映画と自然主義 労働者は奴隷ではない.生産者でない者は、全て泥棒と思え

自身の、先入観に囚われてはならない
社会の、既成概念に囚われてはならない
周りの言うことに、惑わされてはならない

樋口一葉『にごりえ』第6章

2013年11月05日 02時45分15秒 | 邦画その他
書きかけです.ご容赦を

樋口一葉原作、『にごりえ』六章途中より、『お前は出世を望むな』この言葉を考える.

『にごりえ』の口語訳があります.PDFでとても読みやすいです.
http://www.kufs.ac.jp/French/i_miyaza/publique/litterature02/ichiyou_nigorie.pdf#search='ichiyou_nigorie'


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酒席で綺麗事の嘘を言い、客の嫌らしい行為に耐える遊女.もうこんな生活は嫌、結城の妻になって幸せになりたい、そう思えば思うほど、お力は遊女の境遇に耐えられなくなっていた.
嫌らしく言い寄る客に堪えかねて、お力は仕事を放り出して街をさまよい歩く.

もし、妻になれと言われたらどうしよう.私は未だ源七が好きだから、結城だけを好きな良い妻にはなれない.やっぱりこんな私は、幸せな結婚は出来ないのだ.

源七を好きになって幸せになれると思ったのに、源七は不幸になってしまった.やっぱり、男を騙してばかり居た私には、幸せな結婚は無理なんだ.幸せな結婚より不幸な結婚の方が、自分には似合っている、そんな荒んだ想いが、浮かんで来てならなかった.

源七を本当に好きになって幸せになれると思ったのに、源七は不幸になってしまった.
では逆に、好きだ好きだと口先だけの嘘を言う男と、口先だけで好きだと言って一緒になったにしても、幸せになれるはずがない.
男を騙してばかり居た私は、誰と一緒になっても幸せになれないんだ.

結城の妻になりたい、幸せになりたい一心で、お力は想いを巡らしたけれど、どの様に考えても無理、考えれば考えるほどに、無理なことに思えてきた.
諦めなければ、諦めなければ、やっぱり自分は遊女のお力、源七の家庭を不幸にしてしまった自分が、結城の妻になって幸せになるなんて、許されそうにない.
でも、でも、私は悪い女かもしれないけど、私だけが悪いんじゃない.源七も同じように悪いはず.私が人並みの幸せを望むのが無理にしても、私が悪いのは半分だけ、人並みの半分は幸せになってもよいはずじゃないの.
あ、そうだ私は遊女のお力、妾ならいいのじゃ、遊女も妾も金で買われた女、今と変わらないから許されそう.きっと妾ならいいんだ.人並みの半分の幸せでも構わない、遊女の生活とおさらば出来ればそれで良い.
でも、困ったわ.結城は独身.あの人は私が妻にして欲しいと言えば、間違いなく妻にしてくれる、その相手に妾にしてくれと言うには、どういったらいいのだろう.
よい方法を思いついたお力であったが、また新たな困難がお力を悩ませた.

遊女も妾も金で買われた女、どうせ私はそんな生き方しか出来ない、なんとなく虚しく思ったお力、あ、店に戻らなければ、あんな店二度と戻りたくないと歩き始めたお力の肩を、後ろからたたくものがあった.
やっぱり妻は無理なのかと諦め、でも、妾の方が自分にはふさわしいと納得し、これで自分は幸せになれると希望を抱いていたお力.妻でも妾でもどっちだって構わない、好きでもない男に好きだと言い心ない文を書く、嘘で塗り固められた生活とはもうおさらば、好きで好きでならな男と一緒にいられるんだ、嬉しい.....、お力は思わず結城の腕にすがりついていた.
二人は、店に戻る.

『そもそもの最初から私は貴君が好きで好きで、一日お目にかからねば恋しいほどなれど、奥様にと言ふて下されたらどうでござんしよか、持たれるは嫌なり他処ながらは慕はしし、一ト口に言はれたら浮気者でござんせう、』

私は、あなたをどうしようもないほど好きだけど、でも源七も好きだから、妻になれと言われても、あなただけのものになることは出来ない.むしろ、妾になれと言われた方が、よっぽどか嬉しい.妾なら、あなたも浮気、私に浮気心があっても許されるでしょうから.
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お力は、幼かった頃の辛い想い出を語る.

