古文書を読もう!「水前寺古文書の会」は熊本新老人の会のサークルとして開設、『東海道中膝栗毛』など版本を読んでいます。

これから古文書に挑戦したい方のための読み合わせ会です。また独学希望の方にはメール会員制度もあります。初心者向け教室です。

俳誌『松』の表紙絵

2016-01-31 22:28:16 | 俳句

 

 上は俳誌『松』の最新号なのですが、表紙絵がいいですね。開封一見表紙絵に目が釘付けになつてページを繰るまでに少し間がありました。Benというサインは田中勉という人だぐらいしか私は知りません。画家としてのBenさんをしらないのです。『松』の表紙絵はずつとこの人が描いています。

 スケッチ風というのか、スケッチそのものと云うべきかわたしには断定ができないのですが、心にしみる風景です。使い込まれて疲労感の漂う車両、型も旧式なら走っている場所もさびれたところのようで懐かしさを感じます。画家の視線に共感させられます。

 絵にある7022という数字とその上にあるなにかマークのようなものを手がかりにしてこの電車を探し当てました。

 

 上の絵と見比べてください。絵はこの電車をスケッチしたものに間違いありませんよね。これは都電・荒川線を走っている電車でした。絵から受ける印象とは随分ちがいますね。絵には画家の主観が含まれており、写真には記録性以上のものがありません。ついでにもう1枚7022をお目にかけます。

 

 これはまた花の7022とでも称すべき勇姿ですが、場所はどのあたりでしょうか・・・。


豊嶋屋の剣菱… 膝栗毛 発端7

2016-01-31 10:16:43 | 膝栗毛発端

 

はじめに江戸川柳の紹介から (江戸川柳 飲食辞典より)

 すき腹へ剣菱ゑぐるやうに利き       

 鰹はさしみ酒はけんびし    (サシミとササをかけた)

 剣菱が利いて米噛片頭痛    (二日酔い)

 剣菱をかぶって寝る橋の上      (樽の菰)       

 剣菱でできた喧嘩がすみだ川     (すみだ川という銘酒もあった)

 

 さて、本題の豊嶋屋ですが、先に「たたき納豆 発端5」のところで引用した三田村鳶魚編「輪講」にこれについてのやや詳しい言及がありますのでそこのところを画像化して下に載せます。

 

 


挿絵の怪・・・解決しました。膝栗毛 発端6

2016-01-29 13:49:27 | 膝栗毛発端

 先に「膝栗毛 発端5」の記事で挿絵の向が反対では…?と疑問を呈しましたが、ひょんな事から疑問がとけました。と言っても若干の疑問は残りますが、妥協できなくもないです。

 これは馬に乗る前の絵ですね、鼻之助が弥次郎兵衛に「あの馬に乗せてくれ・・」とせがんでいるように見えます。馬子は「帰り馬だ、安くしますぜ‥」などと云っているようです。疑問がすっきりと晴れないのは鼻之助・弥次郎兵衛が江戸の方向から歩いてきているように見えるからです。

 これが「発端5」の絵です。これだとはっきり西に向かっていますが、上の絵は方向が定まっていないので、妥協の余地があるわけです。

 ところでひょんな事とはですね。会員の平井さん(ネコの動画の製作者)が膝栗毛学習にあたって、参考のために活字本をヤフーのオークションでセリ落とされたそうです。その本にある挿絵が上載のものですが、膝栗毛は板行の度に挿絵も替わっていたことがこれで分かります。平井さんからその本を借りてコピーも取らせてもらったのですが、なかなか立派な装幀の本でした。

 新書版くらいの大きさですが、分厚く背文字・表紙文字には金箔が塗り込まれています。蓮の絵に雁のような鳥をあしらった表紙絵にも金箔が施されてあり、重厚な印象をあたえる本です。奥付に昭和10年発行、非売品、有朋堂とありました。

 

 

 

 


小朝独演会・・・熊本労音落語劇場

2016-01-27 18:23:32 | 日記

上のポスターお金をかけてないことが一目瞭然、それでいてインパクトのあるポスターです。労音経営60年の極致を見る思いがします。   

ポスター貼り出し抽選会

 市のコミニティボードにポスターを貼り出す抽選会があるので9時30分には市役所11階の会場へ。ブログの表紙絵にしている会員募集のポスターを貼り出すための抽選会です。会場には長机とパイプ椅子が設えられ、すでに20人ぐらいが受付をすませて待機しています。

