MLBのオーナーの一部がサラリーキャップの導入を希望しているようだ。鈴木友也氏のブログにも記事が出ているが、いろいろと課題があるようだ。このような声が一部のオーナーから出たのには、「この不況にも関わらず既にヤンキースが5億ドル(約450億円)を超える大型補強を行っている」のが非常に大きな影響を与えているのだろう。あまりにも、ヤンキースとそれ以外との財力の差が大きく、戦力差に対する危惧が出てくるのは当然だろう。
しかし、選手会としてはサラリーキャップの導入には、オーナー側が財務内容を公開することを要求するだろう。完全に利益等すべてを公開する必要はないとしても、MLBの財務内容は、周辺ビジネスへの利益移転(一番大きいのは提携関係にある地元放送局やケーブル会社)によって大きく粉飾されているので、まずそれを公開しないと前には進まないだろう。
サラリーキャップ自体は、サラリーフロアやレベニューシェアリングと合わせれば、必ずしも年俸を抑制する制度ではないので(「サラリーキャップは年俸を抑える?」と「サラリーキャップが年俸抑制政策ではない理由」参照)、選手会としても合意できない内容ではない。しかし、高収入クラブはレベニューシェアリングに反対するだろうし、低収入ながら低コストで利益優先で運営されている球団はサラリーフロアによる利益の減少を嫌うだろう。かといって、サラリーキャップだけを導入することは選手会にとってあまりにも不利な内容なので合意を取り付けることは難しいだろう。
サラリーキャップ、サラリーフロア、レベニューシェアリングの三つが上手く組み合わせて導入されれば、リーグとしては大きな恩恵を得ることになるだろう。その恩恵を最も得るのは、選手全体か中規模の球団かと思われる。しかし、選手会が恩恵を受けるかどうかは、合意内容に大きく左右されるのでコミッショナーのリーダーシップが必要なのではないだろうか。後一つ、選手会を牛耳る一部高年俸選手がリーグや選手全体の利益を無視して、高収入クラブが高年俸を出せるようにすることを優先するのはいい加減やめてもらいたいものだ。