逝きし世の面影

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スーパーノートは北朝鮮製ではなくアメリカの自作自演の可能性が濃厚。

2008年02月04日 | 東アジア共同体
05年9月にアメリカ国務省が進めていた6カ国共同声明が採択された直後にアメリカの財務省がスーパーノートを北朝鮮のせいにして経済制裁を実施、せっかくの合意をぶち壊した。
しかし同年12月18日から六カ国協議が北京で開催され、それがきっかで19日に米朝間でバンコ・デルタ・アジア(BDA)問題での実務協議がもたれた。
北朝鮮は凍結解除を求め、米国は『偽ドル札・スーパーノート製造関係者の処罰と偽造ドルの銅板廃棄などの措置』を求めたとある。
06年の六カ国協議はその後具体的成果もなく休会するが、 07年初めに突然、北朝鮮がズット求めていたがアメリカが一貫して拒否していた米朝会談がベルリンでの開かれ、続いて6カ国協議開催から妥結に向かう。
「6カ国協議」が8日から始まると、米、朝がドイツで事前交渉したこともあって、一気に「合意」する。これも、すべて米国が北朝鮮に譲歩したためだ。

『フランクフルター・アルゲマイネ』1月8日付け記事によると。

偽造紙幣問題に詳しいクラウス・W・ベンダー記者が『偽造ドル紙幣の秘密』と題して報じた。
ドイツ紙のフランクフルター・アルゲマイネ紙は、中道右派の権威ある新聞。
ベンダー記者は、『スーパーノート』と呼ばれる偽ドルがいかに精巧か、米国以外が作ることが困難かを詳細に説き、『北朝鮮は偽ドルを作製する技術がない』『偽ドルは東アジアではなく、中東、東アフリカ、ロシアから流入している』と指摘。
『偽造紙幣捜査官たちは、CIAが秘密印刷所で何を印刷しているのか問い続けてきた』『ワシントン北部に位置する有名な都市の施設には「スーパーノート」の印刷に必要な機械がある』『CIAは秘密工作のための財源を偽ドルでまかなってきた可能性がある』『偽ドル作りを北朝鮮になすりつけることもできる』と記している。
CIAが中東などの親米組織を支援するために偽ドルを与え、その親米組織が北朝鮮から武器を購入する時に偽ドルを使った可能性があるというわけだ。
仮に、この事実を北朝鮮が掴み、米国に問いただしたとしたら、米国が突然、北朝鮮に譲歩したこともつじつまが合う。

世界情勢に詳しい元外交官の原田武夫氏が言う。
『そもそも、極貧の北朝鮮に米国が驚愕するような偽札を作る能力はないでしょう。そんな技術があれば麻薬を輸出する必要がない。世界中の紙幣はドイツ製の印刷機で印刷されているだけに、ドイツは偽ドルに通じている。ベンダー記者は著書でも偽ドルについて詳しく書いています』
偽ドルはCIAが発行した『軍票』だったという説もある。
もし、米国が偽ドルを作っていたとしたら、日本政府はどう対応するのか。
94年クリントンの時の米朝枠組み合意では50万トンが今回は100万トンに増額される。
 
■インターポールの対策会議

まず問題の偽百ドル紙幣であるが、1989年マニラの銀行ではじめて登場する。
精巧にできたもので専門家が視覚・触覚だけでは本物と区別ができないことから、『スーパーノート』とか『スーパーダラー』とかよばれる。
本物の百ドル紙幣は1996年以来が何度か変更されたのに、スーパーノート偽造者はどの変化も直ちに取り入れる。
ベンダー記者が挙げる例であるが、百ドル紙幣のフランクリンの肖像には肉眼で見えない0,6ミクロンの文字が隠されている。このような小さな変化も無視しない偽造者の几帳面さは驚嘆に値する。
偽造百ドル紙幣・スーパーノートは米国も調べているが、国際社会ではインターポール(国際刑事警察機構)が捜査の中心になっている。
すでに2005年3月に加盟国に対して危険度が最高度のオレンジ警報が発せられた。
今年の7月26日にスーパーノート対策会議がリヨンの本部で開催されて、加盟国代表者やセキュリティ印刷業界関係者など60名が参加した。当日、米シークレットサービスとインターポールの代表者が状況報告をし、その後出席者は個別グループに分かれて議論をかわした。