 私の受付番号は18番。36人の当選なので、まだまだ余裕とおもっていました。小朝師匠のポスターを持っている人と隣り合わせになり雑談を交わしている内にだんだん人数が増えて定刻10時になったときには45人になっていました。ひょっとするとこれは・・という不安があたまをかすめましたが、強いて考えないことに・・・。

 1番から5番までの方籤をひいてくださいという係員のアナウンスがあって抽選会が始まります。竹箸のような籤を筒の中から引き抜く抽選ですが、竹に印があれば当選。1番から5番まで1人も空籤なし。6番から10番、11番から15番と順に抽選が進み、15番まですべて当選。残りの当選数は21本、空籤は手つかずの9本が残っているのですから、これはきびしい・・

 やんぬるかな、みごとに空籤を引き当ててしまった。小朝師匠のポスターを持ってた人は受付番号1番でいの一番に当選を果たしていました。この人は熊本労音の事務局をしている人で、気分が合うというか雑談の間にすつかり意気投合。1955年~2016年熊本労音ステージ一覧表の冊子をいただきました。空籤を引いたけれど収穫もあったというお話でした・・・。来月は必ず当選するぞう!!!


たたき納豆・・膝栗毛 発端5

2016-01-25 20:41:57 | 膝栗毛発端

・・・舂米の当座買い、たたき納豆、あさりのむきみ居ながらにして・・・

と原文にありますが、たたき納豆についての考証記事を下に紹介します。

『東海道中膝栗毛』輪講 三田村鳶魚編 大正15年刊 (近代デジタルライブラリー)

包丁でたたくからたたきだろうというような記事をネット上に見かけますが、それは俗説のようですね。上記のような考証があってみれば・・・。


挿絵の怪・・・膝栗毛 発端4

2016-01-24 21:49:35 | 膝栗毛発端

 先を行くこころに羽やほととぎす  桜木亭 金丸

  発句はこのように読みます。「を」が分かりにくいのですが、「悪」の崩し字です。憎悪・悪寒の「を」です。「を」に当てる漢字は遠・乎・越の3字が一般ですが、作者はこのように当てて少し得意になっているのです。寺子屋などではこんな当て方は教えないのですが、文人にはそういう気取り屋の弊があったようですね。

  ところで、この挿絵をよく見ていただきたいのですが、富士山が右手前方に描かれていますよね。ということはこの人物たちは江戸を発って西へ向かっていると見るのが自然です。しかし、そうするとですね、つぎの点で矛盾がでてきます。

  弥次郎兵衛と喜多八が東海道の旅へ発つのは「初編」に書かれていることで、今はまだ物語は「発端」ですから駿府から江戸へ駈け落ちの道中でなければなりません。喜多八(この時点では鼻之助でした。)が若く女のように描かれ、労るように馬に乗せられているところを見れば、なるほど駈け落ちの図となります。また、発句も前途の希望に浮き立っている心裡が描写されています。しかしそれでは方向が反対です。この矛盾がどうしても解けません。

 お気づきの方にコメントいただけるとありがたいです。

  


意味より読み・・・膝栗毛 発端3

2016-01-23 17:37:31 | 膝栗毛発端

 わたしたちが読み合わせ会で読んでいる文書は上のようなものです。これは桜木の板に文字を彫りつけそれを紙に刷ったものです。漢字には変体カナのルビが振ってありますが、振られてないのもあります。この図でいえば順に町、時、今、井、内、大江戸、目などがそれです。一方カナも漢字を崩したもので、ある文字がカナなのか漢字なのか判別に苦しむ時があります。たとえば「者」は漢字では「モノ」ですがカナとして読む時は「ハ」なのです。「川」もカナでは「ツ」漢字では「カワ」です。このようなことから変体カナの文章は読みづらいのですが、これも慣れてしまえば何ということもありません。文脈の中で判別できるからです。

 講師としては語句の意味などある程度下調べをして会に臨み、段落毎にその意味などを説明をするのですが、会員の皆様の反応がどうも今一なのです。気になるので聞いてみたら、読むのに精一杯で意味にまで意識が向かわないと言う返事でした。なるほどそういうことかと自分の初心のころをおもいだして納得したのですが、早く読みより意味に成長してもらいたいものだと思った次第です。

「この字はなんと読むか」という質問より「この語の意味は・・」という質問のほうがレベルが高いですよね。

 

 


