逝きし世の面影

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アポロ11号月面着陸捏造疑惑とケネディ大統領

2008年07月19日 | アポロ11号・宇宙開発
2006年6月、反米強硬発言で有名なアフマデネジャド大統領のイラン国営テレビは、ニュース報道の中でアポロ11号の映像を流して、「多くの科学者は、ハリウッドが製作したとの見方を示している」「人類初の月面着陸の映像はハリウッド映画だった」と断言した。
アメリカとの関係が一触即発、極度に悪化しているイランとは言え、一国の国営放送がこのような発言をするのは極めて異例な事柄である。

日本では極めて支持者は少ないが、そもそも捏造疑惑はイラン特有の現象ではなく、「月面着陸捏造説」は世界中の多くの人々に広まっており、アメリカ国内でも全米市民の中で20%の人たちに支持され、反米感情の強い中東地域では国民の半数以上が支持している国も少なくない。

最初、NASAはアポロ11号月面着陸捏造疑惑に対して、「捏造」を一切否定し、なにも反論せず完全無視を貫いてきたが、近年の高まる一方の「捏造疑惑熱」に対して、反論を試みる姿勢に転換しようとしていた。

ところが、なんと!とんでもない大失態が発覚する。

2006年8月、アポロ11号の全ミッションを記録した映像を含むオリジナル磁気データー700箱分が、なんとすべて行方不明になっていることが明らかになってしまう。
この中には、月面上で活動する宇宙飛行士たちの映像や音声、宇宙船やクルーの身体状態などの記録されており、言ってみれば、アポロ11号の月面着陸を立証する「直接証拠」の殆どすべてである。

NASAは「おそらくゴダート宇宙飛行センターか、他のファイル保管所にあると思うが、まだ見つかっていない」
「紛失したとは考えておらず、今後も探し続ける」としているが、
「コピーデーターは存在するが劣化が進んでおり、原本の方が良質である」ともコメントしている。

元々アポロの『映像』は、鮮明に写っているカラーの静止画の存在と、それとは対照的に不可解な、(アメリカ国内では第二次世界大戦当時でもカラー映像が主流だった)、何故か動画はピンボケの『白黒映像』でテレビでやっと確認できる程度の鮮明さしかなかった。
最新鋭の技術を使ったはずのアポロ計画で、何故カラーではなく、まったく時代遅れの『白黒』のピンボケ映写機械を使ったのか、?の理由は今もって不明。
しかも今後は、NASAは「直接証拠を出せ」と言われても(今までのピンボケ映像以上に)「劣化したコピーしかない」と回答せざるおえない状態になったしまったわけです。

アポロ月着陸には、「ヤラセ」説で物議を醸している。おそらくヤラセ支持派は、これを「意図的な証拠隠滅」と捉えるのであろう。

この問題は、科学的な検証と、政治的な検証を分けて考えるべきだろう。
まず科学的な検証だが、当時アメリカとソ連は激しい宇宙開発競争を繰り広げていた。ソ連も高度な宇宙観測技術を有していた訳で、アポロが完全なヤラセであったなら、ソ連が指摘して当然である。
それが無いのは、少なくともアポロ宇宙船が打ち上げられて月まで到達したのは間違いないと見て良いだろう。

次に政治的な検証をしてみる。有人宇宙飛行でソ連に遅れを取った米国は、ケネディ大統領が「1960年代中に、月へ人間を送る」と宣言してアポロ計画が始まった。
アポロ11号の月面着陸は1969年7月20日。1960年代というタイム・リミットぎりぎりであった。アポロ11号の月面着陸は、米国の威信を保つギリギリの期限で達成された。

では、米国は何故、威信を保つ必要があったか?

それはベトナム戦争であろう。長期化・泥沼化するベトナム戦争によって、米国内では厭戦観が広まっていった。なかなか勝利を収められない米国軍に不満も鬱積していった。
そんな国民を高揚させ、政権が人心を掌握するためには、なんとしてもアポロ月着陸を成功させる必要があった。

アポロ計画は、アメリカの威信と自尊心をかけた挑戦だった。
当時は冷戦の真っ只中で、米ソ両国は宇宙開発競争でも激しくしのぎを削っていた。1957年ソ連が世界初の人工衛星打ち上げにに成功。
翌年にNASA(アメリカ航空宇宙局)を発足させて遅れを取り戻そうとしたが、1961年にまたもソ連に人類初の有人宇宙飛行を成功されてしまう。

この年、史上最年少で大統領に就任したジョン・F・ケネディは、アメリカの威信回復を政策の中心に置いていた。
同年5月、世界中の人々を震撼させる演説を行う。
「私は、10年以内に人間を月に着陸させ、無事地球に帰還させることを目標にすべきだと考えている」

この瞬間、『有人宇宙船を月周回軌道に乗せる』ことだったアポロ計画は、『1960年代中に月面着陸』に劇的に変更されてしまった。

この演説に一番驚いたのは、他ならぬNASAの技術者達だったと言われている。

〔後編に続く〕

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