あちらこちら命がけ

血友病、HIV、B/C型肝炎等を抱えて生きる人のブログ。薬の体験記、海外の最新医療情報、サルベージ療法から日常雑感まで。

HAART

2006年09月19日 00時10分02秒 | 用語集

HAART(ハート:Highly Active Anti-retroviral Therapy

 数種類(通常3種類以上)の抗HIV薬を組み合わせて使う、強力な多剤併用療法のこと。プロテアーゼ阻害剤が開発された1996年ごろから試みられていて、現在のHIV治療において最も基本的な方法です。多剤併用という点で、カクテル療法などと言われることもあります。
 HAARTの目的は、血中のウイルス量を検出限界以下に抑えこみ、HIVの病態が進むのを遅らせることにあります。これによりエイズ発症を遅らせ、免疫機能を維持、回復させることが期待されます。

 ただし、HIV(エイズウイルス)は変異を起こしやすいウイルスで、中途半端な治療

(1)飲み忘れがある
(2)きちんと時間通りに服薬していない
(3)食後・食間などの指示を守っていない
(4)血中ウイルスを抑えきれていない、弱い薬の組み合わせでの治療 など

を行ってしまうと、その薬が効かないウイルス(薬剤耐性ウイルス)が生まれます。薬剤耐性ウイルスが生まれると、もうその時に使っていた薬は一生効かないことになります。耐性ウイルスの怖さは、それが一時的なものではなく、生涯にわたって薬が効かなくなるという点にあります。
 そのためHAARTを成功させるには、医療従事者はHAARTを行う人にこうしたHIVの性質(ちゃんと服薬しないと薬が効かなくなってしまうことなど)をきちんと説明し、生活リズムの中でどのように服薬をしていくかを話し合い、確実に服薬が行えるよう連携していくことが最も重要です。

 またHAARTを行う人は勝手な個人判断で薬を止めたり、下痢などの副作用がきついなどの理由で服薬をスキップするなどの行為は、絶対にやってはいけません。服薬を困難に感じた場合は必ず医療従事者に相談してください。勝手な個人判断は絶対にしないということがHIV治療における絶対のルールです。


 こうしたHAARTの登場により、HIV感染者やエイズ発症者の予後は大分改善されてきましたが、近年はHAARTの強い副作用が問題になってきています。
 使う薬にもよりますが、ひどい副作用としては

肝機能障害による脂肪肝、肝硬変など
腎機能障害による腎不全、人工透析の適応など
血糖値上昇による2型糖尿病の発病
乳酸アシドーシス
すい炎
徐脈(心臓不整脈)

などなど、いくつかの報告があります。
 ただし、現時点ではHIV治療としてはHAARTしか選択肢がありません。副作用を必要以上に恐れ、治療をせずにエイズ発症するというのもナンセンスです。

 薬の副作用は、早い時点で適切な対処をすれば、ほとんど大事にはなりません。また、耐性ウイルスを作っていなければ、いくつかの薬の組み合わせの中から、最も自分に適した薬を選ぶことができます。

 ですから現時点でとれる最善策は、採血などの定期検査で薬の副作用の状態を把握しながら、それぞれの体にあった薬の組み合わせを見つけてHAARTを行っていくということだと言われています。


より詳しく知りたい方へ参考となるWEBサイト

服薬支援研究班(HAART Support)
エイズ予防情報ネット(API-Net)
HIV感染症治療研究会


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