一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『友だちと歩こう』 ……「歩く」ことはサスペンスであり、冒険なのだ……

2014年05月08日 | 映画
ゴールデンウィークの期間中、
仕事、仕事の私は、どこへも行けず。
まあ、どこへ行っても混んでいるので、
あまり行きたいとも思わなかったが……(笑)

ということで、
ゴールデンウィークの間は、
なんの話題もなく、
ブログ更新もできなかったのであるが、
ブログ「一日の王」への訪問者数を見て、ビックリ。
以前、
4月26日(土)単日の訪問者数が3278人であったことをお知らせしたが、
その後も毎日2000~2700人の人々がわがブログを訪問して下さっていたのだ。

以下は、最近(4月26日~5月6日)の、
ブログ「一日の王」の閲覧数・訪問者数とランキング(日別)である。

2014.04.26(土)  5707 PV  3278 IP 2013117ブログ中 54位
2014.04.27(日)  4601 PV  2521 IP 2013411ブログ中 85位
2014.04.28(月)  4335 PV  2300 IP 2013770ブログ中103位
2014.04.29(火)  4986 PV  2738 IP 2014180ブログ中 83位
2014.04.30(水)  4262 PV  2251 IP 2014568ブログ中101位
2014.05.01(木)  3995 PV  2012 IP 2014864ブログ中117位
2014.05.02(金)  3709 PV  1967 IP 2015139ブログ中122位
2014.05.03(土)  4129 PV  2184 IP 2015491ブログ中102位
2014.05.04(日)  4490 PV  2331 IP 2015737ブログ中 88位
2014.05.05(月)  5050 PV  2779 IP 2016071ブログ中 76位
2014.05.06(火)  5417 PV  2768 IP 2016476ブログ中 84位

こんな地味な内容のブログなのに、
なぜ、これほど多くの訪問者があるのか、
管理人の私ですら、よく解らない。(笑)
感謝、感謝である。

これほど訪問して下さっているのだから、
皆さんに喜んでもらえそうな話題を書きたいと思うのだが、
生憎、そんな気の利いた話は持ち合わせていない。
映画も、
『アナと雪の女王』や
『アメイジング・スパイダーマン2』や、
『相棒 -劇場版III- 巨大密室!特命係 絶海の孤島へ』など、
話題作・ヒット作は見ていない。
(見たいとは思っているのだが、なかなか時間がとれない)
最近見たのは、
緒方明監督(佐賀県出身)の自主制作映画『友だちと歩こう』。
上映館も少ない作品なので、
見た人は少ないだろう。
話題作と違って、
こういったマイナーな作品のレビューを書く人はあまりいないので、
ちょっと書いてみようかと思った。

緒方明監督作品といえば、
『独立少年合唱団』(2000年)
『いつか読書する日』(2004年)
『のんちゃんのり弁』(2009年)
が有名だが、
本作『友だちと歩こう』は、
『独立少年合唱団』や『いつか読書する日』と同様、
青木研次(脚本)とのコンビによる作品。
前2作も私の好きな作品なので、
『友だちと歩こう』も大いに期待して見に行った。

映画『友だちと歩こう』は、
監督自身をはじめ、友人や知人の出資で完成させた作品だ。
なぜ自主制作になったのか?
「これに至るまで3本ほど企画が流れていて、だったら自分で作っちゃえとなった」
と監督は某インタビューで語っている。
「自主制作はお金がかけられないのでセットも組めない。だったら道だ、と。道はどこにでもある、道を歩く人の群像ドラマができないか、と脚本家と話し合う中から、歩く行為そのものが目的となっている人に行き着いた。どこにでもいるが、普段は見つめることのない人たちですからね」

本作は、一応、4話構成となっている。

第1話「煙草を買いに行く」
団地住まいの老人・富男(上田耕一)は、
悪い脚を引きずって団地仲間の国雄(高橋長英)と煙草を買いに行く。
富男にとって、決して遠くない道程には様々な出会いと出来事が起こる。
富男はその道程に何を見るのか……


第2話「赤い毛糸の犬」
モウリ(松尾諭)は、友達のトガシ(斉藤陽一郎)を連れて、
元妻サツキ(山田キヌヲ)に会いに行く。
家に着くと、
サツキの旦那と名乗るシマヅ(水澤紳吾)と、身に覚えのない子供現れる。
そこで、皆で一緒に夕飯を食べることになったが……


第3話「1900年代のリンゴ」
国雄は、煙草を買いに行こうと、富男を待つが、
富男は部屋で動けなくなっていた。
国雄は、富男を助け、一人で煙草を買いに行くことにする。
翌朝、富男が起きると、国雄がまだ帰ってきていない。
国雄に何が起こったのか……