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祖父は、なまじっか読み書きが出来たので、自分の正しいと思うことを書いたビラを作ってばらまいたら、牢屋に入れられて野垂れ死にしたらしい.
父親も、名職人だったけれど、自分の正しいと思った仕事しかしなかったので、客がつかず貧乏のどん底の生活だった.
私の家系は3代続くきちがいさ.三代目の私も、自分が正しいと思ったことをやっても、幸せになれっこない.

(お前は出世を望むな=お前は良い妻になろうと思うな.遊女にとって出世とは、玉の輿に乗って、良家の奥様に収まること)
お前は良い妻になって、良家の奥様にならなければいけないと思っているのだろう.だったら良い妻になろうと思わなければいいじゃないか.

え、私、本当にあなたの妻になりたいと思っていないわよ.どうせなったって、私は無作法だから、お膳を(味噌汁を)ひっくり返すのが落ち、そんなんじゃ良家の奥様にはなれないわ.

もう、気心が知れた仲じゃないか.嘘を言うなよ.思い切って、俺の妻になってみろ.
お前は未だ源七のことを好きなので、俺の良い妻にはなれないと思っている.だったら、良い妻になろうと思わなければいいんだ.俺はお前に、俺だけを好きになれとは言わない.解るだろ、あの時だって、源七を部屋に呼べと言ったじゃないか.

もう一度考えてみると、
『お前は出世を望むなと突然に朝之助に言はれて、ゑツと驚きし様子に見えしが、私等が身にて望んだ処が味噌こしが落、何の玉の輿までは思ひがけませぬといふ』
『嘘をいふは人に依る始めから何も見知つてゐるに隠すは野暮の沙汰ではないか、思ひ切つてやれやれとあるに、』

お力は妻よりも妾にして欲しいと言っていた.分かりにくい言葉で『妻になる出世は望まない.妾にして欲しい』と言っていたので、自分の言いたかった言葉を結城に言われて『ゑツ』と驚いたのだった.
お力はもう一度、無作法だから良い妻になれないという、嘘の言い訳をしたのだが、

だから俺は悪い妻で構わないと言ってるだろ.もう、そんな嘘の言い訳はよせよ.気心が知れた仲じゃないか.お前が源七を好きなことはよく解っている.源七を好きな悪い妻でも構わないから、思い切って俺の妻になれ.

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1.
『そんなに体裁には及ばぬではないか、可愛い人を素戻しもひどからう、追ひかけてあふが宜い、何なら此処へでも呼び給へ、片隅へ寄つて話しの邪魔はすまいからといふに』

結城は、源七が好きなら会ってこい(会っても構わない)と言っている.
(源七を好きなお力の)女心を、お金でも、力ずくでも、どうすることも出来ないことを結城はよく解っていた.だから結城は、自分だけを好きになれ、源七を嫌いになれとは言わなかった.逆に、好きな心はどうすることも出来ないのだから、会ってこいと言っています.

2.
お力が、私は下品だから良い結婚は出来ないと言ったら、
結城は、お前のような美人なら、一足飛びに玉の輿に乗れると言った.(遊女としての出世が出来ると言った)

3.
お力は、結城も源七も二人とも好きだった.『私は浮気者で、結城だけを好きになることは出来ないので、結城の良い妻になることは出来ない』と、思っていた.
だから、結城の妻になりたくても、口では『私は下品(無作法)だから、玉の輿に乗れない(出世は出来ない)』、と言った内容の嘘を言っているので、次の結城の言葉になる.

4.
『お前は出世を望むな』=『良い妻になろうと思うな』
『良い妻になろうと思うな』は、『礼儀作法を知らなくて良い、下品のままで良い』、『悪い妻』=『浮気者』=『源七を好きでも構わない』
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『そんなに体裁には及ばぬではないか、可愛い人を素戻しもひどからう、追ひかけてあふが宜い、何なら此処へでも呼び給へ、片隅へ寄つて話しの邪魔はすまいからといふに』
ずっと以前に、結城はお力に言っていたのだけど、お力には冗談にしか思えなかった.

