![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/68/58/b4eece9d099d70d975f47a4c3d8fc15c.jpg)
最近、深夜に放送されていたTVドラマ「からかい上手の高木さん」を、
毎回楽しみに観ていた。
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そして、このブログに、
……今泉力哉監督の初恋ラブコメディ……
とのサブタイトルを付してレビューを書いた。(コチラを参照)
原作は、
月刊漫画雑誌「ゲッサン」(小学館)で連載されていた、
シリーズ累計1200万部突破の同名漫画で、
すでに、
テレビアニメ(第1期2018年)(第2期2019年)(第3期2022年)や、
劇場版アニメ(2022年6月10日公開)も制作されている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/56/96/f6d0a66de4ae34bbfe3e7ce1af5472a2.jpg)
そのドラマ版である「からかい上手の高木さん」は、
とある中学校で、隣同士に座る
「からかい上手の高木さん」(演じるのは月島琉衣)と、
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7a/f4/82ebe5ab9479fd1110364dfca3ace12e.jpg)
「からかわれっぱなしの西片」(演じるのは黒川想矢)の、
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2b/b2/87ae5cfd6efb87079a5ff8ce48f8de3e.jpg)
日常のやり取りを描くだけのラブコメディなのであるが、
これが、めっぽう面白かった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7e/67/12f773ae2707154531809e5f542320b3.jpg)
主演の二人を演じる月島琉衣と黒川想矢の演技も素朴なリアル感があって良かったし、
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特に、高木さんを演じた月島琉衣には、
その美貌と演技力に、限りない将来性を感じたものだった。
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そのドラマ版の10年後を描く実写映画『からかい上手の高木さん』が、
5月31日に公開された。
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監督は、ドラマ版と同じく今泉力哉。
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高木さんを永野芽郁、
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西方を高橋文哉が演じている。
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今泉力哉は以前より私の好きな監督であったし、
永野芽郁が高木さんをどう演じているのかを楽しみに、
公開初日(5月31日)に映画館に駆けつけたのだった。
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とある島の中学校。
隣の席になった女の子・高木さん(月島琉衣)に、
いつもからかわれている男の子・西片(黒川想矢)は、
どうにかしてからかい返そうとさまざまな策を練るも、
彼女に見破られて失敗ばかりしていた。
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そんな2人の関係はずっと続くと思っていたが、
高木さんがある理由から引っ越すことになり、
心に秘めた互いへの思いを伝えることなく2人は離ればなれになってしまう。
それから10年が過ぎたある日のこと。
「西片、ただいま」
母校で体育教師として奮闘する西片(高橋文哉)の前に、
高木さん(永野芽郁)が教育実習生として現れる。
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10年ぶりに再会した二人の、
止まっていた時間と、止まっていた“からかい”の日々が、
再び動き出すのだった……
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漫画もTVドラマも、「からかい上手の高木さん」はとてもピュアな物語で、
中学生だからこそ成り立つ物語なのでは……と思っていた。
なので、正直、10年後の大人になった二人の後日譚には心配している部分はあった。
その後の物語を知りたいと思いつつも、
ピュアな二人ではなくなっていたら……と心配していたのだ。
だが、杞憂であった。
二人は20代になってもピュアであり続け、(笑)
変わっていなかったのである。
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「20代になってもピュアなんてありえない。ファンタジーかメルヘンならありえるかもしれないけど……」
と言う人がいるかもしれない。
だから、そういう人にとっては、現実味の乏しい映画であったかもしれない。
だが、今泉力哉監督は言う。
10年後の二人を描く上で、一番大切なのはキャスティングだと思っていました。オリジナル脚本のときも原作もののときもそうですが、僕の映画は俳優の芝居が最も重要というか、そこだけは譲れない部分なので、今回は10年後を描くことに対して、「中学生同士のあのやり取りを大人がやっても違和感はないか」など、いろんな話し合いをしました。でも実際に現実の世界にも純朴でピュアな人はいますし、ファンタジーだとは思わなかった。じゃあ“あのまま大人になった西片”を演じられる人は誰なのか。高木さんについても、年齢を重ねたことによってあざとさや色気になってしまわずに演じられる人、純粋な“からかい”に見える人は誰なのか。そういうことをプロデューサーと話して、永野芽郁さんと高橋文哉さんに決まりました。本当にバッチリでした。(パンフレットのインタビューより)
永野芽郁と高橋文哉をキャスティングしたことによって、
「中学生同士のあのやり取りを大人がやっても違和感はないか」という問題点をクリアしたのだ。
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実際、永野芽郁は、見た目の美しさや可愛らしさもさることながら、
