スウェーデンの今の記事から、スウェーデンにおいて労使が労働時間の一時的な短縮とその分の給料カットで合意したというニュースだ。
製造業のブルーカラー従業員を組織する労働組合Metall(メタル)が、思い切った行動に出た。一時的な自宅待機と給与(月給)の切り下げに関して、製造業の業界団体と合意に至ったのだ。
合意の内容はこうだ。減産のために勤務時間が短縮され、従業員が自宅待機となった場合、勤務時間の減少幅に応じて、最大20%の給与カットを認める、というものだ。・・・これまで労働組合は、給与のカットは絶対に認められない、と拒んできた。いくら減産となり、勤務時間が短くなっても、それに応じた給与カットを認めてしまっては、従業員の生活に大きな支障が出るからだ。労働組合の主張としては、企業側は好景気の時に多くの利潤を蓄えてきたのだから、逆に不景気の間は従業員の生活を責任を持って保護して欲しい、ということだった。企業側にとっては、勤務時間を短縮しても、これまでと同じ給与を払わなければならず、時間給は実質的に上昇する結果となってしまう。
この結果、どうなるかというと、企業の側は(1) 不況のときも従業員を解雇せず、それまでと同額の給与を払い続けるか、(2) 解雇するかという二者択一を迫られることになる。
以前伝えたように、同じVolvoの工場でも、ベルギーの工場では解雇がこれまでほとんどなかったのに対し、スウェーデンでは昨秋から相次いできた。その主な原因は、ベルギーでは企業が従業員を一時待機とした期間の給与を国(もしくは何らかの基金)が肩代わりしてくれるためだった。従業員にとっては、フルタイムの給与が支払われる上、雇用が維持されることになるし、企業としても貴重な労働者を手放す必要がなく、景気がいざ上向きになったときに、すぐに増産体制に移ることが可能になる。・・・スウェーデンの企業としても、(2)の解雇という選択肢は、できれば避けたい。せっかく社内で培ってきた技能を一度手放してしまえば、それを新たに手に入れるためには膨大な費用がかかる。でも、減産による自宅待機の期間中の給料まで払わなければならない(1)の選択肢を選ぶのも避けたい。下手をすれば企業自身が倒れてしまう。だから、給与カットという提案は企業のほうから出されていた。
そして今回、製造業のブルーカラーを組織する労働組合がそれを飲むことにしたのだった。労働組合としても苦渋の決断だが、解雇よりはまだマシ、という判断に至ったのだ。一方、企業側にはカット幅が最大でも20%までしか認められていないが、それでも全額の給与を払うよりはマシ。そして、双方が妥協したのだった。
解雇と完全な雇用条件保障との中間的な妥協だ。多くの国が雇用問題を抱えているが、その原因の一つとしてこのような中間的な制度が強すぎる保護と弱すぎる保護によって難しいというのがある。日本においては、高給の正社員が待遇を完全に保障されると同時に、派遣社員が何の保護もなく放り出されるということが起こっている。社会全体として、痛みを分かち合うためには上のような中間的な仕組みを機能するようにしていく必要があるだろう。