負けるな知的中高年◆本ときどき花のちコンピュータ

「知の崩壊」とかいって、いつの間にか世の中すっかり溶けてしまった。
「知」の復権に知的中高年よ、立ち上がれ!

日本酒とワインの効用はきわめて類似している

2004年12月28日 | 詞花日暦
日本酒とワインとは、他のどの酒とも
違った特徴と働きを持っている
――吉田健一(作家・批評家)

 美食家で鳴らした吉田健一は、父・吉田茂に代表される家門のせいか、概して他家からの到来ものや高名な食べ物について書くことがおおい。まちがっても、東北の田舎料理や東南アジアの屋台料理が登場することはない。それでもオルソドックスの料理と味覚については的確である。
 酒についての一家言にはうなずかされた。それは日本酒とワインについて語ったことである。ウイスキーやブランデーのような蒸留酒とは異なり、世界でも代表的なふたつの醸造酒が持つ特長について語った。
 たとえばウイスキーやブランデーなら、食後の酒と決まっている。当然、食前には別の酒が用意される。これに対し、日本酒とワインは食前から食後まで一貫して味わえる酒だという。食前、食中、食後のそれぞれの段階で、日本酒とワインはちがった味を醸すふしぎな働きを持つのだ。酒飲みはとっくに承知のことだろうが、まだの人は一度試すといい。時の流れとともに、日本酒とワインの味が別の顔をして立ち上がってくる。