MARUMUSHI

映画とかTwitterとかとか。

『マイ・ブロークン・マリコ』。

2023-01-21 19:19:17 | 映画日記
『マイ・ブロークン・マリコ』を観てきた。

90分ほどの映画。
ずっと泣いていた。

私のマリコ。
壊されてしまった大事な大事なマリコ。
私を普通にとどめてくれていたマリコ。
マリコの私。

マリコの遺骨を抱いて、必死で川の中を渡っていくシイノの姿は、三途の川の彼岸から強引にマリコを連れ戻したようにも、シイノが三途の川の彼岸に渡っているようにも見えた。いずれにしても、彼女たちは2人だけで旅に出る。 

これまでにタナダユキ監督作品は『俺たちに明日はないっす』『百万円と苦虫女』『ロマンス』『お父さんと伊藤さん』を観てきた。
彼女の作品には、”ちょっとした出会い”と”大きなすれ違い”が色濃く描かれているように思う。今回のすれ違いは規模がメチャクチャでかくて辛かったけれど。

人は他者の死に自分を投影し、自分自身を見つめ直す。
人が死ぬのはそのためだ。
だからこそ、死んだ人間のことは忘れなければならない。いつまでも死者をスクリーンにしていてはいけない。自分の人生を進まなければならない。

マイ・ブロークン・マリコ。
私のマリコ。
マリコの私。

『さかなのこ』。

2022-09-17 19:08:34 | 映画日記
『さかなのこ』を観てきた。

劇中の最初の台詞。
のんが魚に餌をあげながらいう、
「おはよう」
で、なぜこの映画の主演が彼女なのかが分かった。
どっちでもいいし、どっちでもない。
魚が大好きな人間。
それだけ。

さかなのこは、そうとは知らず、たくさんの人たちの人生を変えていく。
家族、友だち、不良、ギョギョおじさん。

魚が好きな人間でも人間だから社会の中で生きていかなくてはいけない。
人間の世界は魚の世界ほど簡単じゃない。
自分のなりたいものがわからない。失敗しか出来ず、大切に思った人もどこかに行ってしまう。
子どもの頃になりたかったものとなれるものの間に折り合いをつけることを「大人になる」というのなら、今までにないものになるにはたくさんの失敗をしなくてはいけない。

助けてくれる人がいる、ということは、過去の自分が今の自分を助けてくれている、と言うことだと思う。

子どもの頃になりたかったものになるには、大人になっても自分が変わってはいけない。

『xxxHOLiC』。

2022-05-15 10:11:39 | 映画日記
『xxxHOLiC(ホリック)』を観てきた。

自分が犠牲になることは、自分を大切に思ってくれている誰かを傷つけること。
放り出しただけの自己犠牲は対価にならない。
対価は多すぎても少なすぎてもいけない。そしてそれは世界すべての中でのやりとりであって、一対一の価値のやりとりとは違う。人と人の縁とすべての出来事が必然の中で、対価のやりとりはとてもむずかしい。

CLAMPの描く世界とは違う世界の『xxxHOLiC』と観るべきかと。
女郎蜘蛛が物凄い悪になっちゃってるのがちょっと悲しい…。小物感が…。
女郎蜘蛛はミセと均衡を保つ存在でいてほしかった。

座敷童が最高!かわいい!!


【セクシー動作指導】っていうスタッフがいる作品があるんやと思った。

『シン・ウルトラマン』。

2022-05-14 07:22:11 | 映画日記
『シン・ウルトラマン』を観てきた。
バックグラウンドとしては『シン・ゴジラ』のアフターストーリーって事なんかな?
でも、その辺はあんまり気にしなくても良いと思う。

とにかく、巨大怪獣が頻繁に訪れるようになった世界で、原因は外星人と呼称される宇宙人たちによる侵略の一環、ということで良いと思う。
外星人たちから見れば、バカみたいな駆け引きであろう人間の政治の中で、人間は生きていこうとする。秩序を捨ててしまえば、それは侵略されてしまったのと大して変わらないのかもしれないね。

外星人の中では、他者への信頼というのは弱者のすることなんだろうか?力を持てば、他者という不確実なものに頼る必要はないだろう。
人間と融合したウルトラマンは膨大な量の本を猛烈な勢いで読んでいく。彼は何を知ろうとしていたんだろうか?人間に比べて圧倒的に知能がある彼に、人間から何を学ぶことがあったのだろうか?

世界は偉人たちの水準で動くわけにはいかない。
いかなる天才も数万の凡人がいなければ何もできない。

圧倒的な力を持つウルトラマンでも勝てない者はいる。
答えを出すのは弱きゆえに群れる人間の集約した力。思い思いの考えはあれど、人間を直列にあるいは並列につなぎ合わせれば、ウルトラマンに比肩してあまりある力が出せる。

それでも、僕は思う。
ウルトラマン。
君はなぜ、そこまで人間を信じることが出来るんだ?
君は人間を守ってくれても、君を守ることは一度もできなかった。
君に最後まで頼るしかなかった。それなのに、君は最後まで人間を信じてくれた。
人間は人間をどうやって信じればいいんだ?
どうやったら、そんなに人間を好きになれるんだ?
教えてくれないか、ウルトラマン。

『Ribbon』

2022-02-27 21:28:03 | 映画日記
『Ribbon』を観てきた。
コロナ禍の美大生の姿と心を描く。

リボンは、一本一本はとても軽く華やかに場を彩るものだ。
服飾やプレゼントの包装。しばった髪のアクセント。
でも、リボンは縛り括るものでもある。
コロナ禍のなかで、世界は小さなルールが増えて、しかもそれが変化して、何となくの雰囲気でルールが捻じ曲げられて解釈されてそれが当然の顔をして跋扈している。そこに冷静さはなく、過剰なまでの正しいが積もり積もってすごい重圧になっている。
一つ一つは軽いルールだ。
外出するときはマスクをしましょう。
店内に入る前は熱を測って、手を消毒しましょう。
ソーシャルディスタンスを確保。列に並ぶときは1メートル以上開けましょう。
一時間に一度は換気をしましょう。
一つ一つは軽い。まるでリボンのように。でもそれが集まって自分を縛ってその重さに潰されてしまう人もいる。

当たり前だけれど重要なことがどんどん削られていった。
美大の卒業展示が中止に。
部活の大会が中止に。いわゆる特待生枠を狙っていた学生達はその道を絶たれた。
卒業式が中止に。義務教育の締めくくりである、9年間の総決算の最後を飾れなかった。
第一波と言われるコロナに対する緊急事態宣言は、今考えれば恐ろしいぐらいに冷徹だった。
今までの努力を全て壊してしまった。
アッと言う間に芸術はゴミになってしまった。
いや、自分がゴミにしてしまったのだ。
でも、それはゴミじゃない。新しい希望の塊なのだ。
誰かにとっては飾り方がわからないぐらいのカッコいい作品なのだ。

破壊と再生。今の世界は狭い空間の中でもがく胎動なのかも知れない。
RibbonはReBornだ。