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効率的市場仮説の功罪

2009年03月07日 | 経済学

池田信夫blogで効率的市場仮説の話が出てたので少し一言。効率的市場仮説というのは、個人や企業が現在の市場や未来の状況を知った上で、それをもとに合理的な判断を下すような市場を想定して議論しようという話だ。個人や企業が上のように合理的に判断し行動すると仮定されているので、ある行動が現在に与える影響だけでなく未来に与える影響も正確に予測して行動することになる。

問題は、そのように仮定するとそもそも景気変動が起こらないはずなので、そのような前提を下に議論するのはおかしいというのがよくある議論のひとつだ。また、効率的市場仮説は情報をすべて知り、未来に渡って合理的な判断をする個人や企業を想定しているがそのようなものは不可能なのではないかというのもよくある批判だ。

このように効率的市場仮説は個人や企業の合理性を過大に仮定している。特に現在基点にして考えた場合、過去の意思決定を完全に合理的だとしたらそもそも現在の問題自体が発生していないという矛盾を抱えている。しかし、これがよく使われるのは、ケインズ経済学が未来に与える影響を信じがたいくらい無視してモデルが構築されていたりするために、未来の期待や影響を考慮できる効率的市場仮説がその部分で有効であるというのがある。つまり、他の前提があまりにも未来への影響を軽視することがあるので未来を見渡せるという前提でも未来を考慮するだけいいのかもしれないということだ。

例えば、景気対策で財政支出をしたとする。そうすると、現在だけ考えると経済にプラスの影響しかないようにも思える。しかし、未来を考慮すると将来何らかの形でその費用を負担する必要がある。そうすると、その未来の負担増の分、現在の財政支出の効果が減少することになる。つまり、現在と未来を総合して考えると、単なる支出の負担の異時点間の移転でしかないかも知れず、ほとんど意味がないかもしれない。このように、合理的に計算するという仮定が部分的に有効である場合があるのでモデル分析でよく使われる。

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