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サラリーキャップが年俸抑制政策でない理由

2009年01月12日 | スポーツビジネス

この前の記事の続きです。

リーグ全体の収入に占めるMLB選手の取り分が52パーセントである一方、NHL選手は56,7パーセント、NBA選手は57パーセント、NFL選手は59パーセントに上ったことを紹介した。サラリーキャップが年俸を抑制すると考えるとハードキャップ(絶対に一定額以上選手のサラリーに支出することが禁止されていること)のNFLが一番取り分が多いのは不可思議だ。

このようなことが起こったのは、サラリーキャップがあったとしても他の制度との兼ね合いで必ずしもサラリー全体が抑制されるとは限らないという事実がある。まず、サラリーキャップ制度に関係するものとして、サラリーフロアとレベニューシェアリングがある。レベニューシェアリングは球団間でリーグ全体の収入を共有し、平等に配分しようとする制度だ。これがあると、地方の球団でも大都市の球団の入場料収入から配分があったり、放送権料が同じように配分されたりするので、その分収入が増え予算の不均衡が抑えられる。サラリーフロアというのは、各球団は必ず最低限これだけは選手の年俸に支出しなければならないというリーグと選手会との合意に基づく制度だ。これがあると、どの球団も一定額支出しなければならないので一部の球団が年俸を極端に抑えて利益を上げることを阻止できるために、選手の分け前が増えることになる。

サラリーキャップ、サラリーフロア、レベニューシェアリングがともに採用されていると、サラリーキャップがあったとしても必ずしも選手の給与が抑制されるとは限らなくなる。レベニューシェアリングがあると、弱小球団でも収入が得られるので選手に多くのお金を出すことが出来るようになる。また、サラリーフロアがあるから最低限いくらかは出さないとけない。気づいた人もいるかもしれないが、レベニューシェアリングとサラリーフロアは関係している。レベニューシェアリングがないと、サラリーフロアは実行できないし、サラリーフロアなしでレベニューシェアリングするとただ乗りして、選手の年俸に支出せずに利益として計上する球団が出てくるかもしれない。だから、この三つは、三つ合わせて戦力均衡を実現しつつ、選手が一方的に不利にならない制度に出来上がっている。

この三つの制度が上手く機能すると、収入の多い球団の総年俸をサラリーキャップによって抑えつつ、それをレベニューシェアリングによって貧しい球団に振り分け、サラリーフロアによって選手年俸に使わせる。結果として、選手の取り分は同じようなものかもしれないが、戦力均衡は実現されリーグは繁栄することになる。非常に上手い制度だといっていいだろう。たった一つの問題は、レベニューシェアリングは高収入球団が最も嫌うことだということだけだ。

このようなメカニズムで、今年はサラリーキャップを採用しているリーグのほうが選手の取り分が多くなったというのが記事のようなことが起こった理由だ。

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