送電鉄塔の見える場所

稜線の向こうに消えてゆく鉄塔の列はどこへ続いているんだろう

苓北火力線 191号

2009-12-21 08:44:37 | 苓北火力線
11月4日、晴れ。仕事を終えた午後5時半前。
まだ明るいので近くの鉄塔を見てから帰ろうか。勤務先から見える2列の鉄塔の、大きいほうがきっと苓北からの路線だ。

一番近い紅白を目指して農道に車を進める。
その紅白は草ぼうぼうの休耕田の奥にあった。畦道の入口に白い杭。当たり!これが海を越えて来た路線だ!
「←一九〇号」は来た方向を指している。              
「→苓北火力線一九一号」こっちだな。   

苓北火力線は500kV設計で現在は220kVで運用されている。九州電力の送電線は500kV、220kV、110kV、66kVの4段階だ。
熊本支店の管内で500kVで運用されているのは今のところ中九州幹線とその南北に接続している路線だけ。
苓北火力線もいずれ昇圧される時が来るのだろうけど、地球温暖化問題を考えると昇圧されない方がいいのかとも思う。
                       (追記:苓北火力線は2002年に昇圧済みでした。詳しくは2010-3-22「中九州変電所」へ)
結局、大容量の送電線とは原子力発電所や火力発電所と大量消費社会とをつなぐものだ。環境に優しいとは言い難い。
それでも自分は送電鉄塔が好きだ。
人の暮らしのあるすべての場所に電気を送るため多くの方が地形的気候的経済的な問題をあの手この手で克服してきた。
その創意工夫と労力とが塔の形になって立っている。光も影もあろうが頭が下がる。

191号目指して畦道を入って行く。やっぱり紅白はド迫力。
高さが60m以上あると紅白になるんだっけ。見下ろされてる感がひしひしと。
平地のためもあって結界がめっちゃ広く見える。      
結界はコンクリート打ちだった。ここも柵はないけれど外側の草が繁っているから草でできた囲いの中にいるみたい。
コンクリートの上に溜まった砂にも草が根を下ろしている。コンクリがなかったらエラいことになるな、こりゃ^^;
結界の真ん中には水はけのためらしい溝が設けてある。
プレートは向こう側の脚に付いているようなのでどうやって越えていこうか・・・
と思ったらちゃんと階段があって渡れるようになっていた。
階段にも砂と枯草が積もっていて、尻餅をついたりしながらも反対側へ。

へえ、ここには電柱があって鉄塔と繋がっている。変なの~wと思ったが航空障害灯用の電源だと後で知った。
そりゃそうだ。送電線に流れているのは超高圧電流なんだから。
大きな鉄塔と並んで電柱はものすごく小さく細く見えた。

暗くなってしまわないうちにまずはプレートを確認。なんて無理やりな写真^^;

        

結界写真にも挑戦してみたけど、中心を捉え切れてないよ~。 
日没を過ぎた晩秋の空はどんどん夜に近づいてゆき、191号にはいつの間にか灯が点っていた。ああ、カッコいいなぁ。


頂上部分の写真は別の日に撮ったもの。3本の架空地線が素敵。
本当は全体の写真だったんだけど撮影サイズを大きくしすぎてきれいに縮小できなかったので部分ですm(_ _)m



500kVの送電線網

2009-12-12 13:26:40 | 雑記


「中九州幹線」。熊本変電所から中九州変電所までの30kmほどの路線。

北海道から九州までの各電力会社はお互いに電力を融通し合えるように超高圧の送電線を連結している。
電力不足が起きた場合に他地区から電力を調達したり、災害などで送電線が切れた時に迂回路として使用したりするためだ。
九州電力でも九州を一周する500kV規格送電網の敷設を進めている。2009年12月現在では大分県~宮崎県間に繋がってない
部分があるが2020年頃には全通の予定だそうだ。
中九州幹線はこの送電幹線網の一部を成す。北端の熊本変電所で佐賀・福岡方面と接続している。鹿児島・宮崎方面と結ぶ
南端の中九州変電所には天草にある苓北火力発電所からの線路も入ってきている。
ネットで調べてこれだけは判った。

500kVかぁ。すごいもんだ。結界が大きいのも当然だ。新幹線とか高速道路クラスの重要路線だったんだ。
そうと知ると「山のあなたの空遠く」的な感傷を持って眺めていた鉄塔が現代産業社会の最前線にいる戦士に見えてくる。
実際のとこは先端技術で管理運営されているバリバリのハイテク機材で、のんびり立ってる呑気もんなんかじゃないわけでw

さて中九州幹線、九電のサイトで見るとずっと山の中を通る路線らしい。
写真を撮って回るには労力の割りに地味なことになりそうな^^;

