がある。
 ・ 労働時間の通算は、自社の労働時間と、労働者からの申告等により把握した他社の労働時間を通算することによって行う。
 ・ 副業・兼業の開始前に、自社の所定労働時間と他社の所定労働時間を通算して、法定労働時間を超える部分がある場合には、その部分は後から契約した会社の時間外労働となる。
 ・ 副業・兼業の開始後に、所定労働時間の通算に加えて、自社の所定外労働時間と他社の所定外労働時間を、所定外労働が行われる順に通算して、法定労働時間を超える部分がある場合には、その部分が時間外労働となる。
 ④ 時間外労働の割増賃金の取扱い
 ・ 上記③の労働時間の通算によって時間外労働となる部分のうち、自社で労働させた時間について、時間外労働の割増賃金を支払う必要がある。
 ⑤ 簡便な労働時間管理の方法(「管理モデル」)
 ・ 上記③④のほかに、労働時間の申告等や通算管理における労使双方の手続上の負担を軽減し、労働基準法が遵守されやすくなる簡便な労働時間管理の方法(「管理モデル」)によることができる。
 ・ 「管理モデル」では、副業・兼業の開始前に、A社(先契約)の法定外労働時間とB社(後契約)の労働時間について、上限規制(単月100時間未満、複数月平均80時間以内)の範囲内でそれぞれ上限を設定し、それぞれについて割増賃金を支払うこととする。これにより、副業・兼業の開始後は、他社の実労働時間を把握しなくても労働基準法を遵守することが可能となる。
 ・ 「管理モデル」は、副業・兼業を行おうとする労働者に対してA社(先契約)が管理モデルによることを求め、労働者及び労働者を通じて使用者B(後契約)が応じることによって導入される。

 (3)健康管理
 ・ 使用者は、労働安全衛生法に基づき、健康診断、長時間労働者に対する面接指導、ストレスチェックやこれらの結果に基づく事後措置等を実施しなければならない。
 ・ 使用者の指示により副業・兼業を開始した場合は、原則として他社との情報交換により、難しい場合には労働者からの申告により他社の労働時間を把握し、自社の労働時間と通算した労働時間に基づき、健康確保措置を実施することが適当である。
 ・ 使用者が労働者の副業・兼業を認めている場合は、健康保持のため自己管理を行うよう指示し、心身の不調があれば都度相談を受けることを伝えること、副業・兼業の状況も踏まえ必要に応じ法律を超える健康確保措置を実施することなど、労使の話し合い等を通じ、副業・兼業を行う者の健康確保に資する措置を実施することが適当である。
 ・ 使用者の指示により副業・兼業を開始した場合は、実効ある健康確保措置を実施する観点から、他社との間で、労働の状況等の情報交換を行い、それに応じた健康確保措置の内容に関する協議を行うことが適当である。

 4  労働者の対応
 ・ 労働者は、自社の副業・兼業に関するルールを確認し、そのルールに照らして、業務内容や就業時間等が適切な副業・兼業を選択する必要がある。
 ・ 労働者は、副業・兼業による過労によって健康を害したり、業務に支障を来したりすることがないよう、自ら業務量や進捗状況、時間や健康状態を管理する必要がある。
 ・ 他社の業務量、自らの健康の状況等について報告することは、企業による健康確保措置を実効あるものとする観点から有効である。

 5  副業・兼業に関わるその他の制度
(1)労災保険の給付
 ・ 複数就業者について、非災害発生事業場の賃金額も合算して労災保険給付を算定する。
 ・ 複数就業者の就業先の業務上の負荷を総合的に評価して労災認定を行う。
 ・ 副業先への移動時に起こった災害は、通勤災害として労災保険給付の対象となる。

(2)雇用保険
 ・ 令和4年1月より、65歳以上の労働者本人の申出を起点として、一の雇用関係では被保険者要件を満たさない場合であっても、二の事業所の労働時間を合算して雇用保険を適用する制度が試行的に開始される。

両立支援等助成金(介護離職防止支援コース) 「新型コロナウイルス感染症対応特例」 

2020-07-07 18:55:45 | 労働・社会保険

 両立支援等助成金(介護離職防止支援コース) 「新型コロナウイルス感染症対応特例」 

 両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)に「新型コロナウイルス感染症対応特例」を創設しました。

 今般の新型コロナウイルス感染症への対応として、家族の介護を行う必要がある労働者が育児・介護休業法に基づく介護休業とは別に、有給休暇を取得して介護を行えるような取組を行う中小企業事業主を支援するため、両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)に「新型コロナウイルス感染症対応特例」を創設しました。

 <助成金の内容>
 ● 概要
 新型コロナウイルス感染症への対応として、介護のための有給の休暇制度(最低20日間取得可能)を設け、仕事と介護の両立支援制度の内容を含めて社内に周知し、当該休暇を合計5日以上労働者に取得させた中小企業事業主を支援
 ※ 「介護のための有給の休暇」は、労働基準法に基づく年次有給休暇とは別に設けていただく必要があります。
 ※ 法定の介護休業(対象家族1人につき合計93日)、介護休暇(年5日(対象家族2人以上の場合は年10日))は別途保障していただく必要があります。
 ※ 令和2年4月1日から令和3年3月31日までの間に取得した休暇が対象。

