古文書を読もう!「水前寺古文書の会」は熊本新老人の会のサークルとして開設、『東海道中膝栗毛』など版本を読んでいます。

これから古文書に挑戦したい方のための読み合わせ会です。また独学希望の方にはメール会員制度もあります。初心者向け教室です。

迦南俳句を読む 4   横井迦南句集より

2017-04-20 12:12:31 | 横井迦南

写生自在 2

① 夜濯や昔は虎が来たといふ     迦 南

② マンゴーは芳ばし海はまこと紺     〃

③ 楼門は腐ちゆくまま昼の虫       〃

④ こゝよりは朝鮮町や秋つばめ      〃

⑤ 婢の里はこのあたりとか山桜      〃

⑥ 初七日はうちわばかりの豆御飯    〃

⑦ うしろには球磨の大橋梅の宿      〃

⑧ 稲妻は衰へ月は雲を出で         〃

⑨ 郭公や寺のうしろは岩襖         〃

                           解説の便のために句頭に番号を振りました。

係り助詞「は」を取り込んだ句は句集中にこの9句しかありません。俳句は

「て、に、は」の使い方1つで佳句にもなれば凡句にもなるので、作句の時

はそこに最も苦心するのです。①は「は」によって意味の上でも、これ以

にはないですね。②⑧は「~は~は」という畳句の叙法で句に躍動感を与え

ています。④⑤⑦も「は」 は動かないですね。

ところが③⑥⑨の場合は「の」と置いても意味は通じます。私などはついつ

い「の」と置いてしまいそうです。

修行時代はずいぶん「の」と添削されたものですから、俳句は格助詞「の」を

多用するものという観念がこびりついています。

そういう意味で迦南句集は私の「てには」を正してくれる有難い参考書なの

です。