ベンダー記者の記事によると、参加者のなかから、米国の北朝鮮犯行説に納得できないだけでなく、『米国がこのスーパーノートの背後にいる』とささやく人まであらわれたという。
というのは、米国の挙げる『証拠』は、北朝鮮の外交官がこの偽造紙幣を所持していたとか、あるいは彼らから偽造紙幣を受け取った人が交換しようとしたとか、そのたぐいのものばかりだからである。
あるいは、偽造に関係した亡命者の発言(「自慢話」)をもとにしたレポートで、肝心の物的証拠となると機密保持を理由にして米は話してくれない。
このような話に接すると、ベンダー記者にはイラクに大量破壊兵器があるとした4年前の米国の主張が思い出されるという。
ちなみに、コリン・パウエル前国務長官はイラク侵攻前の安保理事会で亡命者の発言や写真をもとにして大量破壊兵器の存在を証明する演説をしたが、辞任後その演説を『自分の人生最大の汚点』とよんでいる。
米国の主張には『セキュリティ印刷』業界に詳しい専門家の常識に反する点があり、そのためにリヨンに集まった人々は説得されなかったことになる。

 ■印刷機の問題

インターポールのスーパーノートについての説明によると『この偽造紙幣は本物の米国通貨と同じ工程と同じ材料を使って製造されている』とある。
だからこそ、誰もがその精巧さに驚くスーパーノートが生まれることになる。
百ドル紙幣を触ったらわかるように独特の手触りがある。
これは印刷された紙面にインクがわずかながら盛り上がった状態で定着しているからである。こうなるのは、版面に凹部が直接彫られて、この凹部に残ったインクが紙に転写されたからだ。このような印刷ができることが、彫刻凹版(インタリオ)印刷機の特徴である。
本物のドル紙幣はこのタイプの印刷機で、それもスイス・ローザンヌのジオリ社の製品で刷られている。
偽造百ドル紙幣・スーパーノートもジオリ社の彫刻凹版印刷機がないと印刷ができないといわれる。
北朝鮮犯行説を主張する米国も、またその反対者もこの点に関しては対立しないで見解が一致する。

次にこのジオリ社であるが、画期的であった6色の彫刻凹面印刷機を発明したイタリア人ガルティエロ・ジオリが1952年に設立した。
彼の会社は1965年に英のデラルー社の傘下に入り、2001年にドイツのK&B社の子会社になる。
このジオリ社から北朝鮮に1970年代に印刷機が納入されているが、これで偽造百ドル紙幣・スーパーノートを印刷することはできない。
しようとすれば大幅な改造が必要になるが、ジオリ社の協力がないと不可能である。
ところが、北朝鮮は印刷機の代金も払わなかったこともあって、ジオリ社はその後パーツを納めていないのでメンテナンスもされず、現在では印刷機は稼動していない。
北朝鮮は自国紙幣の印刷を隣国に任せているといわれる。
米国は90年代に北朝鮮がひそかにジオリ社の印刷機を購入したと主張する。
この主張に納得しない人が多いのは、ジオリ社の彫刻凹面印刷機をはじめセキュリティ印刷に使われる機械は納入先がすべて登録されていて、転売されるときにもインターポールに連絡されるからである。

次にスーパーノートは80年度後半に出現したので、米国の主張に従うと、現在の偽造者・北朝鮮とは別の偽造者が80年度の終わりごろから90年代のはじめにかけていたことになる。米国は以前イラン、シリア、東独を犯行国と見なしていた。
スーパーノート製造となると、膨大な設備投資とロジスティック整備と技術的専門家の養成が必要である。
存在していない東独は別にして、そのような努力をしたイランやシリアは、なぜスーパーノート製造を放棄したのだろうか。『スーパーノート』市場に北朝鮮が参加してダンピングをしたからだろうか。
米国の話を聞いていると、レストランを開業するように気軽に『スーパーノート製造』をはじめたり、また止めたりすることができるような印象をもつ。
セキュリティ印刷業界の事情を知る人が胡散臭く思うのもこの点である。

 ■インクと紙

本物の紙幣にもまた偽造紙幣にも『同じ材料』が用いられている。
本物のドル紙幣のセキュリティ・インクを供給しているのはスイスのシックパ社である。
この会社は以前北朝鮮にも紙幣印刷用のインクを納めていたが、もかなり前に北朝鮮に対して納入を停止した。

