映画と渓流釣り

物忘れしないための処方箋

ゴルジュの中に

2012-09-25 10:20:26 | 釣り
 いろいろグダグダしている内に9月も終わろうとしています。
9月の終わりは漁期の終了でもあります。残暑というには長すぎる暑い日々もようやく引き際をわきまえた先週末、桂川上流の核心部を探索いたしました。
 
 毎年一度は水量の落ちる頃を見計らって入渓する蒼竜峡は、素人が立ち入るにはちょっと危険な場所ですが、殆ど釣り人に会うこともない別天地です。美しい山女魚が多く棲む場所でもありますので、竿を出す人は是非リリースをしていただきたいと思います。
 昨年9月の大水の影響は岸の低木に顕著ではありますが、渓相にはそれほどの打撃はなく魚も減ってはいても他地域にくらべれば充分楽しめる数がそろいました。

 夜半から激しい雨になり、朝方帰路につきました。
あともう一週間で禁漁です。年々感慨のない秋の始まりです。


鍵泥棒のメソッド

2012-09-18 13:14:58 | 新作映画
 たまぁにYahooの映画紹介にレビューされている方の寸評を拝見することがあります。
映画なんて好き好きですから、どんなに性懲りもない愚作でもいいと思う人には忘れえぬ名作であっていいと思います。わたくしのように単純に映画好きな者からすると、一生懸命作った映画が愛されるのは嬉しいことです。その反対に、何だか良く分からない講釈で批判されているのを読むと悲しい気持ちになってしまいます。
 それも好き好きですから、嫌いならば99人が認めても嫌いでいいのですけど、「やっぱり日本映画は...」とか「暗くて...」なんていう寸評見ると、いい加減うんざりします。
 沢山観れば良いわけではありませんが、経験値の多さが審美眼を養うのはまぎれもない事実です。判ってもいないのに書くなと言いませんけど、判かろうとする努力くらいしなさい。先日観た「鍵泥棒のメソッド」のような優れた作品にもうんざり系の寸評がいくつかありましたのでおせっかいな日記になりました。

 内田けんじという人は、監督より脚本家として評価したいと思います。
前作「アフタースクール」も見事な脚本でしたが、わたくしとしては今作のほうに一層愛着を感じます。登場人物の一人ひとりがとても上手に作られていて、最後の最後まで本当の魅力(バケの皮)が明らかにされません。冒頭の5分で犯人とトリックが透けて見えるような、○○サスペンス劇場等と比べればなんと贅沢な作劇なんでしょう。かつてアメリカ映画が優れた作品を量産していた頃に良くあった、ウェルメイドなつくりの安心できる傑作コメディのようでした。

 広末涼子に「鉄道員」以来久し振りに胸がドキューンとときめきました。


夢売るふたり

2012-09-12 17:08:40 | 新作映画
 前作「ディア・ドクター」でその力量をイヤと言うほど知りましたから、新作の出来に期待しない人はいなかったと思います。わたくしも今年一番期待していた作品です。
西川美和でなければ、とてつもない女流監督登場と騒いでしまったかもしれません。
西川美和だから、この程度で納得は出来ませんと思うのは罪なことですか?

 松奥さんの底知れない暗さに寄り添えばいいのか、阿部旦那のやりきれない空虚さを推し量ってあげれる事が大切なのか、分からなくなってしまったのが作劇上失敗でした。どちらも押しつぶされるほどの質量を感じますから、これが二つ一緒に課せられると重すぎて堪りませんでした。騙される女達の重さもそれに加わると一層辛く感じますから、後味が良い悪いとか言うのと違い、二時間では消化しきれない胃もたれに似た感覚が残ってしまいました。

 とは言え、こんなにも重厚なフルコースをたっぷり味合わせてくれる監督は貴重です。
それぞれのオンナがくっきりと輪郭が炙り出てくるのに、松たか子だけが闇に溶けてゆくような演出はやろうと思ってもそう簡単にはいかないでしょう。ラストシーンで松たか子が正面からにらみつけたカメラのこちら側に居るわたくし達は、薄ら寒さを背中に感じながら、それでもそこに愛があるのだろうかと自問するしかありません。