アメリカ、アカデミア研究の困難について、先月のサイエンスの記事。
ポスドク獲得困難、学問の構造改革を求める声が強まる (一部をDeepL)
ジェニファー・メイソンが3月初旬にポスドク募集の広告を出したとき、彼女は4月か5月までに誰かを採用し、最近資金を得たプロジェクトに取り組ませたいと考えていた。ところが、1通の応募があるまでに2ヵ月もかかってしまった。それ以来、まだ2通しか来ていない。クレムソン大学の遺伝学助教授であるメイソンは、「資金が使われないまま放置され、その結果、これらのプロジェクトはどこにも進まなくなった」と言う。
彼女だけではない。ソーシャルメディア上では、米国の研究者の多くが、ポスドクの採用に関する課題が広がっていることを指摘している。Science Careersの調査がこれを裏付けている。今年科学協会の求人掲示板でポスドクの募集を行った米国を拠点とする100人以上の研究者で、採用経験について回答してくれた37人のうち、4分の3が採用に苦労していると報告した。"今年は苦戦を強いられている。「(ポストを)掲載しても全く反応がない」「応募数は2018-2019年の10分の1だ」という。、、、応募総数の減少だけでなく、応募の質も低下したと報告する人が多かった。、、、
アリゾナ大学の薬理学・毒物学教授で、複数のポスドクを雇用しようとしているドナ・ジャン氏は、「初めて自分の仕事に関して、やりがいのなさやもどかしさを感じている」と述べてる。「有能な人材を見つけるのは、以前よりずっと難しくなった」、、、、
彼女だけではない。ソーシャルメディア上では、米国の研究者の多くが、ポスドクの採用に関する課題が広がっていることを指摘している。Science Careersの調査がこれを裏付けている。今年科学協会の求人掲示板でポスドクの募集を行った米国を拠点とする100人以上の研究者で、採用経験について回答してくれた37人のうち、4分の3が採用に苦労していると報告した。"今年は苦戦を強いられている。「(ポストを)掲載しても全く反応がない」「応募数は2018-2019年の10分の1だ」という。、、、応募総数の減少だけでなく、応募の質も低下したと報告する人が多かった。、、、
アリゾナ大学の薬理学・毒物学教授で、複数のポスドクを雇用しようとしているドナ・ジャン氏は、「初めて自分の仕事に関して、やりがいのなさやもどかしさを感じている」と述べてる。「有能な人材を見つけるのは、以前よりずっと難しくなった」、、、、
ポスドクは一般に高給取りではなく、現在の人手不足の中で、研究者以外の高給取りの仕事が増えてきている、、、。「博士号取得者は、(ポスドクではなく)労働市場に目を向け、チャンスを見出し、それを手にしてる。
、、、「ポスドクは投資であり、損をしてまでするものだが、「このことが知られれば知られるほど、ポスドクになることを望む人は少なくなっていくだろう。、、、多くの教員は、ポスドクが置かれている状況に同情し、もっと給料を上げるべきであると考えているが、多くの場合、彼らはそれをどうすることもできない。
ポスドクの給料は、しばしば米国国立衛生研究所 (NIH)が標準として設定しているものを基準にしているが、「それはかなり低い」と、コロンビア大学の物理学者で上級研究員のダニエル・ウォルフ・サビン氏は言う。(管理人 注 ちなみにNIHのスケールでは、ポスドク0年目で約$54,000 (Y130/$で計算すると、700万円/年、何の経験もない学位取得者でもアメリカではこの額は低いと考えられています。企業に就職すればその2-4割増しぐらい、5年ぐらいの経験でポスドクの二倍近い給与が期待できると思います。)
また、ポスドクの応募が減少した原因として、パンデミック時に学問に対する幻滅感が強まったことを指摘する人もいる。、、、こうした問題は、ワークライフバランスの問題、低賃金、正規雇用の少なさなど、既存の問題に重なるものであった。
「主任研究者は、自分たちだけでは問題を解決できないので、気の毒だ」とコージック氏は言う。ポスドクの給与や労働条件を決定する方針の多くは、研究助成機関や大学が決めている、、、、。
また、ポスドクの応募が減少した原因として、パンデミック時に学問に対する幻滅感が強まったことを指摘する人もいる。、、、こうした問題は、ワークライフバランスの問題、低賃金、正規雇用の少なさなど、既存の問題に重なるものであった。
「主任研究者は、自分たちだけでは問題を解決できないので、気の毒だ」とコージック氏は言う。ポスドクの給与や労働条件を決定する方針の多くは、研究助成機関や大学が決めている、、、、。
という記事ですが、私もこの傾向は学会などから全世界的な傾向だと思います。まとめると、ポスドクは、低賃金で不安定な身分(それでも日本の正規職の多くよりは高給ですが)でありながら、その後の将来のアカデミックキャリアに対する明るい展望を描けない状況にあるのが、研究を志す人々がアカデミアを避けて企業への就職を望むと言う現況につながっていると思います。
私もこの三年でアカデミア研究を取り巻く状況にほとんど絶望しました。今年だけで身近にいた三人の若者がアカデミアを去り企業に就職しました。二十年ほど前は、企業からアカデミアに移ってくる人から、金の面ではアカデミアは多少不満だが、全体的により幸福度は増えたという話をよく聞いたものです。今は逆のパターンしか聴きません。企業に移った若者は、給料が上がってストレスが減って私生活が充実した、と皆明るい顔をします。政府がこの傾向を深刻な問題と認識すれば、金であっという間に解決できる問題なのですが、アメリカ政府はその深刻度を十分共有していないようです。
アメリカトップ研究機関でPIをやっていて、アカデミアをやめた人のツイート
Many academics assume that people leave academia because of money.
— Yaniv Erlich (@erlichya) July 2, 2022
I was a PI at @WhiteheadInst and @CUSEAS, then a CSO at @MyHeritage and now CEO/co-founder of @eleventx.
From this vantage point, I can tell you that they are wrong. Money is not the entire story.
Let's dig👇 https://t.co/Quix2jtuT8
この人は、連続ツイートの中で、アカデミアを研究者が去っていっているのは金の問題だけではない、と述べています。金銭的な優遇以外に、1) スタートアップはアカデミア以上の自由がある。2) 企業ではより多くのスキルが身に付く 3) アカデミアでは個人で全責任を負わねばならないが企業はチームで動く 4) 企業は目指すサイエンスのゴールが高い ことを挙げています。つまり、アカデミアでどんどん自由が制限され、金銭的に苦しくなり、ハイレベルのサイエンスを行うことが困難になってきた一方、現在のバイオテクブームもあって、企業ではその逆のことが起こっており、アカデミアにいることのプラス面が急激に縮小したということだと思います。
日本に関しては、お話になりません。国民はバカで貧乏な方が都合が良いと思っているトランプ以上の反知性主義の政権が牛耳る国ですから、日本で大学院からアカデミック キャリアを目指したいというような人には「やめとけ」と言うでしょう。学問には国境はないですから、優秀な人が日本のシステムの中で才能を生かせずに腐ってしまうのは世界の損失です。そして、日本を守るとかいう以前に、まず自分を守り個人の幸福の追求を優先するべきだと思います。
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