とても高い技術力を持った女優なので、
〈10年後の高木さんはさもありなん……〉
と思わせる素晴らしい演技で魅せる。
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10年という月日が経つことによって、良くも悪くも、変わるところも変わらないところもあるだろうなと思いました。西片を前にしたときの姿は10年前と変わらずにいたいなと思っていたんですが、それまで別の場所で経験してきたことがあるので、まとっているオーラや空気感は少し変えた方がいいだろうなと意識しました。ただ、やっぱり小豆島の土地に引き出してもらった部分が大きかったのかなと。「帰ってきたな」と感じられるような環境だったので、あの小豆島と(高橋)文哉くんを前にしたときに、自然と出てくるものがたくさんあったんじゃないかと思います。(パンフレットのインタビューより)
永野芽郁はこう語っていたが、
原作の漫画やアニメもしっかりと目に通した上で、役作りをしたそうだ。
ただ、原作の高木さんに寄せ過ぎたときもあったそうで、
そのときには、監督から、
「永野さんが演じる高木さんを見たいから、もうちょっと永野さんらしくやってください」
と言われ、修正したそうだ。
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なので、
中学時代の高木さんを演じた月島琉衣とは一味違った高木さんを楽しむことができる。
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私は、TVドラマのファンだったので、
どちらかというと、中学時代の高木さんを演じた月島琉衣の方が好きだったのだが、
大人になった高木さんを演じた永野芽郁も悪くないと思った。
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演技の上では、大人になった高木さんを演じる方がはるかに難しいし、
このところシリアスな役が多かった永野芽郁なので、
穏やかで、温かくて、純粋な女性を演じる永野芽郁を見ることができて、
私としても嬉しかった。
永野芽郁ファンは見逃せない一作と言えるだろう。
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印象的だったのは、終盤にある高木さんと西片の教室のシーンの長回し。
この映画に関しては予備知識なしで見たので、
突然始まった長回しに(最初は長回しだと気づかなかった)戸惑ったのだが、
二人が互いに想いを吐露する重要なシーンであったので、強く印象に残ったのだ。
この長回しのシーンについて、今泉力哉監督は次のように語っている。
物語上の一番の山場ではあるし、撮り方も含めてすごく特別なシーンではありましたが、撮影時にほかのシーンよりも特に気合を入れて何かする、みたいなことはなかったですね。もちろん俳優は大変だし、あのシーンが成立するかどうかでこの映画の面白さも変わってくるので大切ではあるんですけど。永野さん高橋さんはとても丁寧に本物の時間を紡いでくれて、自分が思い描いていた理想と出来上がった空気がすごく近かったので自分で観ても泣きそうになるんです。これだけの長回しって俳優にとってはある種の見せ場なので、ともすれば二人とも感極まって号泣するような芝居をすることもできたと思う。でも永野さんは目を潤ませながらも涙をこぼさなかった。最高のバランスです。お二人とも役に対する理解度がとても深くて、本当に素晴らしかったです。(パンフレットのインタビューより)
今泉力哉監督は、『街の上で』(2021年)でも、
主人公の青(若葉竜也)とイハ(中田青渚)が部屋で話すシーンで長回しをしているが、
私は『街の上で』のレビューで、そのシーンのことを次のように記している。
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もっとも感心したのは、
青がイハ(中田青渚)の住むマンションに行き、“恋バナ”をするシーン。
これが実にリアルで、
青(つまり若葉竜也)がちょっと考えるような、口ごもるようなシーンもあったりしたので、
〈アドリブもあったのかな……〉
と思っていたら、
アドリブは一切なかったとのこと。
ちなみに、あのくだりは全部セリフ通りなんです。でも、僕は途中でセリフが吹っ飛んで、中田さんに助けてもらうという展開に(笑)。それでもOKが出たんですよ。(「映画.com」インタビューより)
と、若葉竜也は語っていたが、
若葉竜也の(それに中田青渚も)演技が素晴らしかったこともあって、
この「17分ワンカット」のシーンは、
(語り継がれるであろう)本作の名シーンとなっている。
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映画『からかい上手の高木さん』の長回しのシーンも、
『街の上で』の長回しのシーンと同様に、
ファンの間で語り継がれることであろう。
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本作を良きものにしている重要な要素のひとつに、
舞台が小豆島(香川県)というのがある。
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原作は、明確に小豆島が舞台であると謳っているわけではないが、
小豆島は原作者の出身地であることから、すでに聖地化しており、
ドラマ版でも映画でも当然のごとく小豆島でロケされている。
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小豆島の美しい風景が、
高木さんと西片の初恋を生み、育て、やがて最高の瞬間へと送り出す。
ドラマや映画を鑑賞する者は、
島の住人になったかのように、二人を見守り、愛しむ。
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こんな幸福な関係を築くことができた小豆島は、
やはり最高の舞台であったような気がする。
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〈私もいつかロケ地巡りをしたいものだ……〉
と思ったことであった。
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語りたいことは多いが、長くなるので、この辺で終えたいと思う。
映画『からかい上手の高木さん』は、
ドラマ版を愛する人への最高のご褒美であった。
至福の119分であった。