第4話「道を歩けば」
富男と国雄がいつもの喫茶店にいると、
そこに、青い顔をしたトガシがやって来る。
トガシは、モウリの遺書が入っているという郵便物を持っていた。
開けるのを嫌がるトガシ。
その中に入っていたものとは……


このように4話構成になっているものの、
はっきり物語が独立しているわけではなく、
境目は曖昧で、
行動も会話もゆっくりと進行していく。
普通の商業映画にはみられない独特の雰囲気がある。
大作や話題作しか興味がない人にとっては、
なんとも刺激に乏しい退屈な作品に映るかもしれないが、
大作や話題作に飽き足らないものを感じている者にとっては、
実に新鮮で面白い作品である。
89分という上映時間も丁度イイ。

本作は、上田耕一の初主演作。
1941年、東京都生まれ。
1961年に、舞台『茶館』でデビュー。
映画デビューは、『狼の紋章』(1973年)。
これまで、
『キャバレー日記』(1982年)、
『マルサの女2』(1988年)、
『桜の園』(1990年)、
『12人の優しい日本人』(1991年)、
『午後の遺言状』(1995年)、
『Shall We ダンス?』(1996年)、
『うなぎ』(1997年)、
『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(2007年)、
『ぐるりのこと。』(2008年)など、
約200本の作品に出演。
緒方明監督作品には、
『いつか読書する日』で初参加以来、
『のんちゃんのり弁』など、4作に出演している。

コミカルな役柄からシリアスな役柄まで、
幅広いキャラクターを演じ活躍している名バイプレイヤーであるが、
本作では、郊外の団地に独りで暮らす体の不自由な老人を見事に演じている。


富男の団地仲間・国雄を演じた高橋長英も実に良かった。
1942年神奈川県生まれ。
俳優座養成所15期卒業。
舞台で活躍後、68年 『二人の恋人』 で映画デビュー。
以降、舞台・映画・TVドラマにおいて存在感ある脇役として活躍。

私の若き頃、映画やTVで溌剌とした若者を演じていた印象が強いので、
ヨタヨタとしか歩けない老人を演じた彼に、
ちょっと驚きつつも、月日の経過を感じ、
「それだけ私も年を取ったのだな~」と感慨深いものがあった。


その他、
青春を引きずったまま大人になりきれない30代の男を演じた、
トガシ役の斉藤陽一郎と、モウリ役の松尾諭、


モウリの元妻・サツキを演じた山田キヌヲ、


自殺未遂によって脚を怪我した女性・イトを演じた野沢寛子、


モウリの元妻・サツキの旦那と名乗るシマズを演じた水澤紳吾など、


個性的な俳優たちが、素晴らしい演技をしている。
中でも特に印象に残ったのが、
喫茶店のウェイトレス・ミイを演じた林摩耶。


本作で初めて彼女を知ったが、
目力があり、とても魅力的な女優だと思った。
プロフィールを見ると、
1984年、千葉県生まれ。
日本映画学校卒業後、2005年、太田裕子監督『夏のおとどけもの』でスクリーンデビュー。
2010年劇団東京乾電池入団。
映画・舞台・TVに幅広く活躍する。
映画の出演作に、
『俺たちに明日はないッス』(2008年)、
『きみは僕の未来』(2010年)、
『舟を編む』(2013年)
などがあり、
舞台では、
『甘い記憶』(2012年)、『夏の夜の夢』(2013年)などに出演している。
緒方明監督作品は、
『靴ケ浜温泉コンパニオン控室』(2008年)で初参加以来、
本作で4作目の出演となる。

と書いてある。
これからの女優さんのようなので、
大いに期待したいと思う。

『友だちと歩こう』は、
そのタイトル通り、「歩く」映画である。
「走る」映画は数多くあるが、
「歩く」映画は少ない。
本作のように、より「ゆっくり歩く」映画は、もっと少ない。
ゆっくり歩きでも、何かに出会う。
ゆっくり歩きでも、驚きがある。
「歩く」ことは、サスペンスであり、冒険なのだ。


富男(上田耕一)と国雄(高橋長英)の歩く姿が、殊に素晴らしい。
歩くことが好きな私も、
年老いて、やがて歩けなくなる日がくるだろう。
それまでは「ブザマでもいいからいつまでも歩いていたい」と、
本作を見て心底思った。
歩いている横に、友だちがいれば、
なおイイ。
佐賀では、シアター・シエマで上映中(2014年5月16日迄)。
2014年5月10日(土)に緒方明監督の舞台挨拶があります。  
10:00~(11:40頃終了)/13:40~(15:20頃終了) 
両回上映終了後。
※映画の入場料金で参加できます。


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