衆道・念者と若衆 膝栗毛発端2

2016-01-18 14:34:26 | 膝栗毛発端

・・・安部川町の色酒にはまり其上旅役者華水多羅四郎が抱の鼻之助といへるに打込み、こ

の道に孝行ものとて黄金の釜を掘いだせし心地して、悦び戯気(たわけ)のありたけを尽

し、はてハ身代にまで途方もなき穴を掘明て留度なく、尻の仕舞ハ若衆とふたり尻に帆かけ

て府中の町を欠落するとて

 借金は富士の山ほどあるゆへにそこで夜逃げを駿河ものかな

 

 本文にこのように書いてあるのですから、弥次郎兵衛、喜多八が念者と若衆の間柄であ

ったこと、すなわち男色関係だったことがわかります。「黄金の釜」、「尻の仕舞」、「尻

に帆かけて」等皆男色の縁語です。こういう設定の小説がとくに違和感もなく受け入れら

て、大いに読まれたというところがおもしろいです。かってこの国にそういう文化が存在し

て、それがけして異端ではなかったというのは何かふしぎな気がします。

 現代社会はLGBT一つ取ってみても本音と建て前に大きな乖離があってなかなか解決できな

でいます。さて、江戸へ欠落ちした弥次郎兵衛、喜多八は神田八丁堀の借家で暮らすこと

になりますが、有り金を遣い果たしてしまい男色関係は自然消滅します。

 


武蔵野の尾花が末にかかる白雲  膝栗毛発端1

2016-01-17 17:45:29 | 膝栗毛発端

  武蔵野の尾花がすゑにかゝる白雲と詠しハむかしむかし、浦の苫屋、鴫立つ沢の夕暮に

 愛て仲之町の夕景気をしらざる時のことなりし・・・

 

   有名な冒頭の文章ですが、調べてみたらこれは続古今集にある和歌でした。

 武蔵野は月の入るべき峰もなし尾花がすゑにかゝる白雲  大納言道方

 また、「浦の苫屋」、「鴫立つ沢」と書いていますが、これは言うまでもなく三夕の和歌の終語を引

用して、昔の人は秋の夕暮れは寂しい趣に満ちていると言ったが、同じ武蔵野であっても、今の江

戸は吉原仲之町の夕景色なんぞをみれば管弦さんざめく酔客の衢であり、新古今時代の趣とはま

るで別世界のようですね、と言っているのです。そして一九はそれを肯定しています。ちょうどわた

したち世代が経済の高度成長に酔っていた時代相とそっくり重なります。

 栃面屋弥次郎兵衛というこの物語の主人公の名前ですが、栃面屋とは商家の屋号だろうぐらい

に思っていたのが、なかなかそう単純でないと書いた本がありました。栃面棒を振るという詞があ

ように「トチフル」という動詞から出た語で慌て者、粗忽者、ぶらぶらしている者の謂だそうで、勿

褒め言葉ではない。

 弥次郎兵衛(ヤジロベエ)というのはそういう名の玩具があり、落後には弥次郎という大ホラ吹き

の噺があります。それらの要素(皮肉・滑稽・当てこすり等)を盛り込んで命名していると知ったとき

に一九の用意の深さをしりました。

 


『東海道中膝栗毛・発端』を読み始めました。

2016-01-17 12:25:04 | 膝栗毛発端

  いよいよ今月から十返舎一九。経歴などをウイキ情報から引用。それによると一九は駿府の町

奉行所同心の子として生まれたらしいです。同心と聞いてすぐに思い浮かぶのはテレビの時代劇な

んかで「八丁堀のダンナ・・」などと半ば揶揄的に呼ばれているあの奉行所の役人のことですが、一

九はそういう家に生まれています。この時代に才能を発揮するには侍社会は窮屈であったのでしょ

うか、やがて一九は版元である蔦屋重三郎方の居候となって戯作者の道へ。浄瑠璃作家、黄表紙

作家などの修業を経た後いろいろいろ苦労もあったようですが37才の時に出した「膝栗毛」が大

ヒット、一躍流行作家になります。

「版元の者が身辺にたえずまとわりついて原稿が仕上がるのを待って持ち帰っていた」といゝますか

らすごい人気作家であったことが分かりますが、その背景には庶民レベルの購買力の向上、就中

寺子屋などの普及による識字率向上に負うところが多かったと言えるでしょう。寺子屋の文字教育

中心は「変体カナ」と「崩し文字」でしたから現代人が「古文書教室」で勉強している内容と同じも

です。ですから、われわれは江戸時代の寺子屋のおさらいをしているということになります。