映画と渓流釣り

物忘れしないための処方箋

星の子の家族 それぞれの家庭

2020-10-15 18:05:00 | 新作映画

つい最近、今村夏子著「むらさきのスカートの女」を読んだばかり。芥川賞受賞作品にそれ程の価値を見出してはいないけど、ありがちな小難しさがなく面白かった。著者の経歴をみると作家としてはまだ駆け出しと言っていいキャリアなのに、書く小説ほとんどが名だたる文芸賞を受賞している。多分才能なんてそういうことなんだろうけど、子供のころから作家になりたくてずっと努力している人達には辛い現実だ。
この映画の原作は読んでないけどきっと面白いだろうから、図書館で出会えたら読んでみようと思う。

芦田愛菜ちゃんか・・・テレビドラマ「Mother」でみせた健気な少女は中学生の制服が似合う聡明なお姉さんになった。優等生イメージを役柄の中でどのように壊してゆくかがこれからの課題だろうけど、しばらくは今までの様に普通の町に生きている普通の女の子のままでいいかな。

新興宗教に嵌まった家族が描かれている。父親も母親も傍から見ればイッチャッテル。緑のジャージを着て夜な夜な頭に置いたタオルに水を掛け合う夫婦は、娘の同級生の男の子が河童と比喩したのも頷ける奇行だと思う。それでも信心なんてイワシの頭から始まるものならば、人それぞれだし、それこそ信じる者は救われるのだ。この家族に馴染めなかった長女は家を出て距離を置くけど、愛菜ちゃん演じる次女は葛藤しながらも宗教の合同集会にも参加するし友達ともうまく付き合っている。
両親の信心に巻き込まれながらも自分の立ち位置を推し量るだけの器量をもった賢い子は、愛菜ちゃんのイメージ通りだからそんなに特別な家庭の話には思えないのも計算されたキャスティングかもしれない。

仄かに恋心を抱いた教師から冷たい批難を受けたり、家出した姉は音信不通で心配ではあるが、彼女の生活は淡々と営まれてゆく。合同集会の夜、冬の冴えわたる夜空に流れ星を見つけあう親子三人の姿は、どこにでもある家族の姿だ。
この先も両親は粗末な食事を気にもせず高価な聖水を買い頭に掛け合うのだろう。長女に生まれた孫を抱く時が来るのか分からない。次女もいつかこの家を出て自活するとき、やっぱりこの家庭で育ったことを愛おしく思うのだろうか。

ホント、人それぞれだ。

TENET 難しく考えれば難しい そうなんだけど

2020-10-14 18:15:00 | 新作映画

確かに分かり辛い。部分部分で観ちゃうと???の連続だ。
それでもあんまり細部にこだわらず、最後まで観通せば何となく納得しちゃうお話だった。
起承転結の無い難解な’70年代のヨーロッパ映画を沢山観てきたわたくしにとって、細部の疑問点なぞ大した問題ではなく、TENETのシンプルな作りは特定の宗教観や人種・風俗・歴史・環境などのナショナリズム描写がないだけに感覚としては分かりやすかった。

どーしてあのお金持ちのオジサンは悪い事しようとしているのか、それがオジサンにとってどんな利があるんだろうとか、相棒の戦士は何で主人公の相棒になったんだろうとか、分からないことだらけなんだけどその疑問が解けたところでこの作品が深くなるかな?悪いオジサンの奥さんでっかいなぁー。あんなにでっかいと並んで歩くのも大変そうだな。とか、そっちの方に気がとられちゃったまま2時間半が経っちゃった。

作品規模は雲泥の差があるので叱られちゃうかもしれないけど、並行世界における時間の逆行をテーマにした作品ならこの前観た小松菜奈ちゃん主演「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」の方が分かりやすくて感動的だった。(あぁ、ノーラン教の人に怒られるぅ)

