この秋風が好きだ。
ここには、あたたかい予感が満ちている。
いつもより冷たい風にあわてて、身をかがめる。笑っちゃう。今日は何を食べようかと考えている。
あたたかい日と、寒い日と。交互に続いても、いずれ寒さが優勢に。そして僕は、毎日、湯気の出るものを食べるようになる。
自然は、生命は、極度を嫌う。大切なのはバランスだ。
日に日に、夜が早くなってくる。
そのことに気づいて、驚く。
早い夜は、長い夜。
家に帰り、仕事のメールをチェックしたら、パソコンを閉じる。ケータイの電源を切る。
僕の全身が欲しているのは、よろこびの歌。突き抜けるスピードと、確かな方位。僕は僕を、どこまで連れて行けるだろうか。
音と言葉に満たされて、僕は、やわらかな光を浴びる。風はあたたかく吹き、夜は優しくふけていく。
しんしんと積もっていくような時間を感じて、僕は、しあわせを抱き寄せる。明日が来るまで、オレンジの光の中で眠る。