 ●支給額・支給要件
 労働者1人当たり 取得した休暇日数が合計5日以上10日未満 20万円
 取得した休暇日数が合計10日以上 35万円
 ※ 1企業当たり5人分まで支給

 <申請書の提出先・相談窓口>
 各都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)



新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金

2020-07-07 15:55:06 | 労働・社会保険

 新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金

 ○ 事業主の皆さまへ まずは雇用調整助成金の活用をご検討ください
 ○ 申請にあたって事業主の協力が得られない場合には、都道府県労働局から事業主に対して調査を行いますので、事業主から回答があるまでは審査ができません。そのため、審査が完了し支給するまでに時間を要しますので、あらかじめ了承ください。
 ○ 支援金・給付金の受給が不正受給であった場合には、労働者に対して、支給を受けた額に加えてその額の2倍までの額(合計して、最大で支給を受けた額の3倍の額)と年3%の延滞金を請求することがあります。
  また、事業主または代理人もしくは社会保険労務士が故意に偽りの証明等をしたために不正受給が行われた場合には、その事業主又は代理人若しくは社会保険労務士に対して、支給を受けた労働者と連帯して上記の額を納付するよう求めることや、その名称等を公表することがあります。

 新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金 (概要)
 
 概要
 新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止の措置の影響により休業させられた中小企業の労働者のうち、休業中に賃金(休業手当)を受けることができなかった方に対して、当該労働者の申請により、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・
給付金を支給する。
 令和2年4月1日から9月30日までの間に事業主の指示を受けて休業(休業手当の支払なし)した中小企業の労働者
 主な内容
 1  対象者
 2  支援金額の算定方法
 休業前の1日当たり平均賃金 × 80% ×(各月の日数(30日又は31日) ー 就労した又は労働者の事情で休んだ日数)
   ① 1日当たり支給額(11,000円が上限)                 ② 休業実績
 3  手続内容
 ①  申請方法: 郵送 (オンライン申請も準備中)
   (労働者本人からの申請のほか、事業主を通じて(まとめて)申請することも可能)
 ②  必要書類: (i) 申請書、 (ii)支給要件確認書※ (iii)本人確認書類、 (iv)口座確認書類、 (v)休業開始前賃金及び休業期間中の給与を証明できるもの、
   ※ 事業主の指示による休業であること等の事実を確認するもの。事業主及び労働者それぞれが記入の上、署名。
   ※ 事業主の協力を得られない場合は、事業主記入欄が空欄でも受付(この場合、法律に基づき労働局から事業主に報告を求める。)。
 4  実施体制等
 ○  都道府県労働局において集中処理
 ○  問い合わせを受け付けるコールセンターを設置

国民年金の加入・保険料納付状況 令和元年度

2020-06-30 13:38:14 | 労働・社会保険
 令和2年6月29日 年金局 事業企画課調査室 年金局 事業管理課 日本年金機構 国民年金部

 令和元年度の国民年金の加入・保険料納付状況について

 令和元年度の最終納付率は 76.3%

 厚生労働省では、このほど、令和元年度の国民年金の加入・保険料納付状況を取りまとめましたので公表します。
 本資料には、未納分を遡って納付できる過去2年分を集計した「最終納付率」等についてまとめています。
 国民年金保険料の納付率は、納付義務がどれだけ果たされているか、という納付状況を見るための指標であり、納付対象月数に対する納付月数の割合として算出しています。
 なお、「現年度納付率」及び「過年度1年目納付率」は納付状況の途中経過を示すものであり、「最終納付率」が最終的な納付状況を表す指標となります。

 ○  令和元年度の最終納付率※(平成 29 年度分保険料)は、76.3% (前年度から 1.7 ポイント増)
 ・  平成 24 年度の最終納付率(平成 22 年度分保険料)から7年連続で上昇
 ・  統計を取り始めた平成 16 年度の最終納付率(平成 14 年度分保険料)以降、最高値

 (※) 令和元年度の最終納付率:平成 29 年 4 月分~平成 30 年 3 月分の保険料納付対象月数のうち、令和 2 年 4 月末までに納付された月数の割合。
 なお、途中経過を示す指標として、令和元年度の現年度納付率(令和元年度分保険料)は 69.3%(前年度から 1.1 ポイント増)となっており、平成 23 年度の現年度納付率(平成 23 年度分保険料)から8年連続で上昇している。

 参考

 納付率(%)=納付月数/納付対象月数×100
 納付対象月数とは、当該年度分の保険料として納付すべき月数(法定免除月数、申請全額免除月数、学生納付特例月数、納付猶予月数及び産前産後免除月数を含まない。)であり、納付月数はそのうち実際に納付された月数である。
 保険料は過去2年分の納付が可能であり、最終納付率とは、過年度に納付されたものを加えた納付率である。
 令和元年度末現在における法定免除者、申請全額免除者、学生納付特例者、納付猶予者及び産前産後免除者の割合は、それぞれ 9.5%、14.8%、12.5%、3.8%、0.1%となっている。

 国民年金第1号被保険者数(任意加入被保険者数を含む。)は、厚生年金保険(第1号)被保険者数の増加に伴い、令和元年度末で 1,453 万人と、前年度末と比べ 18 万人減少している。
 法定免除者136万人 申請全額免除者212万人 学生納付特例者180万人 納付猶予者55万人 未納者125万人 計708万人
 納付者 1.453万人-708万人=745万人