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不況の経済学 その1

2009年03月03日 | 経済学

日本もアメリカも、それ以外の国も不況で大変だが、これから数回に分けて不況について考えてみたいと思う。今回は、不況の物的な側面について。不況や好況、景気循環においては人々の未来に対する期待など精神的な側面も関係してはいるが、まず基本になるのは設備などの物的な側面である。これらの設備、組織の営業網、販売網その他の物的な面の利用効率が景気循環の重要な位置を占めている。

企業がサービスを提供したり、製品を生産したりして利益を上げるためには工場を建てたり、販売網を構築したりする必要がある。理想的な世界においては、自由に変更したり解約したり出来るかもしれないが、現実の世界においては長期にわたって計画を立てて、設備を建設したりしていく必要がある。だから、企業においてはそれぞれの瞬間において色々なものが変更しにくい状態になっている。費用区分においては固定なんて言葉が用いられたりする。

その結果、投資したときの予定があたって需要があった場合には設備の稼働率は高いものになるが、そうでないと低いものとなる。これは、個別の企業だけにいえるのではなくて、経済全体についても言える。企業の多くがある方向に投資したときにその方面の需要が足りなかったり、あまりにも多くの企業が投資しすぎると需要が足りず稼働率が低くなってしまう。逆に、思わぬ需要に見舞われると稼働率が高くなることになる。これは好況のときにも言える。

需要が変動したときに、価格が一定ならひたすら生産することが利益をもたらすかも知れないが、大抵は生産しすぎると価格を下げないと売れなくなる。これは、その企業の価格設定が市場全体に影響を与える場合でなくても、それぞれの製品は少しずつ差別化されているし、地理的関係や販売網などの違いによって緩やかに統合されつつ差別化されているからである。

だから、一般に予想より需要が少ないと稼働率を低下させて対応し、需要が多いときには稼働率を上げて対応することになる。しかし、予想はよく外れるものなので投資が多すぎて無駄になったりすることになる。そして、社会全体でそのような社会的な投資の無駄が多い状態は、社会全体の生産力を低下させるので不況と呼ばれるものが起こることになる。つまり、不況というのは資源の分配が上手くいっていない状態とも言える。

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