土地使用貸借と土地賃貸借 裁決事例 相続税

2020-03-31 14:19:14 | 相続・贈与(税)
 相続により取得した各土地は借地権の目的となっている宅地には該当しないと判断した事例

 ポイント

 本事例は、相続により取得した各土地について、貸借関係における権利金の有無、支払地代の水準、貸主と借主との関係及びその契約の経緯や趣旨を総合的に考慮すると、使用貸借契約に基づくものと認めるのが相当であるため、当該各土地は借地権の目的となっている宅地には該当しないと判断したものである。

 要旨

 請求人らは、それぞれが相続した被相続人所有の土地(本件各土地)について、被相続人と請求人らとの間で本件各土地上の請求人らのそれぞれの建物の所有を目的とした各土地賃貸借契約(本件各土地契約)を締結していたところ、請求人らは本件各土地契約に基づく地代に係る金員(本件各支払金員)を被相続人に対してそれぞれ支払っており、その年額は本件各土地に係る固定資産税及び都市計画税(固定資産税等)の額をそれぞれ上回っていたのであるから、使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについての1《使用貸借による土地の借受けがあった場合》の定めによって、本件各土地契約は使用貸借に係るものではないなどとして、本件各土地は借地権の目的となっている土地である旨主張する。

 しかしながら、
 1. 請求人らによる本件各土地の使用は、本件各支払金員の支払が開始する以前においては使用貸借によるものであって、その後においても、請求人らと被相続人との間で権利金の授受はないこと、
 2. 本件各支払金員の額は固定資産税等の額と同程度であること、
 3. 本件各支払金員の年額は被相続人が第三者に対して賃貸していた本件各土地の近隣の駐車場用地の賃料の年額に比して低廉であること、
 4. 被相続人と請求人らは親子関係にあることなどから客観的に判断すると、

 本件各支払金員は本件各土地の使用収益に対する対価であるとは認められず、請求人らは使用貸借契約に基づき使用収益したものと認めるのが相当であることから、本件各土地は借地権の目的となっている土地であると認めることはできない。

  令和元年9月17日裁決

雇用調整助成金 支給要件 緊急対応 2

2020-03-29 14:15:03 | 労働・社会保険
 
 雇用調整助成金の特例措置

 雇用調整助成金について

 問1 そもそも雇用調整助成金とはどのようなものでしょうか。
 景気の後退等、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされ、雇用調整を行わざるを得ない事業主が、労働者に対して一時的に休業、教育訓練又は出向(以下、「休業等」といいます。)を行い、労働者の雇用を維持した場合に、休業手当、賃金等の一部を助成するものです。

 特例措置の趣旨・目的

 問2 今回の特例措置の趣旨・目的について教えてください。また、どのような特例があるのでしょうか。
 今般の新型コロナウイルス感染症の影響により、事業活動が急激に縮小する事業所が生じています。
 また、新型コロナウイルス感染症による影響が広範囲にわたり、長期化することが懸念されます。このため、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主を対象に、雇用調整助成金の支給要件を緩和する特例措置を設けました。このことにより、通常よりも幅広く、労働者の雇用の維持を行った事業主が、この助成金を受給できるようにしています。
 新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例は以下のとおり実施しています。
 ① 令和2年1月24日以降の休業等計画届の提出を可能とします。
 ② 生産指標の確認期間を3か月から1か月に短縮します。
 ③ 令和2年1月24日時点で事業所設置後1年未満の事業主についても助成対象とします。
 ④ 最近3か月の雇用量が対前年比で増加していても助成対象とします。

 外国人を雇用する事業主について

 問3 雇用調整助成金は、外国人の方を雇用する事業主も対象になりますか。
 支給要件を満たす事業主であれば、雇用保険被保険者である従業員の国籍は問いません。

雇用調整助成金 支給要件 緊急対応

2020-03-29 13:47:45 | 労働・社会保険

 雇用調整助成金 支給要件 緊急対応

 1. 特例以外の場合の雇用調整助成金
 ① 経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主
 ② 生産指標要件 3か月10%以上低下
 ③ 被保険者が対象
 ④ 助成率 2/3中小企業 1/2大企業
 ⑤ 計画届出は事前提出
 ⑥ 1年のクーリング期間が必要
 ⑦ 6か月以上の被保険者期間が必要
 ⑧ 支給限度日数 1年100日、3年150日

 2. 現行 一般的な場合
 ① 新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主 全産業
 ② 生産指標要件 1か月10%以上低下
 ③ 被保険者が対象
 ④ 助成率 2/3中小企業 1/2大企業
 ⑤ 計画届出は事後提出を認める R02.1/24~5/31まで
 ⑥ クーリング期間の撤廃
 ⑦ 被保険者期間要件の撤廃
 ⑧ 支給限度日数 1年100日、3年150日