「インターステラー」「ダンケルク」と続けてわたくし好みの作品を連打してくれたので、やっぱり期待し過ぎたのかもだけど、今回の作品はそれほど感心できなかった。ノーラン監督作品じゃなきゃ絶対観なかったしな。どうせなら兵隊が後ろ向きに走るようなへんてこな戦闘シーンじゃなくて、もし第三次世界大戦が起こったならこんな戦争になっちゃうという迫力ある場面満載の映画が観たかった。

世は歌につれ

2020-10-14 18:04:00 | 歳時記雑感

ネットニュースなんかでは、昭和歌謡の巨匠とか矮小で誤った紹介のされ方しているけど、筒美京平の偉大さはもうあの時代を一緒に生きてきた人にしか分からないのかもしれないな。残念なことだけど。

昭和の時代流行歌とは老若男女問わず誰しもが口ずさめる歌であったし、いつまでも記憶に残り消費されるものではなかった。そのこと自体は社会環境が違うので良し悪しを語るものではないし、往々にしてノスタルジックな感傷もある。

それまで日本の歌謡曲(J-POP)は伝統的な演歌かジャズベースの楽曲がほとんどだったけど、筒美京平がアイドルたちに提供した曲はどれもがアメリカサウンドを微妙に取り入れた新しい歌謡曲だった。今K-POPと言われる韓国のポップスがやっていることを40年前に筒美京平はやっていたことになる。

ここにいちいち作品をあげないけど、これもあれもそれもそうだったのか!と驚くことばかりだ。
筒美京平の作る音と共に大人になった我々世代、その世代が作った音を聞いて育った現在の才能によって今後も、日本の歌謡曲(J-POP)は連綿とつながってゆく。

わたくしの青春時代を彩ってくれた筒美京平氏に
謹んで哀悼の意を





筒美京平が一番愛していたかも知れない太田裕美の傑作を歌う



今年は控えめに 横濱JAZZ

2020-10-11 18:58:00 | お遊び
去年は台風直撃で中止

今年もスキップするのかと半ば諦めていたが、規模縮小しての開催

ジャズバンドらしいグループ、サックスだけの編成、そしてボーカル主体

クイーンズサークルとランドマークプラザだけの会場もちょっと寂しい

それでも軒並みこの手のイベントが無くなる中嬉しかった

色々な家族の中には浅田家も

2020-10-07 17:44:00 | 新作映画

中野量太監督の新作家族映画。
「湯を沸かすほどの熱い愛」「長いお別れ」と良質な家族映画を観せてくれていたので、大変期待していた。今回もやっぱりドップリ家族が描かれるんだけど、今までと違うのは主軸の浅田家ばかりじゃなくて色々な家族が記念写真と共に語られたことだ。それはそれで感動的なエピソードも多く(脳腫瘍の子供を抱えた虹の家族、津波でお父さんを亡くした少女の家族とか)その都度涙もんだけど、その分浅田家の家族愛が薄まってしまうように思えた。

後半部分は東北の震災で泥まみれになった写真の復元に尽力する姿が描かれ、あの時そんな風に自衛隊や消防警察の捜索隊が写真(アルバム)を扱ってくれていたんだと改めて感謝し、あんな風に被害者へ寄り添うボランティアもいたのかと思い知らされた。ただそれが映画作品としてどうかと言えば、否定的な評価になってしまう。
浅田家の家族物語と、震災による写真復元のお話は別々にした方が主題がはっきりして、もっといい映画になったと思う。そこの部分が残念だった。

菅田将暉スゲーと思ったのが、ひ弱そうなボランティア青年を演じる彼が本当に近所の影薄い青年にしか見えなかったところ。二宮和也は確かに味ある役者の素質はあると思うけど、やっぱりスーパーアイドルのニノから抜け出せない。写真復元のボランティアもただの良い人になっちゃって、前半のいい加減な他人たらしとしてのキャラが死んでしまっている。やっぱり、本物の役者は違うのだ。