見出し画像

映画と渓流釣り

「掘る女」に寄せて


ドキュメンタリー映画はモニター鑑賞も含めて、年に2〜3本しか観ない
それなのにわざわざ横浜市歴史博物館まで足を運んだのは、松本貴子監督作品だからだ
前作「氷の花火」は世界的なファッションモデル山口小夜子を題材に、彼女の秘められた素顔をあからさまにする事で傑作となった。処女作である「わたし大好き」も当時知る人ぞ知る前衛芸術家の草間彌生を正面に見据えた力作だ

さて、前作から7年のインターバルで紡ぎ出された作品は、随分と予想を覆す題材だった
癖の強いアート系女性を主題にした過去作とは180度ソッポを向いていて、土臭い(泥臭い)女性たちの執念が描かれている。何故この世界を描いたのかは、上映後に行われたトークショウで明らかになるのだが、なんとキッカケは渦巻き好きが高じてのめり込んだとのこと(縄文土器には渦巻き模様が多用されてるらしい)
何のこっちゃ?
奇人にはそれなりの理屈があるのだろう

中心的に紹介されるのは4人の女性
現役最後の仕事として、何年間も山の中で石器の材料になった掘削場所を掘る人
バイパス道路工事の側道に過去の痕跡を追い、地元のオバちゃんが提供してくれるお八つをニコニコ頬張る人
就職を控え後輩の面倒をみながらも地べたに這いつくばって土器を掘り、地元自治体の考古学学芸員の道を選ぶもの
そして、当たり屋と言われるらしいが、希少埋蔵物を掘り当てるごく普通の主婦作業員
皆さん飄々としていながらも、執拗までの情熱で掘り続ける

人はやっぱり分からない
こんなにも夢中になって過去を掘りかえす女性たちがいるんだ






今回の作品も稀有でありながら普遍的に生きる女性像を際立たせた演出に拍手したい
唯一残念に思ったのは、焦点が数人に分散された事で個々人のユニークさの深掘りに欠けてしまったことだ
フェリーニが傑作「ローマ」で描いたエピソード(ローマの地下で発掘した壁画が2000年後の空気に触れた途端色褪せてゆく)の様な劇的で異次元の視覚体験を望むことは高すぎるハードルだろうか?


最後に
言い忘れていたが、松本貴子監督とは学生時代映画研究会で一緒に映画製作をした仲間
酒飲みながらこの次はどうするの?と、問えば
まだ彼女の脳味噌の中で渦を巻いている最中だと・・・
渦巻き好きな監督らしい











名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「旧作映画、TVドラマ」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事