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累進課税がやる気を殺ぐという主張の虚構

2009年02月20日 | 経済一般

平等や所得再分配のために累進課税の話をしていると決まって、そのような政策は優秀な人のやる気を殺ぐ、能力や努力を報いようとしない制度でありそのようなことをしたら経済の活力が失われると言い出す人が決まって出てくる。このような主張は、19世紀から延々と言い続けられてきたことであり、今でも多くの信奉者を持っている。しかしながら、累進課税によって明確に経済が停滞したり、経済が発展したというような証拠は私はないように感じる。実際、日本は累進課税を緩和する過程でどんどんと経済が衰退してきた。

このような状況の背景には、累進課税によるやる気の減退の影響が限定的だというのがある。同時に累進課税にはプラスの側面があるために合計したときに本当に負の側面が上回るのかどうかという問題がある。累進課税においては高所得者からより多くの税金を得ることが出来るために、国民全体に対して使うことのできる予算が多くなるというプラスの面がある。同時に、累進課税によって高所得者の労働意欲に悪影響を与えるかも知れないというマイナスもある。しかしここで重要なのは、本当に優秀な人材の意欲を殺ぐ危険性があると同時に、もしその人材が能力ではなく競争の不足から来る不平等によって高所得を得ている場合には累進課税によって市場の失敗という問題が間接的に緩和されるという面もあると言うことだ。つまり、優秀な人材のやる気を殺ぐというマイナスの効果もありはするのだが、所得分配の効果や間接的な不公平の是正という効果も持つために、全体で考えた場合に明確に負の効果が上回るとはいえないし、上回ったとしてもよほど極端に累進的でない限り大きく悪影響を与えることはないのではないだろうか。

むしろ問題は、無能な人間や社会に貢献しない仕事をしている人間が多くの所得を得、地道に努力し社会に貢献している者が低い所得しか得られない状態である。この場合には、マイナスの影響しかない。経済に貢献していない仕事が高給を得られる一方他の仕事が低所得であるという状況が人々のインセンティブを歪め、経済の資源分配を悪化させる。同時に、これは社会制度による逆再分配であり、本質的に不公正そのものである。したがって、このような状況においては悪いことしかない。

つまり、累進課税を緩和し優秀な人材の意欲を促進することによって経済を活性化するという政策は負の側面があったとしても正の側面も同時に多く持つために効果を上げる可能性が低い政策であると言わざるを得ない。そのような成功する可能性の低い政策に執着するなら、無能な人間が高給を得、他の人のやる気を殺ぐような明らかに成功することがわかりきっている問題を解決しようとすべきだろう。個人的な利害に基づいて市場主義を勝手に解釈した部分的にしか正しくない政策は一部の金持ちの利害を代表しているだけなのである。

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