負けるな知的中高年◆本ときどき花のちコンピュータ

「知の崩壊」とかいって、いつの間にか世の中すっかり溶けてしまった。
「知」の復権に知的中高年よ、立ち上がれ!

SF作家が描く奇妙な人間関係は現実になりつつある

2004年12月24日 | 詞花日暦
科学という果樹園は巨大な怪物になり、
一枚の地図もなく、道もわからない
――A・アシモフ(SF作家)

 SF作家・科学者のアイザック・アシモフが『はだかの太陽』で描いた未来人は、高度な科学技術で新たな通信手段をつくり出した。自分の姿を三次元画像にし、遠く離れた相手の部屋へ伝送する。まるでその場にいるような姿をして、相手と接し、会話をする。
 その結果、未来人は奇妙な状態に陥った。人間同士が生き身の姿で会うことになぜか嫌悪を感じ始め、映像とちがう現実の人間がそばに近づくと、いわれない恐怖感に襲われる。裸の太陽という自然すら厭うようになる。
 けっしてSFの夢物語ではない。伝送量の多い光ファイバ、三次元映像を容易にするホログラフィ技術が完成している現在、そう遠くない現実である。携帯電話を多用する若者たちも、すでに面と向かい合うことを避けつつある。現代科学がもたらす方向には地図も道もないと書いたアシモフは、その一面を作品で警告した。アメリカで発達したSFはアメリカ人の良心だと、筆者はひそかに思っている。