期間限定の独り言

復興の道のりはつづく。

心が折れました

2011-01-28 17:14:21 | 日記
 折れた心はまたつなげばよいようなものであるが、今回ばかりはポッキリ行ったかなあという感じである。久しぶりに死にたくなった。どうやらこの世に私の安心して居られる場所はどこにもないらしいと思う。学校においては常に非常勤であるし、大学へ行けば社会人の外様から入ったよそ者であるし、ついでに言えば机はいつも隣のお嬢さんの物置にされているし、家は家で親はいつまでも生きているわけじゃないし、いずれこの地上に私の生きていられる場所はどこにもなくなるんじゃないかと思う。人はこうして消滅に誘われていくのであろうか。
 しかしこうしてみると本当に、世間の人は、あるいは今まで普段の自分もそうであるけれども、どうしてこうここが自分の居場所であると安心して暮らしていられるんだろうと不思議に思わざるを得ない。考えてみればすべて根拠のない異安心というものだろう。唯仏是真、世間虚仮、である。
 とりあえず今日は院試というものが終わって、結果はどうあれ後は野となれというもので、よほど一安心するかと思っていたが、ため息と愚痴しか出てこない。筆記の方はとにかく書くだけは書いたが、午後の面接がいけない。他人は知らず私の場合は、専門の学力についてであるよりも、生き方の根本的な姿勢みたいなところに教官の質問が集中し、今までの人間としての生き方が間違っているんじゃないかというような懐疑に陥るのである。たぶんその通りなのだけれど。
 要するに博士というものは、単に文学が好きみたいな一般人は来てはいけない処で、選ばれた一握りのエリートが行う神聖な営みなんであろう。それなら最初からそう言ってもらいたいと思う。私は社会人修士として入ったが、最近大学というものは、社会人教育に力を入れますみたいな話をしているが、たとえそこでその人なりに学問に目覚めたとしても、その先は無いのである。この三年間私は何をした事になるのか。すべては全くの無駄、徒労だったのか。とはさすがに思わない。ここでの勉強がなければ、曲がりなりにも和歌を読むということは全くできなかっただろう。一つのスキルが身に付いたことは間違いなく、それはひそかに誇りとするところでもある。
 しかし先日も教授Aの所に進学の話をつけに行った時にも感じたことだが、要するに私みたいなものは来るなということなのねと試問を受けていて悲しくなった。そんなつもりはないというかも知れないけれど、作者の意図というものは読者によって作られる。誤読はつきものである。
 現実問題として私には、教授らの言う通りにしなければならないとすれば、ドクターはやはり到底つとまらない。全国で開かれる学会に参加しなくてはドクターの資格が無いみたいで、これ一つとっても、勤労学生にそんな旅費が出るわけがない。私の体力からすれば、平生の研究活動のためにも仕事は減らさなくてはならないが、毎度言うように仕事を減らせば学費が出ない。
 要するにすべては不可能、なのである。取ってつけたように頑張れと言われても頑張れない。合格発表は先の話だが、進学を認めてくれた両親はじめ各方面には申し訳ないけれどもバックレるしかないんじゃないかと思う。教官らもひそかにそれを望んでいるのではないかと思うが、単に私が悪うございましたと謝れば済む話である。
 加えて非常に落胆したのが、口述試問が終わってから、教授Bに呼ばれて、先日の論文について完膚なきまでに駄目出しされた。要するに学術論文としてはこのままでは存在が許されないということである。だから無理だと言ったのである。正月休みの十日くらいで書けるものではないと私も思っていた。院生の同人誌のようなものだから、それほど厳しい指導は入らないという話であったけれども、アドバイスを求めれば当然こういうことになるのである。
 しかし私は思うのだけれど、学生を指導する際に、教官たちは当然のごとく自分らのレベルに合わせてものを言うけれど、それってどうなのか非常に疑問である。私も学校では生徒を教える立場だが、もし生徒の作文を私自身のレベルで裁断したら、学校の偏差値の水準もあるが、突っ込み所は満載である。しかしそれをそのまま生徒に投げ返したとしたら、彼らはたぶん何も書けなくなるであろう。
 だから私は書けたということだけを取り上げて、どんなに不完全であっても、とにかく素晴らしいことだと言い聞かせ褒めたたえる。用語とか何とか、そんなのは二の次である。すると次を書く意欲も生まれ、そのようにして書いているうちに上達もするのである。
 高校の生徒と大学院の学生はちがう、という意見もあるであろうが、教育という点では私は本質的に同じではないかと思う。大学の文学部なる場所が沈滞して、どんどん閉鎖されていくというのは、つまり教官たちが自分らを基準にして教育を行っているからで、縮小再生産の過程に入っていると言わざるを得ない。こういう場所で新しいものが生まれるはずはない。
 まあ私のようなへなちょこが居たからといって発展するわけもないので、老兵は消えゆくのみである。来週からまた働く。

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