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1970年代後半から80年代前半にかけて、
「シルエット・ロマンス」「たそがれマイ・ラブ」などのヒット曲を放った歌手の大橋純子さんが11月9日に亡くなった。享年73歳。
死因は明らかにされていないが、食道がんで闘病中だったという。
10月18日にもんたよしのりさんが、
11月9日に大橋純子さんが、
相次いで亡くなったことに、ある感慨を覚える人も多いのではないだろうか?
なぜなら、この二人で歌った「夏女ソニア」(1983年)というデュエット曲があったから。
もんたよしのりさんが亡くなったとき、大橋純子さんが、
もんたさんの突然の悲報に接し現実のこととは思えず、ただただ茫然としております。もんたさんとは当時同じ事務所で夏女ソニアという曲でデュエットしたこともあり、コロナ前になりますが、久しぶりに神戸国際会館で2人で夏女ソニアを歌って、キーの高さでヘトヘトになりながら、「まさかお互いこんな年代になるまでこの曲を歌うなんて思わなかったよね」なんて笑いながら話したり。でも若手時代を思い出しながら楽しいひとときを過ごさせていただきました。
と追悼コメントを出しておられたのが印象に残っているが、
もんたよしのりさんが亡くなって1ヶ月もしない内に大橋純子さんまでもが亡くなるとは思ってもいなかった。
この数年、70代で亡くなるミュージシャンが多い。(ミュージシャン以外でも70代で亡くなる著名人は多いし、もっと若くして亡くなるミュージシャンもいるが、ここでは70代で亡くなったミュージシャンに限って論ずる)
思いつくままに挙げても、
村上ポンタ秀一(ドラム奏者)2021年3月9日死去、70歳。
喜多條忠(作詞家)2021年11月22日死去、74歳。
葛城ユキ(歌手)2022年6月27日死去、70歳。
山本コウタロー(歌手、タレント)2022年7月4日死去、73歳。
高橋幸宏(シンガーソングライター、ドラマー、他)2023年1月11日死去、70歳。
鮎川誠(ギタリスト、作曲家)2023年1月29日死去、74歳。
坂本龍一(作曲家、音楽プロデューサー)2023年3月28日死去、71歳。
谷村新司(歌手)2023年10月8日死去、74歳。
もんたよしのり(シンガー・ソングライター)2023年10月18日死去、72歳。
大橋純子(歌手)2023年11月9日死去、73歳。
など、彼ら(彼女ら)の音楽に親しんできた世代の私としては、感慨深いものがある。
特に今年(2023年)は、
高橋幸宏、鮎川誠、坂本龍一、谷村新司、もんたよしのり、大橋純子と、
(70代のミュージシャンが)相次いで亡くなっている。
なぜ70代で亡くなった人が気になるかというと、
私も来年の夏には70歳になるからだ。
「70代なんてまだまだ若い。今は人生100年時代なんだから」
と言う人もいるかもしれないが、それは間違いである。
2019年06月に、映画『長いお別れ』のレビューを書いたとき、
私は次のように記している。
私は昔から同窓会というものには興味がなく、
5年おきくらいに届く同窓会の出欠を問う葉書をうるさく感じていた程であった。
当然のことながら、これまで一度も出席したことがなかった。
私が60歳になった年には、
小学、中学、高校、大学と、「還暦同窓会」の知らせが一斉に届いた。
いつもは往復葉書なのだが、
高校の同窓会からの知らせは少し大きめの封書であった。
開封してみると、返信用の葉書の他に、学級ごとの名簿が同封されていた。
名簿には、クラスメイトの現住所などが記されており、
どのクラスも2~3人が亡くなっていて、少し驚いた。
私の高校時代には、すでに学生運動は下火になっていたが、
それでも活動している生徒が幾人かいて、そのリーダー格だった生徒が既に亡くなっていた。
ビラを配りながらアジっていた姿が思い出された。
柔道をしていた屈強な生徒や、
秀才の誉れ高かった生徒も亡くなっていた。
いつごろ、どのようにして亡くなったのか……
しばし感慨にふけった。
亡くなった人の数にも驚いたが、
連絡が取れない人も各クラス10名近くいて、
その中にも1~2人は亡くなっている人がいるような気がして、
〈60歳の時点で、もうすでに同年齢の1割くらいの人が亡くなっているのではないだろうか……〉
と思った。
そこで、調べてみると、
私の誕生年に生まれた日本人は、約177万人。
私が60歳になった年に、私と同年齢の人の数は、約159万人。
生まれた人の数の89.8%で、
還暦になった時点で、統計上でもすでに1割の人が亡くなっていたのだ。
〈60歳で1割の人が亡くなっているとすると、70歳、80歳、90歳の時点ではどうなんだろう……〉
と思って、さらに調べてみると、驚くべきことが判った。
女性は男性よりもかなり長生きするので、男性だけに限って言えば、
70歳で、約2割、
80歳で、約4割、
90歳で、約8割の人が亡くなっていることが判った。
言葉は悪いが、倍々ゲームなのである。
現在、日本では、「人生100年時代」という言葉がもてはやされている。
ある海外の研究で、
「2007年に日本で生まれた子供の半数が107歳より長く生きると推計される」
と発表されたことにより、一気に気運が高まり、
安倍首相を議長とする「人生100年時代構想会議」も発足し、
「人生100年時代」という言葉をタイトルに入れた本がベストセラーになるなど、
もう寿命が100歳まで延びたかのような雰囲気になっている。
でも、これって、ちょっとおかしくないですか?