次に実験室の化学的検査から、(光の角度で変色する高価な特殊インクを含めて)スーパーノートに用いられているインクと本物の百ドル紙幣のインクがまったく同一であることが判明している。
ということは、本物のドル紙幣製造のために納入されるインクがスイスか米国で配合された後、その一部がスーパーノート製造に流用されていることになる。
それなら盗んだインクをスイスもしくは米国から北朝鮮のドル偽造工場まで運ばなければいけないが、これはリスクが高すぎるのではないのか。
ベンダー記者によると、シックパ社は紙幣のインクから出荷時のバッチ番号までさかのぼることができるが、(あたりまえのことだが、)スーパーノートに関して尋ねられてもこたえてくれないそうだ。
スーパーノートの紙は、本物と同じように木綿75%・亜麻25%の比率でフォードリニア・マシン(長網抄紙機)で製造さている。
その木綿もアジア産でなく、本物と同じように米南部で栽培されたものが用いられている。
透かしも入っていて、更に『US100』の文字が入ったポリエステルの糸が漉き込まれている点でも、スーパーノートと本物の百ドル紙幣に差異が見つけられないといわれる。 

 ■流通について

ベンダー記者は、スーパーノートがアジアにたくさん見つかるとか、アジアから来る、とかいう説に賛成しない。
というのは、スイスやドイツの銀行でも大量に見つかり、それら出所を遡っていくと、政治的に不安定な中東やアフリカに到着し、アジアに由来するものは例外に近いからである。
また欧州の銀行では、『断食でなく消費の月』と今やいわれるラマダンにスーパーノートがたくさん見つかることも確認されている。
スーパーノートのこのような流布をどのように考えたらよいのだろうか。
政治的不安定地域から来ることは、そこでの地下工作資金がスーパーノートで支払っているからではないのか。
こうして偽ドルを受け取った人たちが武器を購入し、それで支払う。
この結果スーパーノートが武器輸出国の中国や北朝鮮へ流れて来て、アジアで流通しているのではないのか。
昔東ベルリンでスーパーノートが大量に見つかったことがある。これは、東独が武器売却の代金として得たものであった。
1月10日の朝鮮日報によると、米国務省のデービッド・アッシャー前北朝鮮作業班調整官はベンダー記者の記事について『CIAが米ドル札を偽造していたのなら、それは自国に対する戦争行為に該当するが、そんなことは想像すらできないし、それをする理由もない』と反論している。
確かに敵国通貨を偽造してその経済を破壊するのは『戦争行為』である。
また自国に対して誰もそのような行為に及ばない。
でもインターポールによると、出現した1989年から現在までに見つかったスーパーノートは5千万ドルにすぎない。一年平均でいうとこれは300万ドル足らずで、いっぽう一年間で回収される普通の偽造ドルが2億ドルを超すことが少ないといわれる。とすると、スーパーノートは持続的であっても、細々と流通する偽造紙幣ということになる。
このような遠慮勝ちな流通量では『敵国経済』にあたえる被害もゼロに等しい。
すでに述べたが、このような完璧な偽造には膨大な設備投資が必要になるが、この投資がこの程度の流通量で回収できるかどうかも怪しい。
偽造者は、これほど完璧な技術をもち、またすべての材料を、それも最新の紙幣に使われた赤外線反応インクまで入手することができる。
ところが、ベンダー記者によると、スーパーノートは、赤外線反応インクの処理が不注意であったり、また本物の紙幣にある磁気的特徴が欠けていたりするために、米国内の紙幣識別器にはあっさり見やぶられてしまうそうである。
とすると、そんな紙幣識別器と無縁なアフガニスタンやソマリアなどの政治的不安定地域で流通させることが意図されていないだろうか。

自国納税者の負担にならないように自前の地下工作資金をつくることが目的であったり、また国内で流通しにくいように仕掛けがしてあったりするのは、スーパーノートの製造が『愛国的行為』であることをしめし、国務省元役人が心配するような『自国に対する戦争行為』ではない。
ジオリ社の彫刻凹面印刷機はCIAにも納められている。
そこで何が印刷されているかに好奇心に駆られる人があらわれても不思議ではないかもしれない。

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3 コメント

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華氏451度さん、ありがとうございいます (ブログ主)
2008-02-05 11:36:22
なにぶんにもブログ初心者ですので、技術的な問題や、ブログの運営方法などに良く解らないところが色々あり御助言、御指導などを、お願いいたします。
Unknown (華氏451度)
2008-02-05 07:18:39
解説→開設、ですね。すみません。
Unknown (華氏451度)
2008-02-05 07:16:54
おはようございます。ブログを始められたのですね。ここ2週間ばかりまともにパソコンに向かっていなかったので、ブログ解説のお知らせを読んだばかりです。記事をゆっくり読ませていただきます。ご挨拶が遅れましたが、これからもよろしくお願いします。

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