それより心魅かれたのは苓北火力発電所からの路線の方だ。
以前天草に住んでいた頃に眺めていた鉄塔たちだ。島から島へ海を渡っている。
海越え部分の両側の鉄塔では青白いフラッシュが昼間でも点滅していたっけ。文字通り高圧的な姿だった。
それに苓北火力発電所!東シナ海に面した海岸に建っている。
水平線に夕日の沈む外海。うみ~のむこ~うは~しゃんは~ぁぁ~い~♪なのだ。ロマンあふれる路線じゃありませんか。
中九州変電所はどうやら隣の町にあるようだし、職場から見える紅白鉄塔もこの路線のものっぽい。
これはもうキマリでしょう。この線を追ってみよう。

とはいうものの、こっちの路線も大部分は山の中を通っているわけだし、ややこしい場所に立っている鉄塔もありそうだ。
全基の脚元まで行くのは無理かもしれない。「全基を撮影する」ぐらいなら出来るかな・・・
亘長約90km、気長な旅になりそうだ。とりあえず行ける所から行ってみよう。


                上の写真  3本腕の頭の大きいのが苓北火力線                        
                       6本腕で細身のは中九州南熊本線と名称不明の線(中九州大平線?)の併架





中九州幹線 97号・98号

2009-12-06 13:10:31 | 気になる鉄塔
11月3日、快晴。
昼食後、家事をテキトーに片付けて、さあ出発。
行く手に川岸から山の中腹まで5本の鉄塔が並んでいる。どっちから始めようか。
山にしよう。そっちの方が人に見咎められる確率が低そうだw
あのすぐ下には昔の砕石場まで道が通っている。登り口はそこからだろう。

右の斜面を登る道を探しながら谷筋の道を行く。イノシシ出たりしないだろうな。ドキドキ。
しばらく行くと右手に小道らしきものが。これか?しかし10mも行かないうちに倒木に行く手を遮られた。それを乗り越えると…
ダメ、斜面が崩れていて行き止まりだ。元の谷筋に戻ってまた奥に進む。
頭上に送電線が見えてきた。えーと4本組が3段。4導体だ。その上に2本の架空地線。けっこう電圧大きそう。不安のドキドキが
ちょっぴりワクワクに変わる。
そこを過ぎた道の脇に白い杭があった。
九州電力のマークの下に「中九州幹線96号」とある。(ノ゜ο゜)ノ オオオオォォォォォォ-ここからかー!      

         

階段になっている道をガシガシ登る。湿った土と落葉とで滑りやすい。小学生の頃は毎日こんなとこで遊んでたなー。でもそれ
ウン十何年も前の話だし。これをまた降りてゆくのは嫌だなあ。
たいして距離はなかった。5分ほどで尾根に出ると小道は右に折れた。その先に鉄塔の脚が見える。

鉄塔の周囲は竹薮が切り払われて明るい空間になっていた。広い!大きい!
田んぼの中でたまに見かける4畳半くらいの結界を予想していたのに、これは旅館の宴会場サイズ。しかも平らじゃない。
4本の脚がばらばらな高さで踏ん張っていて、一番上と一番下の差は5mぐらいあるだろう。
そんな半分崖みたいな結界でもきれいに下草が刈られていた。うちじゃ庭の草切りだけでも手を焼いてるのに、すごい手間・・・

ライトグレーの鋼管製の鉄塔は間近で見るとつくづく高い。碍子の数なんてよく判らない。双眼鏡を持ってくるべきだったか。
触ってみる。耳をつけてみる。自分の心拍音しか聴こえなかった。

で、この人のお名前は?目の前の脚には「あぶない!! のぼるのはやめよう」と書かれたプレートがあるだけだ。
次の脚に回ってみた。こっちには内側に塗装に関する表示があって、外側に赤地に白文字で「2」というプレート。その上に・・・
あった! ケータイのカメラを向けてみるけどプレートの位置が高くてうまく撮れない。

                

結局、モーシワケゴザイマセンッ!m(_ _)m 台座に登っちゃいました・・・イエ、ボルトのとこまで・・・。ズームで撮れるデジカメも必要だ。
買わなきゃ。

結界の中心に立ってみたかったけど足場が悪くてホントの中心は無理でした^^; ついでに奥側の脚にも回ってみた。高い位置に
ある方の脚に緑地に白文字の「1」のプレート、低い所の脚には何もなし。
ちょうど顔の高さに斜めの鋼管が渡っていたので、もう一度耳をつけてみた。
・・・聴こえた。ブーンというかすかなうなりと遠い遠いところを水が流れるような音。これが宇宙のざわめき?そこはかとなく郷愁を
感じる音だった。