そんな急激に寿命って延びます?
ありえない。
「年金受給年齢を引き上げたい」政府と、
「不安を煽って儲けたい」保険会社などの思惑が一致し、
ありえない「人生100年時代」が、
さも、すぐそこに到来しているかのような錯覚を起こさせている。
『この先をどう生きるか 暴走老人から幸福老人へ』(藤原智美)という本を読んでいたら、
平均寿命とは、毎年発表される、その年に生まれた赤ちゃんの余命を表していて、
2050年に生まれた赤ちゃんの平均寿命が100年……と予想されており、
その結果が判明するのは130年も先のことなのである。
今、生きている我々が100歳まで生きる確率は、ほんの数パーセントにすぎないのである。
「人生100年時代」を心配する前に、
己の認知症の心配でもしていた方がイイ。
なぜなら、65歳以上の5人に1人は認知症になるそうで、
80代になると、3人に1人……と、確率はグンと高まる。(全文はコチラから)
長々と引用したが、かように「人生100年時代」とは大ウソなのである。
70代は、もういつ死んでも不思議ではないのである。(60代もね!)
※たまたまではあるが、今朝(2023年11月12日)、地元紙(佐賀新聞)の訃報欄を見ると、13人中、8人が70代(1人は69歳)であった。佐賀新聞を購読している方は確かめてみて!
前期高齢者になると、著名人の訃報記事も丹念に読むようになるのだが、(私だけ?)
最近、70代でも、死因が「老衰」と記されていることがあり、ビックリする。
老衰とは、「加齢により脳を含めた全臓器・細胞の力がバランスを保ちながらゆっくり命が続かなくなるレベルまで低下していき、最後に下顎呼吸後に死亡すること」であるのだが、
90代以降のイメージがあり、70代と老衰死は結びつかなかった。
だが、「70代、老衰」で検索してみると、
「平均健康寿命73.1歳…70代になるとなぜ急に老衰するのか」
という記事(ハンギョレ新聞)がヒットした。
70代は人の一生において、身体機能が大きく弱まる分岐点のような時期だ。骨と筋肉の消失で身長は縮まり、力は衰え、体重は減少しはじめる。国際科学コミュニティ「インテックオープン(InTechOpen)」が老化に関する研究結果を集めて出版した「老人学」の教本によれば、40代以降に身長は10年で約1センチずつ縮み、70代に入るとその速度は大きく速まる。筋力は60歳以降、年間で最大3%減少する。したがって、軽い転倒事故でも深刻な負傷や骨折をする可能性が高い。臓器の機能も弱まるため、高血圧や糖尿病、認知症などの慢性疾患が発生しやすい年齢が70代だ。
米国では75歳以上の男性の約半数、女性の40%に聴力障害があるという研究報告もある。医学ジャーナル「ランセット」などに発表された研究結果によると、認知症になる確率は、65歳以降は5年経過するたびに2倍となる。
人が70代になって急に体が老衰する理由を、細胞レベルで究明した研究論文が発表された。
英国の生命科学研究機関「ウェルカムトラスト・サンガー研究所」の研究陣は、一生にわたって造血幹細胞に徐々に蓄積される遺伝的突然変異が、70歳以降の血液生産のあり方に劇的な変化をもたらすことが明らかになったと国際学術誌「ネイチャー」に発表した。研究陣は、そのことによって血液細胞の多様性が低下することが、70代以降の急激な老化の原因のひとつとみられると述べた。今回の発見が老人性疾患の新たな治療法の開発の糸口となるかが注目される。(全文はコチラから)
山陰中央新報の「71歳で老衰!?」という記事もヒットした。
知人から聞いた話。「小学校の同級生が71歳で亡くなったが、死因は『老衰』だった。71歳でも老衰と判断されるのだろうか」と。高齢者の定義は65歳以上というのは分かるが、71歳で老衰は若すぎるのではないか、との言い分だった▼医者の友人に尋ねると、「加齢に伴い心身ともに機能が低下し、脳や全身の臓器が不可逆的にダメージを受けた状態。癌(がん)や肺炎など明らかな病気がなく、食事も摂(と)ることができなくなり、自然死と医師が診断したとき『老衰』と判断する」。確かに71歳で老衰は若いと感じるが、あり得るようだ。(全文はコチラから)
60代前半までは、誰もが比較的元気だ。
だが60代後半から躰のあちこちで支障が出るようになり、
70代には急速に体が老衰してくるし、亡くなる人も多くなる。
70代は実に危険な年代なのである。
「人生100年時代」などという言葉に浮かれずに、
一日一日をしっかり生きていきたい。