一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『岳-ガク-』 ……北アルプスの山岳美を大スクリーンで楽しもう……

2011年05月10日 | 映画
ごちゃごちゃ言わずに、
北アルプスの大自然を、
大きなスクリーンで、
存分に楽しみましょう!
……といった作品です。(笑)

石塚真一の人気コミック『岳 みんなの山』を映画化したもので、
実は私もこの原作の大ファン。
映画の公開を楽しみにしていたのだ。
そして、公開初日の5月7日(土)に、
仕事の帰りにレイトショーで見たのだった。

日本の登山人口は1230万人。
高くそびえる山の頂には、見たこともない絶景が広がっている。
その感動を求めて、毎年、多くの人々が山を訪れている。
しかし、同時に遭難事故も絶えず、その数は年間およそ2000人と言われる。
山には喜びと共に危険も存在する。
にも関わらず、人は今日も山の頂へと向かう。
自分の足でつかみとった美しい風景を求めて――。
日本有数の名山・北アルプス山系に、そんな山の素晴らしさを誰よりも知る男がいた。
彼の名は、島崎三歩(小栗 旬)。


世界中の山を登り、山の楽しさ、山の厳しさ、山の美しさを知り尽くした山岳救助ボランティア。
山の素晴らしさを多くの人たちに知ってもらいたいと願う三歩は、たとえ自分の過失で遭難した者であっても、決して責めることしない。
仮に要救助者が死亡していたとしても、その遺体に向かって、
「よく頑張った」
といたわりの言葉をかける男である。
そんな三歩の暮らす山に、北部警察山岳救助隊に配属されたばかりの椎名久美(長澤まさみ)がやってくる。
久美は、同じ山岳救助隊の隊長・野田(佐々木蔵之介)や三歩の指導の下、厳しい訓練をこなし、新人女性隊員として着実に成長していく。


しかし、実際の救助では自分の未熟さや大自然の猛威により、遭難者の命を救うことが出来ない日々が続く。
打ちひしがれ自信をなくす久美。




そんな折、猛吹雪の冬山で多重遭難が発生。
救助に向かった久美を待ち受けていたのは、想像を絶する雪山の脅威。
その時、三歩は……
(ストーリーはパンフレットより引用し、構成)


島崎三歩役の小栗 旬。
漫画の三歩とは、イメージがかなり違うが、
小栗 旬ならではの三歩を好演していた。
高所恐怖症とのことで、アイスクライミングなどの実地訓練の時など、かなりキツかったのではないだろうか。
まったくの山未経験者が、あれだけのシーンをこなしているのだから、相当努力したのもと思われる。


椎名久美役の長澤まさみ。
正直、心配していたキャストであった。
演技もそれほど巧くないし、
ただ可愛いだけという部分もあるが、
彼女なりによく頑張っていたと思う。
遭難者の足を切断するシーンがあるが、
その時の雄叫びのような叫び声に、彼女の覚悟を感じた。


山岳救助隊隊長・野田役の佐々木蔵之介。
小栗 旬と長澤まさみだけでは、ただのアイドル映画みたいな感じになってしまうが、
演技派の彼がいるだけで、グッと締まった作品になった。
ちょっと神経質的な感じの、冷静沈着な山岳救助隊隊長を好演していた。


谷村山荘の主人・谷村文子役の市毛良枝。
言わずと知れた、山大好きの女優。
彼女が出ているだけで、なんだか嬉しいし、ホッとする。
彼女の著書『山なんて嫌いだった』(山と溪谷社)は名著なので、
未読の方は、ぜひぜひ。


昴レスキューのパイロット・牧 英紀役の渡部篤郎。
漫画のイメージそのままの格好良さ。
出演シーンはそう多くはないが、抜群の存在感があった。


その他、佐賀出身の女優・中越典子も出ていて、嬉しかった。
結婚を控え、父親(光石 研)と登山に訪れ、遭難する女性を演じていて、
映画後半では重要な役であった。

この他、
フリークライマーの第一人者・平山ユージ氏や、
原作者である漫画家・石塚真一さんも、
意外な場面で出てくるので、見逃さないように……ね。

岳人でない私が見ても、
「それはないんじゃない」
と思わず叫びそうになるシーンも多々あり、
ツッコミどころ満載の映画なのだが、
北アルプスの雄大な自然と、
出演者たちの熱演を見ていると、あまり気にならなくなってくる。
映画をただ楽しもうという気になってくるから不思議。

映画『点の記』では、固定カメラのみの絵はがきのような風景にやや辟易したが、
この作品では空撮の映像が優れていて、北アルプスの山々をダイナミックに映し出す。
これが山好き人間には堪らない快感だ。
正直、この空撮だけでも『岳-ガク-』を見る価値はあると思う。
エンドロール(この時に席を立つ人が多い)が終わり、
スクリーンが暗くなり、館内が明るくなると思いきや、
最後の最後にもうワンシーンがあるので要注意。
この最後のワンショットがなかなか素敵だ。
館内が明るくなるまでは、絶対に席を立たないようにね。


この映画を見ると、また北アルプスに行きたくなるよ。
困った、困った。(笑)

ああ、それから、最後に一言。
小栗 旬、長澤まさみ、「よく、頑張った!」

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