けれども『お前は出世を望むな』と言われて、やっと結城の心が解った.自分が源七を忘れられないでいる、その気持ちを知った上で、結城は自分を好きになっていることが解ったでしょう.

もう一度振りかって、

『そもそもの最初から私は貴君が好きで好きで、一日お目にかからねば恋しいほどなれど、奥様にと言ふて下されたらどうでござんしよか、持たれるは嫌なり他処ながらは慕はしし、一ト口に言はれたら浮気者でござんせう、』

お力は、『私は妻になって、出世しようとは思っていない、妾の方がいい』と言った.

そして次に、自分の子供の頃の貧乏のどん底の生活、辛い出来事を語った.
『私は、貧乏でどん底の生活をしていた子供の頃の辛い出来事を、未だに忘れられない.私のせいで源七の家族は貧乏になってしまった.そして、源七の子供は私の子供の頃と同じ、辛い想いをしている.自分があの子に、自分の子供の頃と同じ辛い想いをさせているのだと思うと、私は耐えられない.こんな女があなたの妻になって幸せになるなんて、許されないことでしょう』

(私は簡単にお力は源七を好きだったと書いていますが、正確に言えば、子供に辛い想いをさせてしまったので、源七を忘れ去ることは出来ない、それは許されないのだとお力は思っていたのです.自分の子供の頃の出来事を忘れることが出来ないお力は、源七の子供に同じ想いをさせてしまったので、源七との出来事も忘れることの出来ない出来事になってしまった.もちろん、単にお力が源七を好きな気持ちがあったのかもしれませんが)

お力の涙が乾いた頃、
突然、結城は『お前は出世を望むな』と言ったので、お力は自分の言いたかったことが結城の口から出てきて驚いた.と同時に、自分は『出世しようと思っていない』と言ったのに、結城は『出世するなと』と言っている.
結城の真意を測りかねたお力は、『私は本当にあなたの妻になりたいとは、思っていないのよ』と、念を押すように言ったのだった.

『お前は出世を望むなと突然に朝之助に言はれて、ゑツと驚きし様子に見えしが、私等が身にて望んだ処が味噌こしが落、何の玉の輿までは思ひがけませぬといふ』
『嘘をいふは人に依る始めから何も見知つてゐるに隠すは野暮の沙汰ではないか、思ひ切つてやれやれとあるに、あれそのやうなけしかけ詞はよして下され、どうでこんな身でござんするにと打しほれて又もの言はず』

だから言っているだろう.お前は無作法で悪い妻でも、源七を好きで悪い妻でも構わないと.そんなことどうでも良いじゃないか.思い切って俺の妻になれ.
結城は自分の心を全て理解した上で、自分に妻になれと言ってる、それを知ってお力は嬉しくてならなかった.けれども、それでもなお、本当に自分がそんな幸せを受け入れてよいのかどうか、迷うのだった.

6章の初めに戻れば、
源七を好きになって幸せになれると思ったら、源七の家族は不幸になってしまった.では逆に、うわべだけの綺麗事を言う男と、うわべだけの綺麗事を言って妻になったら、幸せになれるかと言えば、そんなはずはない.
これでは、私は絶対に幸せになれないじゃないか.私は確かに悪いかもしれないけど、決して、私一人が悪いのじゃないはず.私だって、幸せになっても良いはずだ.

お力は、自分が源七の子供に、自分の子供の頃と同じ辛い想いをさせてしまったので、もう自分は、幸せになることは許されないと思った.
けれども、私なりに簡単に書けば、自分一人が悪いんじゃない、源七も同じように悪いはず、だったら人並みの幸せが許されなくても、人並みの半分は幸せになってよいはずだ、こんな風に考えて、妻になることは許されなくても、妾なら許されるのじゃないか、と言う想いに至ったのでしょう.

