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正しすぎる赤木智弘

2009年06月22日 | 経済学

一部で非難を受けているらしい赤木氏のコラムを読んでみた。内容は非常に的を射ている。とりあえず、livedoorニュースより。

難病のために生活保護を受けていた北九州市の夫婦が、通院や買い物など、日常生活のために軽自動車を使っていたことから、生活保護を打ち切られていた問題で、5月29日に福岡地裁は「処分は違法」として生活保護停止処分の取り消しを求めた。(*1)

また、北九州市か!
一昨年の7月に52歳の男性が生活保護を取り消され、日記に「おにぎりを食べたい」と書き残して餓死した事件がおきたのも、北九州市である。
事件はマスコミで広く取り上げられ、大きな批判を受けて、少しは反省したかと思ったら、まだこんな弱いものイジメ、いや、むしろ殺人ごっことでも言われるべき馬鹿げた行為を続けているようだ。

私は、生活保護制度の大幅な拡充を求めている。
生活保護が憲法25条に記された「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保証するものである以上、多くの人が所有している物の所有を否定する、「車を所有しちゃダメ」「エアコンもダメ」のような規制は、憲法違反である。
「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」というのは、自分の考えで言えば、1人頭6畳程度の専有面積を持つ家に住み、電気ガス水道は当然として、エアコンや自動車等の、これまで生活保護行政で問題にされてきた物ももちろん認められるべきである。また、携帯電話やインターネットの利用も、それがこれだけ多くの国民に利用されている以上、認める必要がある。そうそう、国の勝手な都合でアナログ停波が決定したので、地デジ対応TVも「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」の範疇でいいだろう。
まぁ、予算の都合はともかく、原則的にはそのくらいの内容となって始めて、先進国にふさわしいセーフティーネットとして誇れる制度になるのではないかと、私は考えている。

そういうことをいうと「生活保護に頼って生活して、働かない人間が出てくる」という意見がでてくる。しかし、私は「働かない人間がいる」ことが、日本にとって問題だとは思わない。むしろ「働かないほうがマシな人間を、働かせないことができる」という効用に期待する。
多分、あなたの周りにも「仕事もろくすっぽ出来ないくせに、威張っている」ような人間がいるだろう。それが上司だとして、そんな人間のせいで、あなたの仕事が進まないとしたらどうだろうか?
世の中には残念ながら、経済的な生産能力がマイナスの人間というのがいる。しかし、仕事をしなければ生活できない日本社会においては、そうした人間に対しても必ず仕事を与えなければならないし、賃金が支払われなければならない。社会は踏んだり蹴ったりである。
ならば、そうした人間を仕事の場に出してマイナスを発生させ続けるよりは、家で酒でも飲んで寝ててもらった方がマシだとは考えられないだろうか?
働くべきではない人間が働かないことによって、社会全体の生産性が上がる。私はそういう形での社会貢献もあると考えている。

そして、そうした考え方を実践できるだけの、充実した生活保護制度ができたとすれば、最初に働かないでもらうのは、この馬鹿馬鹿しくも残酷な行為を行った、北九州市の福祉課の人間達である。
彼らは生活保護のなんたるかをまともに理解できる能力がないのにもかかわらず仕事をしていたために、さまざまな悲劇を産み出した。
彼らが働かなければ、52歳の男性は餓死せずにすんだかもしれないし、今回の老夫婦イジメもなかったかもしれない。
彼らの現在の給料よりも、月25万ぐらいの生活保護費の方が安いだろう。経費を減らして、なおかつ北九州市民の安全を守る、とってもいいアイデアだと思うのだが、どうだろうか?

内容ははっきり言って経済原理の本質を突いたものであるとしか言いようがない。世の中には優秀な人間がやらないと経済にダメージを与えてしまう仕事がある。例えば、経営者などが典型だろう。そのような仕事を無能な人間にやらせてしまうと結果として社会の生産性が下がってしまう。

この話をより一般的に考えるとすると生産性に対する賃金という視点から考えるのが妥当だろう。英語ではoverpayやunderpayといった表現がスポーツの世界でよく使われるが、個人成績に比べて年俸が高すぎたり、安すぎたりすることだ。同じようなことは普通の企業でも普通に起こっている。上げている成果に比べて賃金が高ければその人は会社からお金を奪い取っているのであり、成果に比べて賃金が安ければ搾取されていると言える。そして、現在の日本の抱える非常に大きな問題は中高年正社員が成果に比べて賃金が高すぎ、それが他の人の生活水準を下げていると言うことだ。

このような成果と賃金の関係を理解できず、きっと地位の高い人は優秀に違いないと考えている人は赤木氏を非難するのだろう。また、これは生活保護に関する上のような事件が起こる原因でもある。成果を賃金という視点で考えれられず、地位が能力を伴っているはずだと考えるために、平等なら同じように正社員を保護しましょうとなり、自由競争だと自己責任で失業者を苦しめないといけないとなる。高賃金を貰っている者は賃金に相応しい成果を上げているはずだという空想の世界でしか考えられないから、自分に都合のいい同じ二つの考えしか考えることが出来ない。

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2 コメント

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ホリエモンも同じようなこと言ってますね。 (松本孝行)
2009-06-22 12:03:03
ベンチャー経営者的視点も持ってるんですね、赤木さんは。堀江さんも同じようなこと言っていましたよ。30万円の投資(=給与を支払うこと)をして20万円のリターンしか生み出せない従業員もいる、と。それじゃマイナスなんだからベーシックインカムはアリだろう、と言う感じですね。

イギリスの生活保護にはティー代というのがあるらしいですね。イギリス人は紅茶を飲むので、それは生活保護の中に入れるべきとされているようです。
日本もそうやって生活保護に必要なものは何か、一度議論してもらいたいですね。おそらく、テレビやクーラーヘタしたら車までOKになるでしょうね。生活保護の基準を一般正社員(年収500万円弱)にするか、一般非正規社員(年収200万円前後)にするか、議論したら面白いかもしれません。
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Unknown (管理人(車輪工場))
2009-06-23 23:27:43
堀江さんの場合は少し違うのではないでしょうか。経営者でもあるので自分が本来効率のよい仕事のやり方や優れた経営判断をする必要があるのに、その責任を無視して労働者が低賃金でひたすら働くことを期待しているのではないでしょうか。ここでの議論での問題は高賃金労働者の中に成果を上げていない人がいて、それが全体の負担になっていると言うことです。

いつも、コメントありがとうございます。
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