労働基準法の一部改正 未払賃金が請求できる期間などが延長されます 2020年4月1日以降に支払われる賃金に適用されます
概要
1 賃金請求権の消滅時効期間の延長
賃金請求権の消滅時効期間を5年(これまでは2年)に延長しつつ、当分の間はその期間が3年となります。※退職金請求権(現行5年)などの消滅時効期間に変更はありません。
2 賃金台帳などの記録の保存期間の延長
賃金台帳などの記録の保存期間を5年に延長しつつ、当分の間はその期間が3年になります。※併せて、記録の保存期間の起算日を明確化しました。
3 付加金の請求期間の延長
付加金を請求できる期間を5年(これまでは2年)に延長しつつ、当分の間はその期間が3年となります。
改正前 改正後
賃金請求権の消滅時効期間 2年 ⇒ 5年(当分の間は3年)
記録の保存期間 3年 ⇒ 5年(当分の間は3年)
付加金の請求期間 2年 ⇒ 5年(当分の間は3年)
1 賃金請求権の消滅時効期間の延長
2020年4月1日以降に支払期日が到来する全ての労働者の賃金請求権についての消滅時効期間を賃金支払期日から5年(これまでは2年)に延長しつつ、当分の間はその期間は3年となります。
なお、退職金請求権(現行5年)などの消滅時効期間などに変更はありません。
○ 時効期間延長の対象となるもの
金品の返還(労基法23条、賃金の請求に限る)賃金の支払(労基法24条) 非常時払(労基法25条)休業手当(労基法26条) 出来高払制の保障給(労基法27条)時間外・休日労働等に対する割増賃金(労基法37条)年次有給休暇中の賃金(労基法39条9項) 未成年者の賃金(労基法59条)
2 賃金台帳などの記録の保存期間の延長
事業者が保存すべき賃金台帳などの記録の保存期間について、5年に延長しつつ、当分の間はその期間は3年となります。また、②⑥⑦⑧の記録に関する賃金の支払期日が記録の完結の日などより遅い場合には、当該支払期日が記録の保存期間の起算日となることを明確化しました。
○ 保存期間延長の対象となるもの
① 労働者名簿
② 賃金台帳
③ 雇入れに関する書類 ・・・ 雇入決定関係書類、契約書、労働条件通知書、履歴書 など
④ 解雇に関する書類 ・・・ 解雇決定関係書類、予告手当または退職手当の領収書など
⑤ 災害補償に関する書類 ・・・ 診断書、補償の支払、領収関係書類など
⑥ 賃金に関する書類 ・・・ 賃金決定関係書類、昇給減給関係書類など
⑦ その他の労働関係に関する重要な書類
・・・ 出勤簿、タイムカードなどの記録、労使協定の協定書、各種許認可書、始業・終業時刻など労働時間の記録に関する書類、退職関係書類など
⑧ 労働基準法施行規則・労働時間等設定改善法施行規則で保存期間が定められている記録
(※起算日の明確化を行う記録は、このうち賃金の支払いに係るものに限ります。)
3 付加金の請求期間の延長
2020年4月1日以降に、割増賃金等の支払がされなかったなどの違反があった場合、付加金※を請求できる期間を5年(これまでは2年)に延長しつつ、当分の間はその期間は3年となります。
○ 付加金制度の対象となるもの
・・・ 解雇予告手当(労基法20条1項) 休業手当(労基法26条)割増賃金(労基法37条) 年次有給休暇中の賃金(労基法39条9項)
※ 付加金とは、裁判所が、労働者の請求により、事業主に対して未払賃金に加えて支払を命じることができるもの