遊女も妾も、金で買われた女、自分はやっぱりこんな生き方しか出来ないのだ、と言う、あきらめと同時に、納得もし、そして、これなら結城と一緒になれる、遊女の生活と別れることが出来るという希望も抱いて、肩をたたいた結城と一緒に店に戻ってきたのだと思われます.
(妻になりたいと言えば、間違いなく妻にしてくれる結城に、妾にして欲しいと言うにはどういったらいいのだろう.お力は随分悩み考えたことでしょう.自分をきちがいだとも言いましたが)
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お力は自分は三代続いたきちがいだ、と言いました.自分が正しいと思うことをすると不幸になる.
結城の妻になることを、お力は正しい考えと思ったのでしょうか、あるいは源七の子供にお菓子を買って上げたのが、お力が正しいと思ったことによるのでしょう.
子供がお菓子を持って帰り『知らないおじさんと一緒にいた、鬼姉にもらった』と言ったので、源七はお力に好きな男が出来たと知ることになりました.

結城は、お力を自分一人のものにしようとしなかった.
では源七は、と考えれば、なぜ悲惨な結末になってしまったのか解ります.

追記
『お前は出世を望むな』は、映画には全く描かれていません.
映画『にごりえ』は、『十三夜』『大つごもり』『にごりえ』三作を合わせた、オムニバスになっています.

私は原作を全部読んでいません.拾い読みしただけなので、ですから、映画と原作を混ぜ合わせて書いています.
もう一つ、映画に描かれていないことに、『丸木橋を渡る覚悟』と言う言葉があります.
お力がどの様な覚悟をしたのか?
なるほど、なるほど、悪く言えば、お力の計画的犯行は見事に成功したのか.と思ったのだけど、お力の心を結城に見抜かれたので実は失敗だった.やはり幸せにはなれなかった.

お力は、見事に考え抜いた、その考え方が正しかったかに思えたけれど、やっぱりダメだった.
こう考えれば、難しく考えたって、駄目なものはダメ、もっともっと素直に生きればそれで良いのだ.結城に話したように、自分の子供の頃の辛い出来事を源七に話し、自分の辛い想いと同じ想いを子供にさせてしまったことを詫びて、そして、今でもあなたが好きなのだけど、今のあなたでは一緒になることが出来ないじゃないか、元のあなたに戻って欲しい」、こう言えば良かったはず.

振り返れば、お力は、幸せになろうと一生懸命、嘘を考えました.その結果、一見幸せになれたかに思えたけれど、やはりダメだった.
本当のことを言っても、嘘をついても結果は同じだったかもしれないけれど、結果が同じならばわざわざ嘘を考えることはなかったのであり、むしろ逆に、どうしたら本当のことを言えるか、それを考えなければならなかったのではないでしょうか.


さて、映画に戻りましょう.

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妾にして欲しいというお力の言葉は本心であった.けれども同時にその言葉は、本当は妻になりたいと言う気持ちも現すものであった.一つの言葉が相反する二つの心を現している.ここに芸術性が存在する.

見方を変えれば、
自分の家系は三代続くきちがい.自分が正しいと思うことをすると不幸になる.
妾になりたいのが自分の正しい考えならば、自分は妾という不幸な結婚をすることになる.
もし逆に妻になれたら、自分の正しいと考えたことの逆をしたので、妻という幸せな結婚が出来る.
でも、お力は、妻になりたい一心でこう考えたので、.....口では、妾にして欲しいと言ったのですが、結城に嘘を言うなと言われて.....
お力は必死に嘘を言おうと考えたのだが、その嘘は真実を伝えることになり、嘘にはならなかった.
お力は嘘をついて結城を騙そうとしたのではないので、その嘘は嘘にはならなかった.
だったら、初めから嘘を言おうとは考えず、素直に真実を話せば良かったはず.

遊女の世界は、嘘を言うのが正しい世界だったのか.
お力もまた、嘘を言うのが正しいと考えて、結城にあのようなことを言ったのだけど、
結城はお力の嘘を見抜いて、お力の心は伝わったので、一見お力は正しかったに思えたけれど、
けれども、嘘を言うのが正しいことなんてあり得ない.

