負けるな知的中高年◆本ときどき花のちコンピュータ

「知の崩壊」とかいって、いつの間にか世の中すっかり溶けてしまった。
「知」の復権に知的中高年よ、立ち上がれ!

月山の黒い森には異形の神々と人の擬死や再生がある

2004年12月29日 | 詞花日暦
その黒い森に……異界のメッセージ
ともいうべきものが放たれている
――久保田展弘(宗教思想家)

 冬の季節の山形では、どこからも雪に被われた月山が目に入る。海岸線から屹立した鳥海山の姿にくらべると、広がりのあるたおやかな稜線である。その下に「黒い森」があり、異形の神々と人々の「擬死と再生」が息づいているとは想像もつかない。
 月山一帯には、怪異な相貌を持つ蜂子皇子の像がある羽黒山、巨岩の割れ目から湯が湧き出るご神体の湯殿山、捕陀落や竜神の棲む池がある月山が連なっている。この出羽三山は神仏混交の霊地であり、修験道の呪法と修業の場である。久保田展弘によると、「宇宙マンダラ」でもある。
 平安・鎌倉に栄えた熊野や吉野と一線を画した出羽三山は、「土着の山岳信仰に基礎を置く」土着修験。「神信仰と習合して現在・過去・未来にわたって救済を果たそうとする仏教の世界観」があると久保田は書く。生命の誕生から死をへて浄土へいたる輪廻転生をこの山岳修業は生き身の人に体験させ、人が自然と生きる力を与える。雪に埋もれるきびしい北国だけに、生命力や再生への願いは強い。