百醜千拙草

何とかやっています

ブタに口紅

2014-09-05 | Weblog
しばらく前の話題ですが、ウクライナでのマレーシア機追撃事件、この事件そのものが陰謀であったのか、どうみても余り賢くなさそうな西側ウクライナの短慮の結果であったのか、わかりませんが、機に乗じて、(多分、アメリカ戦争ビジネスマンの差し金なのでしょうが)東側ウクライナを支援するロシアに矛先を向けて、対露経済制裁を始めたアメリカとEU。私も話の展開から、西側ウクライナが、マレーシア機をプーチン専用機と誤ったか、もしくはわかっていて意図的に撃墜した可能性が強いと考えていましたが、先日の、田中宇さんの国際ニュースに、より詳細な状況が解説してありました。ロシアが制裁返しを発表したのがつい数週間前、どうもすでにEUと西側ウクライナではロシアの制裁返しでかなりの被害がでてきてるようです。これから冬に近づいて、ロシアが制裁を天然ガス輸出まで拡げたら、ヨーロッパは本当にパニックになるだろうと私は想像します。BRICS諸国での協力体制が整いつつある中、ロシアは既にアメリカやヨーロッパ諸国なしでもやって行けると考えているのではないかな、と思います。実際にこの危機でEUからの食品輸入を一部、停止したためにBRICS諸国間でも貿易は増え、よりBRICSの結びつきを強めている結果になっているようです。欧米の戦争ビジネスマンよりもプーチンの方が一枚上手のような感じですね。この展開を見ると、マレーシア機が追撃されたのは、ちょうど、プーチンがBRICS銀行設立の会議とワールドカップに出席してブラジルから帰国の途にあった時でしたから、「誰か」がBRICSの要となるプーチンを暗殺しようとして、間違えて、同時間にプーチンを乗せて飛んでいたロシア大統領専用機とよく似たマレーシア機をうっかり撃ち落としてしまったというスジがもっとも腑におちます。殺された一般人乗客は気の毒です。

これまでは比較的冷静にやっているように見えるプーチン、つい先日、欧米に対して「ロシアは核大国であることを忘れないように」と、ドスの利いた声で上目遣いに言ったそうです。オバマ政権の間は大丈夫と思いますけど、次の大統領次第でアメリカはまた無茶をやってプーチンを本気で怒らせることになるかも知れません。

それはともあれ、飛行機乗客にしても、その後の制裁合戦にしても、関係ない一般人が迷惑しています。とりわけロシアとの貿易で商売していたヨーロッパの人々は苦しそうです。ロシアとの貿易による経済活動が大きかった国々はもちろん、EUでトップのドイツでさえ、この経済制裁返しのおかげで、今年はマイナス成長となる危機だそうです。この分では、戦争ビジネスマンのかわりに、金融マフィアが活躍しそうです。

話が変りますが、厳しいと言えば、研究環境です。つまりカネのことですが、現在の厳しいグラント環境では、よい商品(研究、研究計画)であっても中々、買ってもらえません。アメリカNIHはつい数ヶ月前、グラントの応募回数制限のワクを取り除きました。これまでだと、同じ計画は二回までしか応募が認められず、そのせいでよいアイデアであってもオクラ入りしてしまうものを防ぐためだと言っています。理屈はわからないではないですが、ただでさえ、採択率一割という状況で、カネは増えないのに応募基準は緩めるのですから、このポリシーが発効する次回のグラントサイクルでの競争率は激烈なものになる可能性があります。採択率5%というのもあり得なくはないでしょう。つい先日、NSFが特別に発表したNeuroscience グラントの応募は当初の12本というワクに600の応募があったそうです。採択率2%となるところでしたが、流石にNSFが驚いてワクを3倍に上げて対応したそうです。それでも採択率は6%。もちろん、数や競争率だけでは何とはいえません。この状況では無理とわかっていてもダメでもともとで応募してくるDesparateな人も多いでしょう。それでも、ここまで競争が激しいと研究を志す若い人はますます少なくなるでしょうね。

私も研究費の獲得がこの数年の第一目標となっています。研究することよりもいかに良いグラントを書くかということに今年はずっと時間を費やしており、自分でも「何をやっているのだろう」と落ち汲んでしまう日もあります。本末転倒もいいところです。
グラントをレビューアに「買ってもらうには」、商品がよくないといけないのは当然ですが、加えて、購買意欲をそそる売り方をしないといけません。このあたり、科学とは全く無縁のセールス活動で、やっているうちに心の底から嫌気がさしてくることがあります。セールスも最初はゲーム感覚で楽しくもできるのですけど、やはりゲームはゲームです。競馬で買って嬉しいというのと大差ありません。だいたいセールスゲームがやりたくて研究者を志したのではありませんし。やはり、何らかのTangibleな実際の研究成果に勝る感動はありません。

先日、インターネットで、誰かがNIHに応募したグラントとその評価を見つけました。肝心の研究内容がいまいちインパクトに欠けますが、セールストークはうまいです。このグラントは大学院生レベルの人が応募したフェローシップのようでしたが、文章は、大学院生レベルで書けるようなものではありません。グラント応募経験の豊富な指導教官か誰かがかなり手助けしたのでしょう。思わず、笑ってしまったのは、レビューアの一人が、グラントのセールストーク (grantsmanship) が鬱陶しい、とコメントしたことです。このレビューアは、余程、虫の居所が悪かったのか、私と同じくグラントのセールストークそのものにウンザリしていたのかいずれかでしょう。レビューアをその気にさせて、スムーズにグラントの価値を認識してもらうための話術は、必要なものですが、商品がパッとしないと、宣伝倒れで逆効果になりかねないと納得した次第です。中身あってのパッケージということですね。6年前の大統領選で、「口紅を塗った闘犬」サラ ペイリンとオバマとの討論会の時に有名になった比喩、「口紅を、ブタに塗っても、ブタはブタ」を思い出しました。
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