ギリギリ探偵白書・45


 ギリギリ探偵白書



猛暑の中、汗を拭きながら事務所へ入ると
すでにコーヒーが入っていた。

(気が利くなぁ)

この香ばしい香りはブルーマウンテンだ。

ちなみに私(阿部)は数あるコーヒーの中でブルーマウンテンを最も好む。

私は自分のデスクに座り、パスワードを打ち込み、メールのチェックなどを始めた。

コーヒーを飲みながら、200件以上のメールを開き始める。
そして、要点をまとめたりするのだが、どうも落ち着かない。

(後頭部に視線を感じる・・・・)

振り返ると、調査員の田中がポテロングをボリバリ食べながら
私のパソコンの画面を見ていた。


阿部   「お~い、田中。何してんだ?」

田中   「おっ、代表。打つの早いですね」

阿部   「あぁ、まぁな。んで、何だ?」

田中   「この間の件なんですが・・・ね?」

(この間の件?)

阿部   「あのさぁ、この間の件じゃ、わからんよ」

田中   「えっ、あっ、え~と、盗発(盗聴器発見調査)で
      新人の○田の行った女性の家の件です・・・。
      えーと、世○谷の。確か・・・」

阿部   「あっ、ずっと誰かに見られているというやつか?」

田中   「・・・イエス!!」

阿部   「何にもなかったんだろ。それ以外に何かあるのか?」

田中   「○田が変なんですよ。何もなかったけど
      あの部屋には何かいるって!?」

阿部   「夏だからな!!って、そういう話は止めてくれよ」

田中   「代表、こういう話ダメでしたっけ・・・もしや弱点!?」

(ゴーン)

阿部   「オレに弱点などない!!」

田中   「いてってって・・・、というわけで、○田の話
      聞いてやって下さいよ」

阿部   「あとでな。連れて来い、ここにな」

田中   「了解です」

そんな会話の後、今度は膨大な報告書の山が私のデスクに・・・。

そして、相談の電話に、調査員からの指示要請など、暇な日のはずなのに忙しい。

その忙しさの中で、田中の言っていた○田が来る事など忘れてしまっていた。

(ギィギィィ、・・・)←扉の開く音

そんな折、○田が真っ青な顔で私の後方に立っていた。
パソコンの画面にうつった彼の顔は、思わず鳥肌が立つような感じであった。

阿部   「うおっ、何だ?あっ、○田か。どうした?」

○田   「代表、お祓いって経費でおちますぅ?」

阿部   「う~ん、たぶん無理」

○田   「ですよねぇ・・・。何か寝れなくて・・・」

阿部   「そんなに変なのか?その部屋は?」

○田   「ええ、継続で調査をしていますが、妙な音とか映像に
      変な影とか映りこんでいて、やっぱりあれは・・・」

阿部   「おいおい、誰かに変わってもらえよ。少し休むんだ」

○田   「ええ、そうしてもらいたいですよ」

阿部   「田中に頼んでいいぞ。あいつなら平気だから」

○田   「鈍感ってことですか?」

阿部   「まあな。○田、お前は少し休め。な?」

○田   「ありがとうございます・・・」

という流れで、この妙な調査は田中に行かせることにした。

そして、数日後、田中がずっと首を傾げている。

阿部   「どうしたよ?肩こりか?」

田中   「いいや、そうじゃないです。変なんですよ」

阿部   「なにが?ダイエットしてるのに痩せない事か?」

田中   「そうなんですよ!!って、違いますよ!!」

阿部   「じゃあ、なに?」

田中   「あそこの部屋って、依頼者さんしか
      住んでいないはずなんですが・・・」

阿部   「どれどれ・・・。」

私は田中が持っている調査指令書・調査情報の書類を見てみた。
すると、そこにはハッキリと「一人暮らし」と書いてある。

部屋自体も1ルームだから、2人で住むには狭いだろう。

阿部   「確かにそのようだが、確認は?」

田中   「はい、取れてます」

阿部   「なら、平気じゃん。何が変なんだよ」

田中   「毎日、カメラの位置がズレちゃうんで、その度に直しに
      行くんですよ。そしたら、オネェサンっぽい人がいて
      麦茶くれたんですよ。自分は、依頼者さんがお姉さんを
      呼んだのかな?って思ったんですけど・・・。
      依頼者さんに聞いたら、誰も呼んでないって言うんです。
      それで、今、テープを確認したんですが・・・」

阿部   「したんですが・・・、何だ!?」

田中   「変な白い影みたいのしか映っていないんですよ」

(おおおお、そりゃ、きっとヤバイもんだぞ。ついに出たか!!)

田中   「で、壊れてると思って、カメラ交換したんですけど、
      壊れていなんです、カメラ・・・」

阿部   「田中、それはきっと、オバケだぞ」

田中   「冗談やめて下さいよ。だって僕、麦茶飲んだんですよ」

(なっ、なるほど)

阿部   「確かに、他人が入った形跡がないんだな?
      じゃあ、人増やして徹底的にやれ、早期解決だ」

(こうした妙な調査は年に1・2度依頼される事がある。
 ・・・苦手だ。こういうのは・・・)

田中   「了解しました」

私は応援の調査員を招集し、彼らに一部始終を話し
内部・外部の徹底調査を指示した。

しかし、少し心配であったので、資料の収集調査をサザビーに頼んだ。

そして、次の日、サザビーが一枚の写真を持ってやって来た。

サザビー 「あべちゃん、コイツを田中に見せてみて」

田中は連日の徹夜で家に帰れず、相談室のソファで寝ていた。
私は早速、田中を起こし、その写真を見せた。

田中   「だれですか、この美人は?」

阿部   「あん?よく見てみろ、この女性はだれだ?」

田中   「そんなの・・・・あっ、麦茶!!」

阿部   「麦茶?・・・もしかして・・・依頼者さんの・・・」

田中   「はい、麦茶の人です」

阿部   「サザビー・・・この人?どうしたの?」

サザビー 「・・・その人は、もうこの世には・・・」

田中   「いないんですね!!生きてないんですね!?」

サザビー 「生きてるよ。そりゃ、依頼者さんの従姉妹だよ。
      隣のビルに住んでるんだってさ」

阿部   「はぁ~・・・何だそりゃ?」

そして、我々は次の日、ネズミ捕りを仕掛けた。
丸々と太ったネズミを2匹捕獲した。

この夏、一番の思い出に残るビックリ調査であった。



        完



 メールマガジン「ギリギリ探偵白書」の復刻版です。

 ギリギリ探偵白書は、過去に行った調査を本人了承のもと掲載しています。
 尚、調査時期や調査対象者・ご依頼者様の個人情報は本人様の請求以外は開示いたしません。
 また、同作品に登場する人物名は全て仮名です。


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コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
あはは (リラ)
2006-12-28 18:48:54
探偵さんは、ある意味「万能」を、要求されるお仕事なんですね!
スリルは、楽しめる程度に留めて、「怖い方」に遭遇されない様に、気を付けて下さい。
 
 
 
はい (サザビー)
2006-12-28 19:47:36
気を付けるようにしたいと思います。

リラさんも、余計なトラブルに巻き込まれないよう
気をつけてくださいね。
世知辛い世の中ですから。。
 
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