遊女の世界だけに限って言えば、
遊女の世界は、お力も言っていたが、本当のことを言っていたらお客なんかこない.けれども、だからといって、嘘を言うのが正しいことに思い込んでいるとしたら、間違っている.
私が付け加えれば、確かに、嘘を言ってバカなお客を喜ばせるのが彼女たちの仕事なのだけど、それと人を騙すために言う嘘は別である.
結城は独身なので妻にして欲しい、源七には妻があったので妾にして欲しいと言えば良かったのだけど、お力は言わなかったので、こんなことになってしまった.
お力は源七が好きなので、源七を騙したわけではなく、悪いのは全て源七ではないかと思っていたのだけど、あんな店に通いつめて布団屋をつぶす前に、源七に店に来るのを止めるように言わなければならなかったはず.好きな相手ならちゃんと言わなければ.こんな店に通いつめるくらいなら、妾にして欲しいと言うべきだったのでしょう.
私の家系は3代続くきちがい、自分の正しいと思ったことをすると不幸になると考えて言わなかったのか、あるいは言ったにしてみても、お力のあの話し方では分らなかったのか.
源七の妻は言っていた.もとのような立派な店を構えて、女でもなんでも囲って好きにしたらいいと.
お力は妾が嫌なので、源七に妾にして欲しいと言わなかったのかも、言ったのに相手に理解できなかったのかも、あるいは思いつかず言わなかったのか、どれでも同じこと、言わなかったのでこんなことになった.
源七はお力に妾になれと言ったのに、お力が「うん」と言わなかったので、源七はお力を自分のものにしようと通いつめ、布団屋をつぶしてしまった.と、考えるのが一番自然でしょう.
お力は源七を騙し、そして結城も、見事に騙している.
源七がお力に妾になれと言ったのに、お力は「その返事はまた今度」と、思わせぶりな答えを繰り返していた.お力には妾になるつもりはなかった.(「お前は気位が高いから源さんとは一緒になろうとは思うまい」と、同僚の遊女のお高が言っているらしい)
逆に結城には妾にして欲しいと言ったけれど、結城は独身なので、妻になれというのが分っていた.分っていて妾になりたいと言ったのだ.

もう一度振り返って、
簡単に言ってしまえば、遊女の姿を克明に描いた作品である.一言付け加えれば、遊女が男を騙す姿を克明に描いた作品である.そして私も騙されました.

『お手紙差し上げようかどうしようか、随分迷っておりましたが、今朝『鳩のごとく素直に、蛇のごとく悟かれ』と言うイエスの言葉をふと想いだし、お手紙差し上げることにしました.直治の姉でございます.憶えておいででしょうか、お忘れでしたら思い出してください』
太宰治の斜陽の一節で、たしか没落した貴族の女は、自分を妾にして欲しい、と手紙を書いた初めの部分のはず.素直な気持ちがにじみ出ている.

お力は決して結城を騙そうとしたわけではない、嘘を言おうとしたのではないのですが、けれども素直に自分の心を語ろうとしたかというと、全くその逆であった.

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余談になりますが、
勝ちたい、勝ちたい一心で、勝てる、勝てると嘘を言って行ったのが、太平洋戦争です.天皇以下国民全てが嘘つきであったと言ってよいと思います.

日清戦争は、天皇が伊藤博文にやめさせろ言ったのですが、伊藤博文が全責任を負うという事で行われました.
日露戦争は、いざというときのお覚悟を、と、伊藤博文は天皇に言ったそうです.

日清戦争は、勝ち負けの結果よりも(と共に)、日本は戦争の経済に対する影響を怖れていて、賠償金をとって終わらせる道をとりました.三国干渉に対しても同様に、こじれると清が賠償金を払わない可能性があるので、受け入れたのです.
結果、清は干渉を行った三国から借金をして、日本に賠償金を払ったので、日本の判断は正しかったと言えるのですが、後々まで日本は三国干渉を屈辱と考えていて、北支那事変で北京進駐を行うことになります.そして、太平洋戦争へ.....