優子(みぃたん)は苗字が四回変わる。最後の変化は自分の意思だとしてもあとは全て大人の身勝手な都合だ。ほんと酷い話だと思う。物心つく前に生みの母親を亡くしたのは運命としか言いようがないけど、子を持てないからというだけでみぃたんの母親になった梨花さんの無責任さ。輪をかけて自分の夢を叶えるためにひとり海を渡ってしまった実の父親。足長おじさんとして中継した二番目のお父さんはピアノ以外にも与えられるものはきっとあっただろうに
巻き込まれるように三人目の父親になった森宮さんは、妻の梨花にも逃げられ娘優子からは最後までお父さんとは呼んでもらえないままバージンロードを歩くけど、唯一娘だけのために生きていた
二人のお母さんと三人のお父さんがいて幸せだったと優子は言うけど、本当の幸せは一人ずつの父母がたっぷり愛情をかけて育てる姿だと、よく考えれば誰にでもわかること。歪んだ擬似家族を良い話風にまとめられているのが気持ち悪いと思ってしまったなら、もうこの物語には感情移入できない
永野芽郁ちゃん 可愛いな
原作者、瀬尾まいこの作品は図書館で借りられるものは全て読んでいる。初期の頃から小さな世界を丹念に描く作家としてお気に入りだった。学校の先生をなさってたそうで、そのモチーフで書かれたものも多い。まさか本屋大賞を受賞するような流行作家になるとは思わなかったし、受賞作の本作品もそんなに飛び抜けて傑作だとは思わない
冒頭に書いたけど、子供(優子)をバトンに見立てた物語は大人たちの身勝手で展開されて行くだけで、ある意味ネグレクトじゃないかとも思える。実父は何故娘より自分の夢を選択したのか?愛情を注いでいた筈の梨花さんはどうしてみぃたんに本当のことを言わずに去ったんだろう?(別れた時中学生だと言ってたからもう十分理解できる歳なのに)二番目の父親はその財力でもっとバックアップすることだって可能だろうに・・・とか
それでもオジサンは最後までグズグズ泣いてしまって、場内が明るくなってもなかなか立ち上がれなかった
三番目の父親の気持ちがツボにはまってしまうのは、わたくしが娘を持つ父親であることが大きいのだろう。男親はそもそも自分で産むわけではないから、血の繋がりより日々の関係性で親になってゆくのだと聞いたことがある。この物語で納得できるのは正しくその部分だったのだ