映画と渓流釣り

物忘れしないための処方箋

ステキな金縛り

2011-10-31 10:29:41 | 新作映画
 この秋、邦画界期待の一作でしょう。
興行はある程度予想が付きましたが、作品評価は観るまで分かりませんでした。「ラジオの時間」は素晴らしかったのに「みんなの家」は大失敗でしたし、「有頂天ホテル」は大笑い出来たけど「マジックアワー」は中途半端な仕上がりでしたから。
 順番からすると當りの周期です。シュチュエーションも三谷監督の得意なパターンです。期待し過ぎない程度に期待して初日に鑑賞いたしました。
 正解でした。今までの作風に比べかなり泣かせを意識して創られていますが、コメディのエッセンスを邪魔すること無く大いに笑い楽しませてくれました。芸達者な出演陣も与えられたパーツを遺憾なく演じきっており、観ている我々もそれなら納得!と、物足りなさを感じることもありません。これからも常連は欠かさず使って欲しいのですが、多彩な役者を多彩な味付けで披露して欲しいと思うのです。


NINEと81/2

2011-10-31 10:01:03 | 旧作映画、TVドラマ
 わたくしは多感な青年期をフェリーニで過ごしました。
「ローマ」「アマルコルド」「カサノバ」「オーケストラ・リハーサル」「インテルビスタ」等を名画座や封切りで鑑賞しましたので、青春期の甘酸っぱさと共に思い起こされます。先週CSで観たNINEは題名からも、そのまま「81/2」のミュージカル版です。言わずもがなフェリーニの数多ある傑作の中でも随一とも謂われる作品を、ミュージカルに仕立てるとは、流石アメリカ人、怖い物知らずですね。「青春群像」「道」「カビリアの夜」「甘い生活」といった初期の傑作群と「81/2」以降の作品は随分色合いが違いますので、初めて観る人にはどちらがフェリーニなのか見当も付かないかもしれません。こんな自由に映画を愛し表現した作家には出会えないでしょう。偉大な映画作家でした。

 NINEの作品がどうこうありませんけど、非常に不満なのはミンゲラに捧ぐとのプロットは理解できても、フェリーニへのオマージュをもっと分かり易く示すべきだと思った次第です。


アルタミラピクチャーズの楽しみ

2011-10-28 13:34:00 | 旧作映画、TVドラマ
 昨日、「がんばっていきまっしょい」をCS放送で観ました。ずっと観たいと思っていたのですが、縁無く今日まで未見だったのです。田中麗奈の瑞々しさは十数年たった今でも画面から発散されています。映画の出来は、少々残念なところもありますがアルタミラの伝統の作風が生きていて、まとまりのある佳作になってます。脚本と監督を周防か矢口がやっていたなら、もっと傑作になっていただろうなぁと感じるのは、今となっては致し方ないことです。

 「しこふんじゃった」「Shall We ダンス?」「ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」と続く一連のアルタミラ関連作品は、ふとしたきっかけで巻き込まれた流れにいつしかどっぷりと浸かり不器用ながら懸命に頑張ってしまう人々に焦点をあて、清々しい感動を与えてくれます。磯村監督は失速してしまいましたが、周防・矢口両監督は最早日本映画界には欠かせない人材となっております。
 今後もTV(フジ)との共同制作は仕方ないとしても、良質のコメディを生産し続けていただきたいものです。


そのときは彼によろしく プンプン

2011-10-26 15:38:14 | 旧作映画、TVドラマ
 市川拓司は「いま、会いにゆきます」の作家として、いくつかの作品を読んでいます。
「そのときは彼によろしく」もそうですけど、大切なものを喪失することの悲しみと何らかの理由による転生が幸福感を呼び起こし、ほどよく涙をさそう作風に魅力があります。
ただ、わたくしは持って回った表現が気持ち悪く感じることもあり、物語や感性は好きであっても必ず手にとりたくなる様な作家ではありません。無理して村上春樹しているようでちょっぴりうんざりです。

 今日のお話は、原作のことではなく、昨日CS放送で観た映画のことです。
前記した「いま、会いにゆきます」がわたくしにとって忘れえぬ家族映画の一本として記憶に残っておりますので、原作のもつ大切な部分がきっちり描かれているなら「そのときは彼によろしく」も愛おしい佳作になってるのじゃないかしら?と期待をしていたのです。
が、プンプン!誰がどうしたらここまで酷く脚色できるんだと思うような最低の脚本(ほんとに責任とれ[要するに二度と商業作品に手を出すな])輪をかけたように映像的理解力のない演出(監督、あんたも同罪だ)。
こんなモノを商業ベースにのせようとしたことが罪です。日本映画の質を10ポイントくらい急下降させてますね。
言い出したらキリがありませんけど、喪失感も回帰した幸福感も何にも感じられない異常な駄作でした。
わたくし映画を愛する者として、ここまでこき下ろす事はそうそうありませんので、かえって天晴れ!!


ツレがうつになりまして。

2011-10-08 23:26:59 | 新作映画
 立て続けで宮崎あおいです。
あまり生活感を感じさせないところが彼女の良いところだと思いますが、今日観た映画は市井のありふれた夫婦の姿を描写してますので、あの不思議なふわふわした感覚が邪魔するのではないかと危惧しておりました。でも、本当に上手なんですね。お風呂場のシーンなんて生身の女の顔にがらりと変身していて怖いくらいでした。こんな奥さんがいたなら安心して鬱になれそうな気がいたしました。

 わたくしもかつて、軽度の鬱になった事があります。医者に行けば間違いなく処方されてしまっただろうと思いますが、どうにか自力で克服する事が出来ました。一度目は仕事の充実感の無さに失望して、会社に行っても外回りの営業でしたから商用車で一日中昼寝をしてました。昼寝ると、夜寝られませんので悪い事ばかり考えているうちに夜が明けるといった負のスパイラルに陥りました。結局、バリバリ営業して成績を伸ばして言い訳していた自分に勝つ事で立ち直りました。二ヶ月くらいでしたけど本当に辛い日々でした。

 佐々部清監督はこの手の作品を気持ち良くみせてくれる数少ない監督です。
今回の作品も夫婦の淡々とした時間を緻密に、それでいてユーモラスに描く事に成功してます。ツレの堺雅人はホント適役でした。彼を置いてこの役は考えられません。グリーンイグアナも嫌味なく作品にマッチしていたので、このような小道具も使い方次第なのだなあと感心いたしました。
劇中多用されるイラストも味わいがあり、特に布団をかぶって亀になったツレは愁眉でした。