 3. 緊急対応機関 R02.4/1~6/30まで 全国で以下の特例措置を実施
 ① 新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主 全産業
 ② 生産指標要件 1か月5%以上低下
 ③ 雇用保険被保険者でない労働者の休業も助成金の対象に含める
 ④ 助成率 4/5中小企業 2/3大企業 解雇等行わない場合は 9/10中小企業 3/4大企業
 ⑤ 計画届出は事後提出を認める R02.1/24~6/30まで
 ⑥ クーリング期間の撤廃
 ⑦ 被保険者期間要件の撤廃
 ⑧ 支給限度日数 1年100日、3年150日 +上記対象期間(4/1~6/30)上乗せ

 

簡易課税選択届出書の効力 裁決事例 消費税

2020-03-26 16:38:30 | 税務・会計 消費税・その他税目等

 請求人が自らの判断で簡易課税制度選択の届出をした限りは、任意に本則課税によって申告することはできないとした事例

 請求人は、送付されてきた消費税の届出書に関する案内チラシは簡易課税の選択を誘導する内容のものであったので、消費税簡易課税制度の仕組みをよくわからないまま消費税簡易課税制度選択届出書を提出したのであり、また、同届出書の「事業内容等」欄の「事業区分」の記載漏れは重要事項であるのに、原処分庁はその連絡をせず同届出書を撤回する機会を失ったのであるから、本則課税によって課税仕入れに係る消費税額を計算し、納付すべき消費税額を算出した申告は認められるべきであると主張する。

 しかしながら、本件案内チラシは、簡易課税の選択を誘導するような内容ではなく、また、撤回するかどうかは、事業者本人の判断と責任においてなされるべきであり、記載漏れがあったことについて原処分庁からの連絡があったかどうかによって左右されるものでないことは明らかである。

 また、いったん消費税簡易課税制度選択届出書を提出し、簡易課税を選択した以上、簡易課税の適用をやめようとする旨の届出書を提出しない限り本則課税が適用されることはないので、請求人の主張には理由がない。

 平成15年3月12日裁決

 消費税法基本通達

(簡易課税制度選択届出書の効力)

 13-1-3 法第37条第1項《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》の規定による届出書(以下「簡易課税制度選択届出書」という。)は、課税事業者の基準期間における課税売上高が5,000万円以下の課税期間について簡易課税制度を選択するものであるから、当該届出書を提出した事業者のその課税期間の基準期間における課税売上高が5,000万円を超えることにより、その課税期間について同制度を適用することができなくなった場合又はその課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下となり免税事業者となった場合であっても、その後の課税期間において基準期間における課税売上高が1,000万円を超え5,000万円以下となったときには、当該課税期間の初日の前日までに同条第4項《簡易課税制度の選択不適用》に規定する届出書を提出している場合を除き、当該課税期間について再び簡易課税制度が適用されるのであるから留意する。(平9課消2-5、平15課消1-37、平22課消1-9により改正)


他人名義の財産 名義財産の取扱い 裁決事例 贈与税

2020-03-25 17:57:08 | 相続・贈与(税)
 
 請求人の名義で登録された車両は、請求人の父がその資金の全額を拠出しており、贈与に当たるとして行われた贈与税の決定処分について、請求人に対する贈与の事実はないとして、贈与税の決定処分の全部を取り消した事例
 
 ポイント

 本事例は、取得資金の拠出者以外の名義で登録された財産について、相続税法基本通達9-9に基づく贈与税課税の課否を問題としたものである。

 要旨

 原処分庁は、請求人の父(父)が請求人の名義で新たに購入した車両(本件車両)は、相続税法基本通達(相基通)9-9《財産の名義変更があった場合》により、原則として贈与として取り扱われるべきものである旨、及び本件車両の名義を請求人として登録したことが過誤に基づき、又は軽率にされたものであり、かつ、それが取得者等の年齢その他により当該事実を確認できるに足る証拠は認められないから、昭和39年5月23日付直審(資)22、直資68「名義変更等が行われた後にその取消し等があった場合の贈与税の取扱いについて」(本件通達)の5を適用することはできない旨主張する。

 しかしながら、相基通9-9は、反証があれば、贈与として取り扱わない場合があるところ、本件においては、父は購入特典の利用のために、請求人の名義を使用したことが認められ、これに加えて、
 1. 父が本件車両を請求人に贈与する動機はなかったと認められること、
 2. 請求人への贈与の事実を疑わせる事情が存在すること、
 3. 父は、本件車両の取得資金を出捐し、売却に際してはその売却代金を自ら受領・費消するとともに、その間本件車両に係る維持管理費用を全て負担していたことなどの諸事情を総合すると、本件車両の贈与の不存在について反証がされているといえる。

 したがって、請求人は本件車両の贈与を受けたとは認められない。なお、本件通達は、相基通9-9の要件を満たしているにも関わらず課税庁の立場から贈与として取り扱わない場合を類型化したものにすぎず、相手方による反証はこれに限定されるものではないところ、本件においてはその反証がされている。

平成27年9月1日裁決