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睡蓮の千夜一夜

馬はモンゴルの誇り、
馬は草原の風の生まれ変わり。
坂口安吾の言葉「生きよ・堕ちよ」を拝す。

親父part5

2010-12-13 07:30:07 | 逝ける人々

2000/08/24

そんなにすぐクタばるようなオヤシじゃない。
葬式の準備をするくらいなら、奇跡を起こす。
首根っこをひっつかんで現世に留めようオヤジ。

ド田舎の風習がもたらす目の回るような忙しさ。
疲労困憊だが、できることはすべてやった。
あとは、しばし眠りたい。


2000/08/27 

K大学病院とN病院の連携はスムーズで、医師間で最善の
方法を検討してもらっている。K診療所に通院しながら血圧の
治療を受けていた母も、皆様のお陰でN病院に転院できた。

長年にわたり母の主治医だったK診療所の先生から暖かい
お言葉を戴き、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
K大学病院への優先入院に便宜を計ってくれた友人たち、
みんな、みんなの「おかげさま」。

母の一生懸命を見てると力が湧いてくる、
頑固で天然で妥協を知らない母は一途な人。

姉妹や義兄弟のいうことは何ひとつ聞こうとしない。
私たち家族の言うことなど馬耳東風、
それでも結果的に母の望む通りにことは動く。

父は重度安定。
輸血の影響らしく、歯茎から出血し、赤いオシッコが出る。
便にも血が混じり、両腕の皮膚はますます黒くなった。
だが、回りが驚くほど意識がはっきりしている。

うわ言みたいに意味不明だった言葉が明瞭になってきた。
仙人髭を看護婦さんに剃ってもらい、白髪頭の赤ちゃんは
3日前とは別人のようになった。


2000/09/02

病室に入るなり、父は両手を合わせて
私たちを拝むような仕草をした。

何やってんだよと陽気に言おうとして、
オヤジの顔を見た。
両の頬をなみだが幾すじも伝っていた。

堪えきれずに屋上まで駆け上がった。
今までのことが甦った。

私が中学2年のときだった。
ある日突然知らないおじさんが家にやってきた。
母は「おまえの父親になる人だから...」語尾をにごして
何かを言ったが、最初のその言葉だけで十分だった。

口紅をさす母の姿に薄々感づいていた。
その日から母と二人で支えあう母子家庭が一変した。
紆余曲折しながら月日は流れた。

オヤジの右腕にある深い古傷は私がつけた。
痩せ細った二の腕に刺さる点滴針のすぐ横にある。

オヤジ、
感謝の気持ちなんていらないよ。
母のために生きれくれ。


2000/09/04

ドアを開けたら秋の風
猛暑が連れてきた秋の足音
トンボが群れをなして飛んでいた
本当に秋が来た、ほろほろ。


2000/09/05

穴あきの、
そそげどそそげど流れゆく
流れ、流れて、ゆくさきは
馬がゆあみの黄泉の国


2000/09/06

異国の戦地に思うは望郷、
屍を枕に死線をさまよった。

狭くても、固い布団でも、
わが家はわが家・・・帰りたい。

その願いをきっと叶えてあげる
約束だ。


  



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