
そぼ降る雨のなかの
あじさいを
ぼんやりと眺めて
人魚の涙みたいだなって思う。
雨がなのか
それとも
あじさいの花がなのか
定かではないけれど。
波打ちぎわで
さわさわと消えていく
泡のようだとも。

訳:金原瑞人
絵:清川あさみ
による
アンデルセンの『人魚姫』は
布と糸と
ビーズで描かれる
人間に焦がれた人魚の恋の
物語。

”海のはるか沖では
水は矢車草の花びらのように青く美しく
水晶のように澄んでいる。
そしてどんなロープをおろしても計りきれないほど深い。
教会の塔をいくつ積み重ねても水面に届かないほどの海の底に、
海の王さまと臣下たちが住んでいた。”


海の底に
いざなわれる
深く深く潜っていく
肌を撫ぜる
やさしい海流
肺を満たす
濃い潮の香り
はるか彼方
海面から射しこむ
幾筋もの光
ゆきすぎる魚たち

雨と
あじさいの花を眺めて
あじさいの花を眺めて
ほのかに光る
深い深い海の底に
降りていく

人魚の流した涙を
思う
★
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