さて、そろそろ次へ行こうか。
小道を引き返していると階段道への降り口の手前にも白い杭があるのに気付く。L字型の杭の手前の面には登って来た方向を
指す「→中九州幹線96号」の他に手書きで「←97号」と加えられている。別の面には登って来たのと反対を指す「←中九州幹線98号」の文字。
あれ?そういえば下で見たのは「96号」だったような。さっき撮った画像を見ると、おお、九電のマークと文字の間に「→」が。
戻る方向を指す矢印だ。横の面、階段道の側にも文字があるっぽい。
そうか!白杭は「ここに○号がありますよ」の標識ではなく「○号へ行く道はこっちですよ」の道標だったんだ。巡視の人は杭の
矢印に従って鉄塔を巡っているのだろう。なんだか勇気が湧いてきた。

となれば予定を変更して「←98号」の指す方へ。そっちが楽そうなんだもん♪
道は来た時とは反対側の斜面を緩やかに下っている。杭の上部にはマジックで「国道へ出る」と書き加えてあった。国道ならば
毎日通っている道だ。してみると98号は道路端のあいつだな。
しかしこっちの小道、緩やかなのはいいが昨年の豪雨のせいか所々えぐれていて、これはこれで気味が悪い。
土砂が溜まった杉林に降りた。あちこちでフユイチゴの茂みが赤い実をつけている。かわいい(〃▽〃)
嬉しくなって撮影しようとするとゲッ!電池切れの警告がっ!

国道に出てカーブをひとつ回ると98号の腕金が視界に入ってきた。
耐張型なので横に連なった碍子が数えられた。基本白で10個目ごとに濃色が入れてある。35個だ。
谷川を渡る橋の手前で脇道に折れるとガードレールの外側がもう鉄塔の敷地だった。

この鉄塔も斜面に立っている。というか山間部で平らな敷地なわけがない。
刈った草がそのまま寝かせてあって足元がふわんふわんするのでプレートの付いた脚まで辿り着くのに一苦労。
これにも塗装の表示があるが97号とは別の施工業者だ。隣同士でも違うんだな。

鉄塔番号のプレートはやっぱり微妙に高い位置。せいいっぱい手を伸ばして撮ってみたけど遠いよなぁ。しかも逆光でモニター
画面に何が映ってるんだかが全然判らない。リトライするもまた失敗だ。と、ここで遂に電池切れ~(T△T)
・・・まあいいか。じきに日没だしこれ以上粘っても無駄だろう。家から歩いて来られる場所なんだからデジカメ買ってまた来よう。

とにかく路線名は判った。中九州幹線。
谷の反対斜面を続く99号、100号、101号が登って行くのが見える。頂上の102号は紅白だ。そのうちあそこへも登る。
こうして希望と不安をともども膨らませつつ鉄塔初日は終わった。



その後1ヶ月近く経ってから遅番出勤の朝、98号を撮りに行った。
もう枯草はなくなっていたが、また伸びてきていた草に朝露が降りていて出勤前だというのに靴下ぐしょぐしょ~。
プレートと結界の撮影ができたからいいけどさ。
逆光に加えて表面に薄くコケが生えているのでプレートの文字は肉眼でもちょっと読みづらかった。
画像の98号の背が低く見えるのは上半分しか写ってないからです。斜面の上からミカン畑越しに撮ったもの。こんな低い位置に
送電線が通っているわけではありませんw

紅白鉄塔の謎

2009-12-05 15:26:31 | 雑記
子供の頃から山の中に立っている塔がなんとなく好きだった。
山頂にそそり立つ電波塔も、点々と続いていく送電鉄塔も。

今の職場の近くには送電鉄塔の列がふたつ通っている。繋がって山の向こうへ続いていくのが窓からよく見える。
ああ、いいなあ。グレーの、紅白の、大きいの、小さいの…



あれ?紅白の鉄塔って高い所にあるもんじゃないの?赤ランプ付きで。
目の前のは平地に紅白あり山の上にグレーあり。一番高い所のは紅白だけど、立っている地点の標高とは関係なさそうだ。
平地の2本の紅白の間には高速道路が通ってるから?でももう1列の小ぶりの連中は高速おかまいなしに全部グレーだ。
そういや家の近くに川を挟んで紅白鉄塔があったっけ。前後の鉄塔より低い場所だし赤ランプはなかったような。どういう基準
なんだろう?

休日にネットで調べてみた。でもキーワードの選択がマズいのか、知りたい答えには辿りつけない。その代わり鉄塔写真満載の
サイトをいくつも見つけた。へ~、鉄塔のサイトってけっこうたくさんあるんだ。
その中でお子さんたちと一緒に鉄塔を追ってらっしゃった女性の日記がどシロウトの自分にも読みやすくて、ハマって読み進む
うち自分も鉄塔を間近で見たくなった。家の近くにも会社の近くにもいっぱいあるじゃないか。とにかくナマ鉄塔だ。紅白の謎は
後回しでもいいだろうw 次の休日、天気が良ければ出撃だ!